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魔法球というチート

距離を取ったまま。

俺は目の前のチートな先輩をどう攻めるか、考えていた。


まさかの、予知スキル。早く正確に未来が見えるスキル。

見える時間は数秒先のようだけど、見えた未来は決定している未来だ。


「それに、君にチートなんて言われたくないな。君だって十分チートじゃあないか。風魔法に、土魔法、水魔法も使っていたしね。本当に1年なのかい?」


軽く笑い、圧倒的な余裕を見せるロアを見ながら、俺は、軽く息を吐く。

昔ほど、そう。森での40年を過ごした時ほど、体は鍛えられてないけど。

やってみるしかないよな。


メイスの構えを外し。


「ロア先輩。本気で行かさせてもらいます」

俺は、はっきりとそう言うと、地面を蹴る。


強化魔法を自分にかける。

子共の頃は自分の速さについていけずにコケたが、今なら大丈夫。

二歩目で、自分の周りに氷の弾を一瞬で生み出す。


三歩目で発射、メイスを振るい上げ、注意をメイスに引き付ける。はるか空中にまだ飛ばしたままにしていた土魔法のミサイルをロア先輩の頭に打ち落とす。


ロア先輩は、その氷を無視。メイスをかわし、すり抜けて行く氷魔法を横目に、落ちてくるミサイル魔法を、俺にさらに近づく事でかわす。

そのタイミングで、必殺とも言える鋭い突きを入れて来た。


今だっ!

絶対結界を張り。ロア先輩の一撃を弾く。びっくりした顔をしているロア先輩の顔を見て、口元が緩む。

 メイスは、先輩のがら空きの脇腹に吸い込まれた。

メリッと音がする。

俺の体から聞こえた気もするけど気にしない。


一気に吹き飛ぶロア先輩。


地面に着弾したミサイルの爆発音が今、激しく鳴り響く。

吹き飛んだロア先輩だが、すぐに立ち上がっていた。

口元をぬぐっているのは、血が出たからじゃないと思う。

大体、クリティカルしたはずなのに、ほとんどダメージが与えられていない事に気が付いていた。

本気でチートだよ。あの先輩。自分で軽く飛んで、ダメージを軽減。

クリティカルを外しやがった。


「これは、びっくりだっ!何が起こったのか、全くわからないっ!しかしっ、分かる事は、この二人、今までの誰よりも強いっ!」

実況まで、興奮して入り出したよ。


「まさか、防御チートとはね。魔法チートかと思ってたけど、君は私が考えるフラグを軽く折ってくれるね。楽しいよ」

先輩が呟くき、ベッと唾を吐く。


俺は、自分の体の前に、絶対結界を張ったまま先輩を見る。


昔の槍なら、昔の俺なら、腕の一本はもらったんだが。

にやりと俺も笑みを浮かべる。


はるかに格上の魔物と戦う時と同じ緊張感が、強い敵と戦う事の喜びが心の底からわき出て来る。


「本気を見せてくれたお礼に、僕も本気を見せよう」

ロア先輩が呟くと、ぽん、ぽんと二個の球がロア先輩の周りに生まれた。


「出たっ!ロアの魔法球っ!ロアが本気になったっ!」


実況の声を聞きながら、一回大きく息を吐き、再びメイスを構える。


そして再び、俺は氷魔法を打ち出した。


全く動かないロア先輩。

レイピアを振るい、氷魔法を叩き落とす。ロア。


その隙に、一気に近づこうと走り出した時、俺は吹き飛んでいた。


魔法球から、風魔法が飛んで来ていた事に気付いた時はもう空中だった。

この前の試合で、俺が使った魔法じゃないか。

空中で、もみくちゃにされながら、なんとか体制を整えようとする。脇腹が痛い。さっきの無理がたたっているのか。

そんな事を考えていると、さらに魔法が飛んで来て、バランスを崩される。


球がゆっくり移動しているのが見えた。


これ、負けじゃないか。予知でこれから、何をするか見えるんだから、魔法で邪魔すればいい。そんな事を考えた時、3個目の球が目の前に浮いているのが見えた。


これ、動きが鈍いファ○○ルビットだっ!

俺がそう確信した時。


4個目の球がゆっくりと移動して来るのが見える。

俺は空中で、全方向からの魔法攻撃にさらされたのだった。


「だああ!」

絶対結界を避けるように魔法が飛んで来る。

絶対避けられない攻撃に何度も何度もさらされる。


痛てぇ。


そんな事を考えながら、地面に落下し、跳ねた瞬間、止めと言わんばかりに、ロア自身すら加わった5方向からの魔法をくらい、俺は意識を失ったのだった。


―――――――――――――――――――――――


「シュンくん」

俺が目を覚ますと、真っ赤な目をした、ライナとレイアがいた。


「もしかして、付き添ってくれてた?」

二人とも何度もうなずいて、俺の手を握ったまま、俺に頭をくっ付けて、大泣きし始めた。

「4日も寝てたの!本当に怖かったの!」

ライナが本気で泣いている。

なんか、めちゃくちゃ心配かけたみたいで、悪かったなぁ。

二人にお礼をしなきゃあなぁ。 と泣いてる二人を見ながら考えていたら、部屋の扉が開いた。


「この前の試合で、やり過ぎたから、お詫びに。と思ったんだけど、タイミング悪かったね」


「最悪のタイミングだ。チート」


「ははは。僕もあそこまで綺麗にはまるとは思わなかったよ」


ロア先輩は笑いながら、俺達を見ていた。


二人も涙目のまま、ロアを見ていた。


「下級生に、本気になって大人気なかったと思う。君があまりにも強すぎてつい。ね。久しぶりに燃えたよ。ありがとう。そして、悪かったね。許してくれるかな?」


まったく、この先輩は、本当に、色々チートだ。


「まったく何もできなかったんだから。完敗です」


俺は、先輩に笑いかけ、握手を求める。


先輩は、しっかりと、俺の手を握ってくれたのだった。


右手は、二人に占拠されてたから、左手で握手するしかなくて、お互いにちょっとぎこちない握手になってしまったけど。


「あ、後は校長からの伝言なんだけど、ライナくん、レイアくんは、冒険者見習いとして、冒険者ギルドへの登録を許可する。

で、シュンくんは、僕たちと同じ、みなし冒険者として、登録を許可する。だって」


ロア先輩の伝言に俺たちはきょとんとしてしまった。


みなし冒険者は、ほとんど冒険者Eランクという意味の資格だ。

Fランク冒険者として依頼を受けていい。


つまり。実質。


「飛び級で、卒業だね。おめでとう。僕と、ヒウマくんもみなし冒険者なんだ。だから、学校は行かなくてもいいんだけど、異世界の学校て毎日が新鮮でね」


にっこりと笑うロア先輩。


学生生活を楽しみたいから、学校に来てるわけか。


そういえば。トーナメントは?


「結局、僕の勝ち。優勝したよ」


疑問が顔に出ていたのか、笑いながらロア先輩が教えてくれる。


まあ、予知だもの。


誰も勝てるわけないよね。チートめ。









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