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その後。 扉へ

「ゲートに向かう。場所は教えてもらった」

朝一番のパパの言葉に、全員がびっくりしていた。


ちょっとパパが眠そうなのが気になったけど、ママはすっごく朝からご機嫌で、食べきれないくらいの朝食を作ってたりしてる。


「長。。それは、、天啓ですか?」

フルさんが、驚いた顔をしているけれど。

「ミュア、、いや、マザーツリーに教えてもらった」

パパはそれだけ言う。


その言葉に頷くフルさん。

「ならば、私たちも準備を行います」

「いや、フル達は、ミュアを、いや、マザーツリーを守って欲しい」

弓を取って、出て行こうとするフルさんを引き留めるパパ。


その言葉に、フルさんは再び頭を下げる。

「それは、長命令という事でよろしいでしょうか?」

「そうだ」

パパの強い口調に、びっくりして、せき込むシリュ。


パパがあの口調の時は、本当に怖いから。

僕も昔怒られた記憶が蘇って、本当に美味しそうな料理が並んでるのに、食欲がなくなってしまう。

バクバクと食べているリルが羨ましくすら思う。


「分かりました。私たちは、マザーを守ります。しかし、長に危機が迫るなら、私たちは勝手にさせていただきます」

フルさんの言葉には、決意のような物がある。


「分ってる。本当に苦しい時は、助けて欲しい」

パパは小さく笑う。

そんなパパも珍しい。

今まで、パパはあまり人に物を頼む事なんてしなかったのに。


隣で、ママが良くできましたといった顔をして、超ご機嫌なのも気になるけど。

「私たちは、シュン様を守るです。これだけは変わりないです」

ママの言葉に、真剣な顔でうなずくフルさん。


僕も、シリュもさんざんママから聞かされた言葉だ。


「シュン様って、無茶苦茶強いのに、守る必要あるの?」

リルが、料理を口いっぱいにほおばりながら、呟くのが聞こえる。


けどね。

僕たちは知ってる。

パパだって、無敵じゃない。


「だって、腕が生えて来るなんて、絶対ありえないもの!」

口の中の物を飲み込んだリルが叫ぶように、パパの右腕を指さす。


僕もそれには言い訳も、返事も出来ない。

パパだから。

それだけ言って考える事を止めた、シリュと同じで、無理やり納得するしかない。

「いろいろあったんだよ」

そう言って笑うパパの笑みに、ちょっと背筋がぞわっとしたのは内緒だけど。


ただ、パパの顔は、何かを覚悟した顔だった。

何に対して覚悟を決めたのか。その本当の意味は僕たちには教えてくれない。


パパは結局、僕たちを守ろうとしてしまう。

「強くならなきゃ」

「当たり前なの。誰よりも強く。誰よりも速くなの」

僕の独り言に、返事をするようにミリの言葉が聞こえた気がした。


「強くならなきゃ、パパの隣にはいられない」

シリュも、小さく呟いているのが聞こえる。

僕たちは、僕たちで、覚悟を決めるのだった。



ゲートに向かって歩いて行く。

今までは、リルが先頭を切って斬りかかっていっていたのに、今度は、パパが全て先陣を切って走っていた。


「右手が使えるのは、久しぶりだから」

そんな事を言って笑っているけど、何かが違う。

今までと、何かが違う気がする。


そんなパパのすぐ傍で、ママも斧を振っているし。

二人とも、最近は自分から突進するかのような戦闘はしなくなっていたはずだった。

僕や、シリュが最初に攻撃していたのに。


今は、全てを自分たちで切り裂いてしまっている。

なんでだろう。


そんな事を思っていた時、その答えが目の前に突然現れてしまった。

僕は、最初、それが何だか分からなかった。

それくらい大きかった。


赤い大岩かと思っていた。

見上げるくらい、大きな岩。

けど、その大岩がむくりと動き。

4つの巨大な目で僕たちを見て来た時。


僕は直感で死ぬと思った。

次の瞬間、巨大な赤い生物は見えない壁に当り、吹き飛ばされる。


「リュイ。やらせてくれ」

パパがそんな事を言うのが聞こえる。

「無茶はダメです」

ママの声も聞こえる。


にやりと笑うパパの顔が怖く感じる。


そのまま、パパはその巨大な生物の下へともぐりこむように走り込んだ。

一撃で、その大岩のような生物の、僕の胴体よりも大きい足が切り裂かれる。


がぁぁぁっぁ!

あの生き物の叫び声だけで、リルが尻もちをつくのが見えた。

なんとか、僕は耐えているけど、もう、漏らしそうなくらい怖い。


なのに。

パパは笑っている。

笑って。


槍斧を振り回す。

首に向かい槍斧を食い込ませ。

「はぁっ!」


一息の気合で、その首を跳ね飛ばしてしまった。

呆れた顔で、斧を降ろすママ。


自分の槍斧を、一振りするパパ。


巨大な首が飛んだ瞬間、シリュまでその場に座り込んでしまう。

茫然とパパを見ている皆。

誰一人として、言葉を出す事も出来なかった。


僕はというと、ただその場で立っているので、精いっぱいで。

足は震えっぱなしで言う事を聞いてくれそうには無かったのだった。

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