表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
286/312

その後。 残念のまま

「そろそろ、、かな」

パパが小さく呟いている。

僕たちが歩いているのは遠い遠い距離。

と言いたいけど、パパはワイバーンに乗ってるし、僕はにゃあに乗せてもらっている。

ママはそもそも飛べる羽がついてるし。


そんなに必死に歩かないといけない距離じゃないけど。

目の前に見えて来たのは、巨大な壁。


「元気ならいいんだが」

パパは少し笑いながら目の前の巨大な都市を見つめる。


西方都市、サイファ。

城塞都市とも言われているこの町は、独立した一つの国として扱われている、特殊な都市だ。


冒険者をするなら、一度は訪れた方がいいと言われている都市でもある。

なぜなら。



「すごいにゃぁ!こんな武器初めて見たにゃぁ!ビリビリするにゃあ!」

「この防具、、もしかして、毒無効とか、、?」

僕たちは、武器屋の中で思わず呟いていた。


火を吐く短剣。水を出す杖。斬った相手を凍らせる剣。

果ては、炎を弾き飛ばす盾、毒を無効化する布の服。


冒険者をするなら、一度は着てみたい、持ってみたい武器ばっかりだ。

武器屋で、にゃあと騒いでいると。


「を?誰かと思ったら、あの時の獣人の坊主じゃないか。大きくなったなぁ」

入ってきたこの町の兵士の一人に頭を撫でられてしまう。


「おいおい、お前よりも圧倒的に強いぞ。その子。知ってるだろ?」

もう一人の兵士が笑いながら、僕の頭を撫でている兵士を笑っている。

「知ってるよ。あの二つ頭の化け物を切り刻んだ子だろ?」


その言葉に僕は胸を張る。

二つの頭を持ち、毒と溶解液を吐く最悪の魔物、バジリスク。

最初に会った時は、パパの後ろに隠れているだけだったけど、大進撃の時は、ちゃんと仕留める事が出来た。


パパの無敵の羽が降り注ぐ中での事だったけど。


「子供扱いしてると、切り刻まれるぞ。あのシュンリンデンバーグの子だろ?」

僕が小さくうなづくと。

「マジか!知らなかった。すまなかった。お父さんに、感謝してると伝えてくれ」

慌てて僕の頭から手を離すと、兵士は僕の視線まで体を低くして笑ってくれる。


パパの名前の凄さに僕がびっくりしていると。

「ほら、行くぞ」

「ほんと、よろしく言っといてくれよ!」

二人は笑顔で武器屋を出て行く。


「ミオのパパは、本当に、凄いのにゃあ」

にゃあが思わず呟く。


何度もこの町には来ていたけど。

一般の人のような兵士たちにまで感謝されるパパは、本当に凄いと思う。

ミリが居たら、パパの凄さを3日くらいしゃべってしまうだろうけど。


そんな事を思っていると、突然僕の2倍くらいの背丈の女性が入って来た。

なぜか、にゃあが突然耳としっぽを立てて、戦闘態勢に入っている。


大きな女性は、女性が扱うとは思えないくらい巨大な剣を背中に背負っている。

「ミオ、、殿かな」

女性が声をかけてくる。

僕がうなずいて返事を返すと。


ピリピリした感覚を感じた後。突然、剣が僕の目の前を通り過ぎていった。

鋭いくらいの殺気。

僕の危機察知の能力がなかったら、多分真っ二つになっていた。


「私のスラッシュを避けるとは、流石シュン殿の子と言ったところか」

女性は、にこやかに笑うと。

自分の武器を最上段に構える。


来る!

僕が反撃のために、爪を出そうとしたとき。

カン。

と乾いた音がした。

女の人の剣に、小さなナイフが当たった音のようだったけど。


そのナイフを見て、女の人が明らかに戸惑っていた。

「きちんと、バルクルス王に報告しとくっすよ。一般人を無差別に襲ってるみたいっす、、と」

武器屋の入り口にいるのは、僕も知っている人。


大進撃で、ここの兵士を連れて来てくれた兵士だ。

「ありがとう」

僕がお礼を言うと。

「あ、自分、チェイって言うっす。で、そこの凶暴な歩く凶器は、リンダさんっす」

チェイと名乗った兵士は、片手で、ナイフをまだ回していたりする。


確か、この人の命令を兵士が全員聞いていたと思う。

だから、この人はこの町でも偉い人だとおもうんだけど。


そう思っていたら。

「シュン殿に勝てないから、その子共に喧嘩を売ってみるとか、大人気ないにもほどがあるっすよ」

チェイは小さくため息を吐く。

「なんなら、お嬢にも伝えといてもいいっすよ」

「それは、ダメ!それだけは止めてくれ!頼む、頼むから!」

突然、土下座しそうな勢いで謝り出す女性。


その姿に呆気にとられていたら。

「リンダ、元気そうで何より。けど、部屋の中で振り回すのはどうかと思うけど」

良く知った声が入り口から聞こえる。


「シュン殿。お久しぶりっす。今度は、息子さんに戦いを挑もうとしてたっすよ」

チェイの言葉に、部屋の空気が一瞬で凍り付いたような気がした。


「ヘェ。ちょっと外で、稽古でもつけようか?リンダ?」

パパの言葉に棘がある。

しかも、怖い。


僕まで震えていると。

「シュン君の子共を見たって報告があったから、来てみたら。何をしているんだい?リンダ?力が有り余っているなら、もう一度王都まで歩いて戻って来てみるかい?」

もう一人。

ローブに身を包んだ男性が笑ってたっている。


ふと見ると、片手でナイフを回して遊んでいたチェイさんが、膝をついている。

リンダさんは。


全身に汗をかきながら、巨大な剣を背中の後ろに隠している。

「無駄だよ?リンダ。アイネには、きちんと言っておかなきゃね」


その言葉に、カランと武器が落ちる音がする。

「バルクルス、ちょっと、力を見てみたかっただけだから、娘に言いつけるのはやめてくれ。筋肉ダルマの置物とか言われたら、立ち直るのに、時間がかかるんだ」

リンダさんが焦っているのが分かる。


「いや、自業自得、、じゃないかな」

男性の一言に。

リンダさんは、膝から崩れ落ちたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ