表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
262/312

最後の審判

「無理ぃ!」

「泣き言言わないの!」

双子が叫ぶ。


目の前に突然のように現れたのは、無数に近い魔物達。

飛ぶ昆虫型の魔物も、鳥型の魔物もいる。

虫型も、オオカミ型も。


「これは、覚悟を決める時かな」

アムが小さく呟く。

「出来る限り守ります。生き抜いてください」

サラは、唇を引き締める。


町を守っていた兵士達がどれだけ残っているのか、知る事も出来ない。

知ったところで、町の中もまっ黒になるほど魔物に埋め尽くされているだろう。

いまさら、何も出来ないし、あの場所にいたら、確実に死んでいる。


双子は強い。

妹は敵をしっかりとかく乱し、兄は確実に魔物を仕留めていく。


西方都市から来た兵士達も圧倒的に強いのだが。

「数が多すぎっす。円陣体系で、交代で戦闘するっす!下手をしたら、3日以上戦う事になるかも知れないっすよ!」

チェイの適格な指示は、兵士達の顔から笑顔を奪っていた。


「これは、無理かも知れないっすね」

軽い隊長の顔が、真剣そのものになっていた。




「ロア様!」「隊長!」

ライナと冒険者たちの叫び声が響く中。

「魔法使いを中心に、結界を張って欲しい!武器は惜しみなく使って使い捨てていい!」


ロアはそんな事を叫ぶ。

まただ。

また、【予知】が発動しなかった。


「こんなスキル、使い物になりはしない」

ロアは、自身のスキルを自分の中で切り捨てる。


ビットを発動し、ゆっくりではあるが冒険者のフォローに4つのビットを全て回す。


カマキリ型の魔物を切り捨てた時。

目の前に現れた魔物の大群に、全員が動きを止めていた。


「嘘だろ?」

「ここでこいつらかよ」

泣きそうな声が聞こえる。


目の前に出て来たのは、異常な再生能力を持つ、オークの群れだった。





「シリュ!」

「大丈夫」

シリュが、魔物の大群に襲われたと思ったのだが。


リュイが使う絶対結界のビットで包まれ、シリュには傷一つ無い。

シリュを包み込んだと思った魔物は、シリュを包む絶対結界に触れると同時に、黒い炎に包まれ焼き尽くされていく。


「シリュは、大丈夫です!」

リュイの声に安心し。


俺はドンキを、いやドンキだったものを切り裂く。


しかし醜く体の輪郭をゆがませたドンキは自分が切られても、笑っている。


斬られた場所から血が噴き出し。

それが、さらなる魔物と変化し。

襲い掛かって来る。


咄嗟にビットを出し、黒炎で焼き尽くす。

魔物を倒し終わった時、斬りつけていた傷は完全にふさがり、さらなる肉の塊が傷の部分に盛り上がっていた。


「お父さん!やめよう!」

シリュが叫ぶが。


ドンキはもう、言葉すら忘れたのか。

怒りの声しか聞こえない。

その右腕が振られ。


俺は咄嗟に後ろに下がっていた。

俺がついさっきいた場所に、大量の魔物が突然出現する。


その魔物をリュイの黒炎が焼き尽くす。


「【希薄の】転送か」

俺は苦い顔をしていたと思う。


そんな時だった。

シリュは目をつぶると。

自身の前にビットを発動させる。


4つの光りがシリュの前で回転を始める。

「シリュ?」

リュイが何をするの?と聞く前に。


回転するビットから、真っ黒な巨大なビーム砲のような魔法が発動した。


それは、ドンキのまだ人を残していた腕を吹き飛ばし。

地面にいた魔物すら一直線に薙ぎ払う。


「はぁ。はぁ」

一発撃つだけで、完全に息をきらしているシリュ。


4属性魔法を完全に同一に、同量の魔力で混ぜ合わせた、言わば、無属性の魔法砲。


「天才か」

思わず呟いてしまった俺に。

『マスターの子供ですから』

何故か、誇らしげにデータベースが声をかけてくる。


「お前まで、ワタシ、ヲ、ヒテイ、スぐが、ぐぅ、ぐぅぅ!」

これ以上ないほどの叫びを上げたと思うと。


ドンキの体が膨れ上がる。


3倍以上に膨れ上がった姿は、肉の塊といってもいい。


肉の中央に、ドンキの顔だけが浮かんでいるのが、やけに生々しかった。


「来ますです!」


ドンキの顔の目が見開き。

その口が開き。


光りのレーザーが飛んで来る。

俺は咄嗟に避ける。


リュイも、息が上がっているシリュを抱えてその光を避ける。


無数にも近い光線が乱れ飛ぶ。

攻撃が一旦治まった後。


ドンキから無数の触手とも見える手が生まれて来た。


「おいおい」

俺はその光景に思わず呟く。


その手一つ一つから、ポンポンと光の球が生まれ出す。


「【明星】」

俺の呟きとともに。


俺達の下にあった町の一画が、一瞬で溶ける。

そこにいた、冒険者も、町の人間も、魔物も全てを巻き込んで。


真っ黒な地面が、一か所。ぽっかりと穴を開ける。

しかし、それも一瞬。


黒い波は、その穴をすぐに埋めてしまう。

そして。

無数に近い、【明星】が光り。


無数のレーザーが、再び放たれる。


「きっついです!」

リュイが珍しく、声を荒げて叫んでいた。

絶対結界で防いではいるのだが、【明星】の効果までは防げない。

シリュに回復をかけ続けながらの結界張りはかなりつらいと思う。


「ドンキ!」

俺は、もう一度ドンキを切り裂く。

無数の手の数本を斬り落とし。

その顔に槍を突き立てる。


しかし、槍はドンキの顔の前で止まってしまった。


『絶対結界。盗まれました』

データベースの声に焦りが生まれる。


まったく動かない自分の槍を後目に。

ドンキの顔がにやりと笑い、肉の塊の中に沈んでいく。


代わりとばかりに、巨大な目が肉から生まれて来る。


巨大な目に、羽にも見える無数の手。


「ナクナレ。ホロベ。ハカイ ハ スクイ ナリ」

ドンキの欠片の一つもなくなったその声は、世界中に響き渡る。


【明星】の光りが、黄金から、暗闇に反転し。

ゲートとなる。

ゲートから、二つの頭を持つ竜が数えきれないほど出て来る。

魔物の竜。


「ウロボロス」

俺が何度も吹き飛ばされたその竜が、空中を埋めて行く。


上空から落下していく、巨大な二股の蛇も見える。

地面に落ちると同時に、猛毒と、消化液をまき散らし、再生を始めて行く。


そして。


白いアシダカがゲートから何体も出て来る。

そう。

羽を持ったアシダカが。、、





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ