その後 希望
「少しは役に立てかな」
アラスは、小さく呟く。
楽しそうに笑っている家族を見ながら、アラスもまた笑顔になっていた。
「いい顔してるじゃねぇかよ」
一人の鉱夫が、笑いながらアラスに声をかける。
その顔を見ながら、アラスは小さく笑う。
「なんか、久しぶりだと思ってな。こんなにすっきりした気持ちになれたのは」
「はっ。この村をこれからも見続けてもらわなきゃいけねぇんだから、これくらいで気分良くなってもらっちゃ困るんだがなぁ」
鉱夫の言葉に、思わずその顔を見直すアラス。
ふと見ると、連れて来た全員が、自分を笑ってみていた。
「来た時は、腹立つ奴と思ってたがよ。やるときはやる奴なら、大歓迎だ」
「俺達は、ほぼ全員、どん底をはいずってきた人間たちだ。だから、こんな地面の下でも、生きていける。のし上がれなくても、地べたをはいずってでも、生きてる奴は俺達の仲間だ」
笑っている鉱夫を見返したアラスの目から、一滴垂れる。
「なんだよ。今日は、アラス隊長のおごりだろ?」
笑いながら、肩を叩かれながらアラスは拳を振り上げる。
「おごってやるよ!借金しかねぇ俺だが、今更だ!盛り上がるぞ!」
その威勢の良さに、一気に盛り上がる鉱夫達。
そして、その風景を不思議そうに見るシュン一家。
「ありがとう。また、助けられたな。いや、それ以上に。。。」
ガンは、盛り上がっている仲間たちに目を向ける。
「この村は、息を吹き返すかもしれん」
そう言いながら、手を差し出すガン。
その先は、シュンでは無く。
僕だった。
思わずあっけに取られていると。
「ミオ。本当にありがとう。君が来てくれなかったら、この村は本当の意味で死んでいたかもしれん。だが、君が来てくれた。君が、いろいろな風を運んでくれた。本当にありがとう」
パパもママもにこやかに僕たちを見ている。
僕はその大きな手を握り返す。
その後で。
「おい!ガン!アラス隊長が泣くまで飲むんだからな!遅れるんじゃねぇぞ!」
そんな声が聞こえ。
ガンはその声に手を上げて答えると、仲間たちの後をついて行く。
僕はその場に取り残された感じに思っていたのだけど。
ふと見ると、パパが真剣な顔で残ったゲートを見ていた。
「何か分かるですか?」
ママがパパの傍で聞いているも。
パパは首を振る。
けど、パパは何かに気が付いているような気がしていた。
「リュイ」
その夜。
宿屋の一室で、シュンは、リュイの傍で真剣な顔をしていた。
「何ですか?」
リュイが、笑顔で返事をすると。
「あのゲート。どうみても、アレだと思ったんだが」
シュンの言葉に、笑顔をひっこめるリュイ。
「まだ、残りがあると言う事ですか?」
「どれだけ出来たのか。どこに作ったのか、全く分からなかった。ただ、あの混乱の中。倒す事と、止める事だけしか考えてなかった」
リュイは、ゆっくりとシュンの顔を抱きしめる。
「シュン様が気にする事では無いと思うです。シュン様はやり遂げたです。けど気になると言うなら。。。」
リュイが小さく笑うのが分かる。
「リュイはいつもシュン様の傍にいるです。何をするにしても。常に」
その言葉に、笑顔になるシュン。
「相石は、いつもそこにいるものです」
リュイの言葉は、シュンの中に、優しく心にしみわたるのだった。
「絶対、ミオのパパは、何か気が付いていると思うにゃあ」
にゃあが、真剣な顔でこっちを見ている。
「けど、パパの事だから、絶対教えてくれないと思うよ」
シリュが、真剣な顔で返事をする。
僕も、そう思う。
何か、本当に危ない事が起こりそうな時は、絶対にパパは何も言ってくれない。
むしろ、置いて行かれてしまう。
「どう思う?」
僕の声に。
「今日の夜だと思う」
シリュのその言葉に、3人で深くうなづいたのだった。
「パーパ」
夜中。
明かりも一切ない、真っ暗闇の中。
村を後にしようとしていた、シュンは、良く知っている声に引き留められてしまう。
後ろを振り返ると。
暗い中、少し光ってみえる目を持つ、獣人の子共。
その横に、杖を持ったまま頬を膨らませている黒髪の子も見える。
「やっぱり、置いて行こうとしてる」
黒髪の子。シリュは、頬っぺたを膨らせたままだ。
「置いて行くのは、無しだよ」
僕の声に。
「完全に、見破られていたです」
小さく笑うママが見える。
「そうか、、ミオも、にゃあも、暗闇でも見えるんだったな、、」
シュン。パパの言葉は、少し苦笑いが含まれているようにも感じれるものだった。
「だから、置いて行くのは無しね。着いて行くから!」
僕の決意の声に、パパは苦笑いを浮かべているのだった。




