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その後 白い恐怖

「っとっ!」

叫びながら、アシダカの攻撃を槍で捌くパパ。


僕でもギリギリ見えるか見えないかくらいの速度なのに、対処できるパパの凄さを感じてしまう。

「シュン様!」

ママの斧が、白い巨大な虫のこれまた巨大な足を数本切り飛ばす。


二人の緑とも、黒色にも見える武器が光るたびに、後ずさりをし始めるアシダカ。


「絶対、あの敵強いはずなのにゃあ。なのに、全然楽勝そうなのにゃあ」

にゃあが、呆れた声で呟くのが聞こえる。

僕も同感だ。


そう思っていた時、僕の横を風を纏った巨大な岩が通り過ぎて行く。


僕に襲い掛かってきていた、ムカデを3,4体巻き込んで吹き飛ばして行く。


「戦いの最中に、よそ見してるお兄ちゃんたちも大概と思う」

シリュの声が聞こえて来る。


そんなシリュの魔力も、大概だと思う。

「シュン殿も化け物だと思っていたが、その子供もやっぱり化け物か」

ガンの声が聞こえて来るけど、気にしない事にする。


「今なら、いけるです!」

突然、ママが叫ぶ。

それにつられるように、パパが槍斧を振るい。


槍についた斧で、真っ二つになるアシダカ。

「やったぁ!」

僕が叫んで、拳を振り上げた時。


僕は、吹き飛ばされていた。

いや、抱きかかえられていた。


「ママ?!」

思わず叫ぶ。

ママの背中が裂けているのが見える。


ふと見ると、獣化がとけたにゃあが、うずくまっているのが見える。

そのにゃあを守っているのは、槍で攻撃を受け止めているパパ。


「くっそっ!」

パパの声がここまで聞こえて来る。


パパが悪態をつくなんて、本当に久しぶりだ。

そう思っていると。

パパの槍斧に攻撃を受け止められたアシダカは、そのまま、上空へと飛ぶ。


「ママ、大丈夫?」

シリュが、回復魔法をママにかけている。


けど、ママは、僕よりも、パパの方を見ていた。

「あれは、、今のシュン様じゃ、無理です!」

ママが叫ぶ。

その声に、空を見たシリュが、固まっていた。


「あれ、、、もしかして、、、飛ぶアシダカ、、、、」

シリュの声を全部聞かずに、ママは走り出す。


すぐに、パパの左側につくママ。


「正直、勝てない。俺達以外を逃がすぞ」

「分ってるです。あれは、神の力を持ってないと、無理です」


二人が何かを確認しているのが、聞こえてしまう。こんな時、獣人としての耳の良さを呪ってしまった。


無敵と思っていた、パパですら勝てない敵。

そんなものが存在する事に驚く。


けど、そんな事も気にしていられなくなってしまう。

最初に普通のアシダカが出てきたゲートから。


また、白い巨大な足が出て来たから。


「2匹目、、、」

ガンが、呟く声が遠く聞こえる。


「やれるかにゃあ。。。」

にゃあの声も力が無い。


飛んでいたアシダカが、ゆっくりとこちらを見る。

一瞬。

飛ぶアシダカの体がブレて。


金属同士がぶつかったかのような、いや、それ以上の激しい音が響き渡った。


目の前で、巨大な光の壁にぶつかって足を止めているのは、飛ぶアシダカ。

良く見ると頭が潰れているようにも見える。


再びその体がブレたように見え。

鼓膜が破れそうなほどの音とともに、再び光の壁にぶつかっているのが見える。


パパの得意技。絶対結界。

地面に設置した状態なら、どんな衝撃でもどんな攻撃でも止めてしまえる、絶対防壁。


けど、パパの顔には余裕がまったくない。


「勘で張ってるだけだから、心臓に悪い」

「私が守るです。シュン様は、集中して大丈夫です」


二人の声が聞こえてくるけど、もし、あのアシダカがこっちを狙って来たら。

多分僕の首は無くなる。

そんな事を思って震えていたら。


突然、部屋の入り口から大声が聞こえ出した。

ふと後ろを見ると。

「俺達の仕事場だぁ!俺達が守るぞぉ!」

そんな事を叫びながら、突撃して来るのは、酒場で飲んだくれていた人達。


「いや、無理だから」

思わず僕が叫んだ時。


「慌てて出るな!魔法隊!支援魔法をかけてくれ!あの巨大な白いやつは、勝てる相手じゃない!彼らに任せるしかない!他のサソリやら、ムカデを処理して行ってくれ!」


そんな声も聞こえる。

真剣な顔をしたアラスが。


指揮を執っていたのだった。


支援魔法が発動し。

数人でぼこぼこに殴られて、ムカデやら、サソリが、坑夫たちによって次々と倒されていく。


そう思っていたら、僕の体にも力がこみあげてきた。


少し笑っているアラスさんが見える。


「にゃあ!行くよ!」

僕はにゃあに叫びながら、両手の爪を伸ばす。

にゃあは、走っている僕を再び乗せ。


危険を教えてくれる、ヒリつく感覚が、右から、左から来る。

「飛んで!」

その言葉と同時に高く飛んだにゃあを踏み台にして、僕は両手を振るう。


肉を裂く感覚と同時に、飛べない方のアシダカの腕をまとめて斬り落とした。

着地の瞬間に、攻撃をすり抜けたにゃあが僕を拾ってくれる。


叫ぶように、悶えるアシダカの頭を、黒い光が貫通し。

新しく生まれたアシダカは、一瞬で動かなくなった。



「まったく」

シュンは、小さく呟く。

「私たちの子共です」

リュイが笑っているのが分かる。


アシダカは、正直言って、かなり強力な魔物の一つだ。


さっき、自分もあんなに苦戦していたのに。

「あんなに、あっさり倒されたら、立つ瀬がないな」

父親として。

あっさりと子供に抜かされてしまいそうな状況に。

それでもシュンは微笑みが止まらなくなっていたのだった。


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