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その後。 白い恐怖2

「パパ! 右っ!」


僕は咄嗟に叫んでいた。

普段なら僕に向けられた悪意しか分からないはずなのに。


パパに危険が迫っている事が。その方向が一瞬で分かっていた。

今までは、自分に向けられた危険しか分からなかったのに。

けど、他の人が危ない事が分かる事に疑問も持たずに僕は叫んでいた。


パパが咄嗟に張った絶対結界に、右側から見事にぶつかり弾き飛ばされる。空飛ぶアシダカ。

音すら置き去りにする速度なのに、その体がブレる前に次の攻撃が分かる。


「ガンさんを狙ってる!」

僕の声と。

ガンさんの前で、絶対結界に弾き飛ばされるアシダカが見えるのはほぼ同時。


「ギリギリか」

パパは小さく呟く。


「煙玉を投げろ!」

アラスさんの声と同時に、うっすらとした白い煙が巨大な部屋に充満し始める。


その煙が、切り裂かれる。

僕の声に反応して張られた光りの壁にぶつかる。


「速度が遅くなって来た!やれるぞ!」

アラスさんの声が響く。

煙玉には、虫避けの効果を含めているらしい。

他の虫の魔物たちの動きも少し鈍くなっていた。


「煙玉の効果と、何度も勝手にぶつかってダメージが増えてる!もう少し耐えたら勝ちだ!」

アラスさんの声に、パパが小さく笑うのが見えた。口の端をゆがめたような、少しぞっとする微笑み。

結構ギリギリの戦闘をしているのは、僕でも分かる。

けど、あの顔をする時のパパは、危ないと本能が感じてしまう。


絶対結界にぶつかり、再び、空中に逃げるアシダカ。

天井ギリギリで、アシダカがホバリングしてして次の狙いをあさっていた時。


突然、空中の白い魔物は、地面に叩き落とされた。


ムチのような太い物が、天井からぶら下がっているようにも見えたけど、すぐに天井の中に戻って行ってしまう。


「地竜。ありがたい」

パパの声が聞こえる。

地面に叩きつけられたその一瞬で。


ママの斧が、飛ぶアシダカの羽を。

パパの槍斧が、その胴体を真っ二つにしていた。


「気を緩めたらダメだ!まだ魔物は出て来てる!」

アラスさんの声に、気を引き締め直したのか。

武器を握り直す坑夫達。


再び、二つのゲートから、大量の魔物の頭が見えだす。

「きりがないかも」

シリュの愚痴が聞こえる。


僕たちが、武器を構えなおした時。突然盛り上がっていく地面。

パパと、ママを乗せたまま、盛り上がって行く地面。いや、巨大な甲羅。

地竜。

僕たちは、それだけしか考えられなかった。


巨大な亀の甲羅の上に乗っていたパパとママが同時に自分の武器を振るう。

いや。

二人の武器が一個にまとまっているようにも見える。


二人で一個にも見える武器を振り下ろし。

紫の光りを放つゲートが、縦に真っ二つになる。


光りの筋が走り。七色の光の羽が数枚舞い上がる。


真っ二つになったゲートが光りを失っなうと、もう一つのゲートも、同時に光りを失い。

出て来ようとしていた魔物は、そのまま光の中へと強制的に戻されて消えていた。


「力を貸してくれたのか?」

パパが呟くと。

地竜は何かを言う。

地竜も、パパも、思わず笑顔になっていた。



地竜が再び地面の中に消えて行く。

巨大な甲羅が地面に沈んでいく。

パパと、ママは、疲れ切ったのか、その場に座り込んでいた。

「ねえ、ねえ。亀さん何て言ってたの?」

シリュが、パパに好奇心いっぱいの目で聞いている。


僕も知りかかったから、パパの返事をわくわくしながら待っていると。

パパは笑いながら。

「寝床に虫が湧いてたら、なんか嫌だから。だってさ」

パパのある意味説得力のある言葉に。

僕たちは全員思わず笑っていたのだった。


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