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その後。 再会

「この坑道は、良質の鉄が摂れていたんだ」

ガンは、小さく呟きながら、焚火を見ていた。

「多くの鉱夫がここで鉄を掘っていた」

遠くを見つめるその目は、切なさすら感じる。


「だが、ある日、突然だ。魔物が大量に湧き出てきた」

その話を聞きながら、僕は小さくうなづく。


お父さんから。というか、ミリから聞いた事がある話だった。

今は、アムおじさんの付き人というか、多分恋人なんだろうけど、アムおじさんの傍にいるサラさんと、お父さんが関わった事件。

超興奮しながら、「凄すぎと思わない?冒険者になってそんなに経ってないのに、お父さん、数万の魔物を滅多切りにして、全滅させたんだよ!」

そんな事を妹は目をキラキラさせて言っていた気がする。


普通ながら数万の敵なんて、盛りすぎと言いたくなる事だけど、あの大進撃の時のお父さんを見てしまっている。

数千、数万の敵がお父さんの羽で消えていくのを見ていたら、数万なんて敵もあっさりと倒せるのではないかと思ってしまう。


「どうにもならなかった。何も出来なかった。だからこそ」

ガンが、自分の斧を持ち直す。


「今度こそ。今度こそだ」

そう言って呟く姿を見ていると、本当に辛かったんだろうなと思う。


にゃあがそんなガンを見ながら、僕の腕をしっかりとつかんでいる。


「さて、行くか」

どれくらい休憩したのかは分からないけど、ガンが立ち上がった時。

僕の中でぞわっと何かがはいまわるような気配がした。


「敵!」

思わず叫ぶ僕の前で、ガンが、目の前の岩に自分の斧を振り下ろす。

途端に、鈍い音をさせて、斧がはじかれ。


目の前の岩がゆっくりと持ち上がる。

いや、足が生えて来る。


今の今まで分からなかった。

のっそりと起き上がって来たのは、大岩の亀。

ロックゴーレム。

そう呼ばれている、岩亀だ。


「だっ!」

勢いよく降ろされたガンの二回目の斧もあっさりと弾かれてしまう。


「ミオ~」

情けない声を上げるにゃあの手を振りほどく。

「おじさん下がって!」

僕はそれだけ言うと、自分の自慢の爪を発動させる。

【神獣化・爪】

そう僕の爪は何でも切り裂ける。


普通なら絶対に斬れないと言われるバジリスクすら切ったんだから。

あっさりと、ずたずたに切り裂いたロックゴーレムは、その場に沈み込み。

バラバラに砕けて行った。

にゃあが、こっそりとその破片を自分の魔法の収納袋に入れていたりする。

ロックゴーレムの欠片は、ハンマーとかにすると長持ちする物が出来るらしい。

さすが鍛冶屋の娘といったところだった。


「すごいな」

あっさりとロックゴーレムを倒した僕を見て、ガンはびっくりした顔をしている。

僕だって、大戦を潜り抜けてきたんだから。


そう思いながら、少し胸を張っていたら。

「ミオ!」

突然にゃあに突き飛ばされた。


僕が立っていた場所に、岩の塊が降って来て、土煙を上げる。

いや。

岩じゃない。

巨大な、岩のようなしっぽだ。


そう僕が思った瞬間、僕たちが休憩していた巨大な広場その物が震え出す。

腰を抜かしたように座り込んでしまったガンが見たのは、岩から顔を出した、巨大な亀の顔。


そして、その亀は少し笑ったかと思うと。

口を大きく開ける。

その口の中に、青白い炎が見える。


死んだ。

僕もにゃあも。ガンもそう思った。


その時。

青い炎が解放されるのと。

光り輝く壁が現れたのはほぼ同時だった。


激しい音と、光と。

それが収まった時、目の前にあるのは、光の壁だけ。


その光景に、ゆっくりと目を細めると、亀はさらに口を大きく開ける。

突然、さっきとはくらべものにならないほどの光りが亀の口の中を満たし始める。


にゃあが僕にしがみつく。

死んだ。

今度こそ。死んだ。そう3人が思った時、すごく安心する声が奥から聞こえてきた。


「俺の息子に手出しをするなら、相手になるぞ。地竜」

その言葉に、亀は青白い炎を納め。

ゆっくりと声がする方を見る。

しばらく、じっと二人は見つめ会ってていたのだが。


そのまま、ずずずと、亀の頭は岩の中へと帰って行く。


その姿を見た後で、声の人が大きくため息を吐くのが分かった。

僕も、横になったまま。

にゃあと抱き合ったままで、泣きそうな声を上げる。

「パパ」

僕の声に、再び小さくため息を吐いたお父さんに、僕は軽く頭を叩かれた。

その後で、頭をガシガシと撫でられる。


普段なら、すぐに止めにくるか、少し嫌味を言うお母さんも心配そうな顔をしていて。

僕は抱きしめられてしまったのだった。


「シュン殿。。久しぶりだな」

後ろから、そんな声がする。

その声に。

「久しぶり。ガンも元気そうで良かった」

お父さんの声に、ガンは嬉しそうに顔をほころばせているのだった。

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