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それぞれの戦い

「もっと詰めろ!そっちじゃない!」


必死に叫ぶ冒険者たち。

「蛇の大群から生き延びて。こっちが稼げるからって来てみたら、なんだよ!これはっ!」


「そっちっ!突っ込むな!囲まれたら一瞬で終わるぞ!」

一人の男が必死に叫びながら、冒険者に指示を出していた。


どういうわけか。

この男の指示する一角はまったく崩れる事もなく、戦いが続けられている。

大量の町民を守りながら。


「だが、尻貧なのは目に見えてるな。いつ逃げ出すか」

男が口元をゆがめた時。


「おじさん?」

一人の子供が、声をかけてきた。

「あ?なんだ?今忙しいんだ。後ろでこもってろ!」


子供に声を荒げた時。

「これ。いる?」

たった一つの武器を手渡して来る。


それを不思議そうに男が持った時。


「ばっ!これは、ヒウマのとこの!」

その武器に慌てる男。


ヒウマという、有名な鍛冶士が作っていた、魔骨武器。

魔力を秘めたその武器は、すべて白金貨に迫る値段がするものだ。



「いっぱいあるよ」

子供が笑いながら、床に何十本の武器を出す。

男はしばらく茫然としていたが。


「ありがてぇ!!!!おい!お前、ありったけ配ってくれ!頼む!」

男は、泣きながら子供にお願いしていた。


にっこり笑う子供。

「最高の武器が来たぞ!お前ら、きばれやぁ!」


その武器が何処にしまってあったのか、気が付く事すらなく。

クイーンバイパー戦に参加していた男、ガルスはその武器を掲げて叫んでいた。



「大丈夫」

怪我をしていた女性に回復魔法をかける。ライナ。

「ライナ!次が来る!」

レイアが叫ぶが。

「分ってる!もう少し待ってください!」


必死に回復魔法をかけるライナに襲い掛かろうとするオオカミ。

しかし、その体はあっさりと真っ二つになる。


「ありがとうございます」

笑うライナに、一つだけ頷きを返すロア。


そして次の獲物を切り裂く。


しかし。レイアの視線と、動きが止まってしまった。

「いや。いや。いや」

その場に崩れ落ちてしまう、レイア。


目の前にいたのは、骨のオオカミに乗った、犬の顔をした子供のような魔物。

「コボルト」

ロアが叫ぶ。


ライナまで、詠唱が止まっていた。

二人とも、動けない。


その姿を見たロアは、一気に走り出す。

「覚悟しろぁ!」


普段は絶対に発しない汚い言葉が口に出る。

自分の嫁たちを、昔おいつめた魔物。


ライナの右目を。

レイアの心を、奪い、壊した魔物。


一瞬で、骨のオオカミを打ち砕き。

コボルトの頭を跳ねた時。


ロアの目に真っ赤な炎が映った。


慌てて、その場を離れるロア。

そこに、炎の壁が突然生まれる。


炎に視界が奪われた。

そう思った時。

ロアは炎に包まれる自分の姿を見ていた。


咄嗟に避けるロア。

しかし。


避けた先に着地した先に、再び炎の柱が生まれた。


「いやぁぁぁぁっぁぁ!!」

「ロアぁぁぁぁぁぁ!」

二人の叫び声が響いた時。


炎が、一気に掻き消えた。


「隊長!!」

泣きそうな声を上げながら、走ってくる女の子。

「コボルトなんぞ、俺達の敵じゃない!一気に圧せぇ!」

女の子が連れて来たのか。


多くの冒険者が、コボルトシャーマンに斬りかかる。


「大丈夫ですか?隊長」

女の子に、いや、タヤにロアは抱きかかえられていた。


「助かったよ」

うっすらと笑うロア。


「隊長!指示をお願いしますぜ!」

同級生に、怒鳴るように声をかけられる


間違いもあった。

暴走もした。

間違っていたとは未だに思ってはいない。


しかし、その全てを知ってなお、着いて来てくれる人達がいる。

ロアが体を起こした時。

ライナの回復魔法が自分の体を包みこむ。


「全員!包囲体系にて、コボルトを殲滅!その後、一気に突破して道を作る!」


ロアの声に、掛け声で答える冒険者たち。


町の人を一人でも逃がすための戦いが始まった音だった。




「お父さん、一人で勝ったの?本当に?」


ボロボロになりながら、ミオは泣きそうな顔をしていた。

目の前の巨大蛇の頭を落としたのに、再び頭が再生しているのが見える。


「そうにゃ。シュンは、一人でぼこぼこにしてたにゃ」

にゃんおばさんが、苦笑いをしているのが、何故かよく分かった。


「おじさん、本当に化け物にゃー」

にゃあが泣き言を言っている。


ヒウマおじさんがくれた服と、口当ては、致死毒を無効化してくれる。


さらに、毒の中和剤まで飲んでいるのに。

体がだるいような気がする。


バジリスクが再生している最中は、毒と、消化液がまき散らされているのでなかなか攻撃に出る事が出来ない。


「パパって、本当に化け物なの」

ミリも呆れたような声を出す。


そんな時だった。


突然、バジリスクに氷の矢が無数。

そう。

雹でも降り出したかのように、氷が降ってきた。


呆気にとられる、子供達の向こうで。


馬に乗った大軍が現れる。


「まさかと思って来たけど、この状況は、シャレにならないっしょ」


「隊長!!これ以上は危険です!アーマーを着てください!」

「俺が、重いのは嫌いって知ってるっしょ?それに、そんな余裕はくれそうにないっすよ」


軽い発言を続ける隊長に向かい。

口を開けるバジリスク。


「防護壁展開!後方部隊は、左右に展開して、氷で痛めつけるっす!」

指示通りに素早く展開していく兵士たち。


「シュンの子供達っすよ!死ぬ気で守るっす!!」

その声に対する返事は、地面を揺るがすほどの物だった。


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