皇
帰りたかった。
ただ帰りたかった。
大好きな、家族がいた。
妹が。
母親が。父親が。
なのに、突然こんなところに連れてこられてしまった。
学生だった僕は、この世界で何も出来なかった。
目の前で、一緒に連れて来られてしまった彼女は血をまき散らして死んでしまった。
なんでこんな所に。
誰が連れて来た。
あまりの理不尽さに、怒りを覚え続けた。
魔物は、狡猾で。
助けてくれた人も、親切にしてくれた人も奪っていく。
さらには、通りすがりの男達にまで、身ぐるみはがされた。
奪われるなら、奪ってやる。
死ぬ間際で、怒りが限界を超えた時。
とあるスキルが覚醒した。
【強奪】
死体から、死んだ人間から、スキルを奪う。
そのスキルは、魔物のスキルすら奪えた。
死んだ人間のスキルを奪い。
倒した魔物のスキルを奪い。
レベルを上げて行った。
道に倒れていた女の子も助けてみた。
同じく転生してきた男も助けてみた。
しかし、彼らと一緒にいても、心は落ち着かなかった。
死んだ彼女より好きな人はいなかった。
家族の他に、新しい家族を作る事も考えられなかった。
俺は、帰る。俺は、家族の元へ帰るんだ。
それだけを夢見て。
それだけを目標に。
そして。
最後にとったスキル EPシステム。
これで、最強に。
なれる、、、は、、、、ず、、、、
「パパのマネはダメなの」
その言葉は、俺の中にいた奴の息子のものだったか。
オークナイト。
取り込んだその力が俺の意識を奪い去って行く。
破裂する自分の体を感じながら激しい痛みの中で俺は、初めて後悔する。
そうか。
家族をうばったのは、、、、




