エピローグ
「パパ!依頼だよ!」
ミオが嬉しそうに、話しかけて来る。
俺は笑うしかない。
冒険者になったばかりのミオは、最近やる気に満ちている。
「まだ、シュン様は傷が治ってないです。依頼は自分でこなすです」
「えー。じゃぁ、ママが手伝ってよ」
「ダメです。自分が受けた依頼は、自分が処理するです」
「そんなぁ。ねぇ。ミリ?」
「だめなの。ミリも忙しいの」
何かを真剣に書いているミリは、そんなミオを見もしない。
「えー。そんな本なんか、いつでも書けるじゃんかよ」
「気分が乗らないと、なかなか書けないの。今のってるの。だからダメなの」
「じゃぁ、シリュ、、、」
「だーめ。ね。パパ」
シリュは、俺の膝の上で笑いかける。
俺は小さく笑い。
左手で、シリュの頭を撫でる。
「シュン様。ダメです。シリュは娘です」
黒髪を撫でていると、本気で怒るリュイ。
「えー」
「だから、一人で行ってね」
優しく、しかしきっぱりと断るシリュ。
「ふん。いいもん。にゃあと一緒に行くから」
そう言って、ミオは家を出て行く。
最近、ヒウマの娘である、にゃあと本当に仲がいい。
そのせいか、最近になって獣人の町から立ち寄るように再々手紙が届いていたりもする。
にゃあも、一応獣人の長の一族だからな。
「パパ、痛いの?」
少し考え事をしていると、シリュが心配そうに俺の無くなった腕をさすってくる。
「大丈夫だよ」
そう言いながら、再びシリュの頭を左手で撫でてやる。
「だから、ダメです」
ついに、我慢できなくなったのか。
リュイが、シリュと俺の間に入って来る。
「ママ、どいて」
「どかないです。シリュがどいたらいいです」
二人が喧嘩を始める。
「今日の夜は、ミリの番の予定なの」
何かを書きながら、ミリがボソリと呟くのが聞こえる。
その言葉に、リュイと、シリュが、口を開きかけた時。
俺の家の扉が勢いよく開く。
「頼む!助けてくれないか?」
そう言って、家に入ってくるなり、頭を下げたのは、ロアだった。
「回復役がどうしても足りないんだ!頼む!」
あっけに取られていると。
あとから入ってきたライナが、小さく頭を下げる。
「ごぶさたしてたのに、突然ごめんなさい。でも、近くにゴブリンの巣があったみたいで、しかも、アーチェリーまでがいるようでして。どうしても、毒解除ができる回復役が必要なの。休養中のシュン君に頼める事じゃないんだけど、お願いできないかな」
ライナの言葉に。
「じゃ、行こうよ」
シリュが、俺の槍斧を持って来て笑っている。
「仕方ないですね。でも、もう再生は出来ないから、無茶はしないです」
リュイも、やる気なのか。
自分の斧を引っ張りだしてきていた。
俺はゆっくりと立ち上がる。
無くなった右腕のせいか。
少しふらつくが、すぐにリュイが支えてくれる。
「行くか」
俺は笑う。
『ゴブリン、100体。アーチェリー2体確認できました』
頭の中に声がひびく。
EPシステムは無くなった。
無限の魔力もなくなった。
とんでもないステータスは無くなった。
ビットシステムすら消えてしまった。
しかし。俺には横にいてくれる人がいる。
「シュン様は私が守るです。それが、相石です」
「パパは強いもの。大丈夫」
「キュ」
黒い小さな竜も楽しそうに鳴く。
「館は、お守りしますので。ご存分に暴れて来て下さい」
ギャルソンが、小さく頭を下げる。
「ミリも行くよ!」
書いていた本をパタンと閉じると、元気よく返事をする。
俺は小さく笑う。
神の力を爆発させた事で、リュイと、俺のEPシステムは消滅した。
データベースのスキルすら消え去った。
残ったのは。
全てのステータスを増加させる称号だけ。
しかし。
【竜の愛】
【獣人の愛】
【エルフの長】
【魔獣の友】
【海獣の後継者】
【魔樹が認めし者】
【地竜が認めし者】
【空竜が認めし者】
これだけあると、笑ってしまう。
俺の称号の数々のせいか。
ステータスは全部1000で固定されているらしい。
「パパはパパだもの」
ミリの言葉に家族はみんな笑う。
データベースは姿を変えた。
【世界樹の献身】に。
地図は見えなくなったし、ステータスも分からなくなったが。
声はいまだに聴く事が出来る。
俺が使える戦闘スキルは、ただ一つだけ。
【絶対結界】
俺は笑いながら、家を出て行く。
守るべき家族と共に。
神話は語る。
この世に、魔天使と呼ばれる、絶望が生まれ。
この世界の、100億の魔物が町を襲ったと言われる。
しかし、神の使いである2名が天から舞い降り。
神の御使いの力を借り。
100億の魔物を操る、魔天使を打ち滅ぼしたと言われている。
魔天使を打倒し、その後放たれた、天からの裁きの光りは、世界をつつみ込み。
100億の魔物を吹き飛ばし、人々を救ったと。
その後、神の使いは、役目を終え、天に帰ったと記載されている。
ただ、その神の使いの名前が記載された書物は残っておらず。
古代の空想小説に、シュンリンデンバーグと言う名が残っているだけである。
なんとか終わらす事ができました。
ただ、みなさんに謝りたい事があります。
ごめんなさい。伏線回収がまったくできませんでした。
きちんと回収できるみなさんは凄いと思います。
あの子とか、本当は、西方都市できちんと巫女としてやっているはずなんですが。。。
最後に、ここまで頑張れたのは、みなさんが見て下されたからだと本当に思います。
本当に本当に、読みにくいこのお話を呼んでくださり、ありがとうございました。