二回戦(特殊トーナメント)
「第4戦始めっ!」
今日は、ヒウマの戦いを見に来ていた。
準優勝者の戦い方はどんなのか、気になったのだが。
ヒウマは、開始の合図とともに、突然ナイフを投げる。
相手がナイフを打ち落とすも、さらに投げる。
よく見たら、魔法の針のように細いロックミサイルがナイフとナイフの間に、紛れているのが見える。
てか。ちょっと待て。
だんだん投げる速さと間隔が早くなってきているのだが、今、すでに30本くらい投げてないか?
なのに、地面に弾き飛ばされたナイフの数が合わない。
さらにナイフは投げられる。
良く見たら、ヒウマの手が光り、ナイフが次々と生まれている。
そういうスキルかとも思った時、ナイフの雨に焦らされて苛立った相手が一気にヒウマに近づいて来た。
唐突に、片手の光りに逆の手を突っ込み、ヒウマは光りから、刀を引っ張り出す。
あれはっ!空間収納魔法だっ!収納魔法、あったのかっ!
興奮している俺を後目に、刀を振り降ろす。
一旦後ろに下がる相手に向かって、さらにナイフが飛んで行く。
すでに100本目に届きそうな数のナイフを投げているヒウマ。
テンションが上がっていた俺は、試合なんて見ていなかった。すぐにデータベースに接続する。
空間収納魔法
本人の魔力に応じ、別空間に収納スペースを作り、自由にアクセスできる。
スペースの広さは、本人の魔力による。
魔法を封じられると、接続不能になる。
収納中は、時間の流れが緩やかになるため、ナマモノなどは痛みにくい。
上位に、異次元収納スキルがあり、こちらは、収納中は対象物の時間が止まり、接続障害が起きない。
しかし、今まで、このスキルを所有していたのは、竜属のみであり、竜王の証でもあるため、このスキルを持っている事が判明すると竜属に、命を狙われる。
テンションだだ下がりだった。
異次元収納。無茶苦茶すごいのに、ペナルティ付き。
特に、竜に追いかけ回されるとか、今は絶対無理。
しかし、昔のゲームを思い出しても、持ち物に個数制限がないゲームは、難易度が高めのゲームが多い。
そして、今の現状は、多分クソゲーだ。
一気に囲まれたら、終わる。
蘇生魔法はないし、欠損修復魔法もない。
数分以内なら、ある程度は回復できるし、くっつけることは出来るけど。
空間収納魔法は、絶対必要だ。腐るほどの回復薬と、状態回復薬も欲しい。
「覚えるには・・・・EPが足りない。」
今、500くらいは残っているけど、5000は必要みたいだ。
狩りに行くかな。
俺がそわそわしていると。
「シュンくん。戦いに出て、練習したいみたいな顔してるけど、トーナメント参加者は、終わるまで、町の外に出るのは禁止です」
と、ライナに釘を刺されてしまった。
何で分かったのか、苦笑いをすると、レイアから
「シュンは、思ってる事が分かり易い」
と笑われた。
レイアにまで言われるとちょっとへこむ。
結局、その日は見学をして、二人と出店めぐりをして、肉やら、良くわからないバッジやら買わされて過ごしたのだった。
あ、4回戦の結果はヒウマの圧勝。
無限に飛んで来るナイフをさばくのは、なかなか難しいよ。
対戦相手が、ちょっと可哀想だった。
――――――――――――――――――――――――
そして。次の日。
「さあ!ついに来た、2回戦っ! 今回は、魔法球のロアっ!
今のところ、全く本気を出していない彼に本気の魔法乱舞を出させる事が出来るのかっ!対戦相手は、一回戦をあっさり勝ち抜いた、深緑の爆竜!シュンリンデンバーグだあっ!緑色の悪魔はどこまで勝ち進むのかっ!」
俺はそのアナウンスを聞いて、ヒザを付いてしまった。
痛い。
この前の試合の一言で、二つも二つ名がついたのかよっ!
爆竜とか、人じゃなくなってるし、深緑の悪魔ってなんだよっ!
今回は土魔法をメインで、戦ってやる。
そう心に決める。
「さあ、神に愛された二人の戦いだっ! 二回戦始めっ!」
神さまが絡んでるのは確かに、否定できない。女神だけどね。
立ち直ってロアを見ると、笑っていた。
「二つ名って格好いいけど、地味にクルよね」
こいつ、80年近く生きてる俺より大人だっ!
細身の剣を抜き、小さく笑いながら、こちらを待ってくれているロア。
あらためて、メイスを握りしめ、槍のように構えた。
「じゃあ行くよっ!」
ロアが動く。
速いっ!けど、見えるっ。
右から、左から来る剣撃をさばく。
よしっ。押しきれる。さらに速度を上げてやる。
俺が、メイスを振るスピードを上げようとした時。
「ラッシュだね」
小さくロアが呟くのが聞こえた。
一段階速度を上げた、俺のメイスに完全について来る。
いや、俺が押されてる?
俺より振りが速いわけじゃあない。
ロアの剣に向かって振らされているイメージ。
もやもやする。
俺がメイスを振る先にロアの剣がある。
気になった俺は、メイスを振るう前に魔法を発動する。
無詠唱の岩魔法。地面から上空へ撃ち上げる岩のミサイルだ。
普通ならかわせないタイミング。
イノシシでも、目を見開いてびっくりするくらいのタイミング。
しかし、ロアは魔法発動前にバックステップを行い、地面から生まれて上空に飛んで行く、岩を見つめていた。
「まさか、先読みとか言うんじゃないだろうな?このチートっ!」
離れた距離を再び詰め、俺がメイスを横に振るうも、あっさりかわされる。
「先読みとか、そんな不安定な物ではないよ。そうだね。予知といえばいいのかな」
ロアは穏やかに返事を返して来た。
まさかの上位スキルかよ。未来を見れるとか、反則だろう。
再び距離を取る形になったロアを見つめる。
俺は、メイスを構え直して、仕切り直しをはかるのだった。




