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絶望の始まり。

「さぁ!復讐の始まりだ!」


【皇】が叫んだ瞬間。


その体から、黒いコウモリのような魔物が爆発的に無数に生まれる。

俺はその光景をただ見つめる。


コウモリは俺を完全に俺を包み込み。

一瞬で俺から湧き出た、黒い羽の嵐に巻き込まれ消滅する。


「さすが。そうでなくては!」

笑いながら、【皇】は、俺に向かって光の球を放つ。


自身が生み出したコウモリを溶かしながら飛んでくるその球から、縦横無尽に無数の光りが走る。


その光を全て絶対結界で防ぎ。


黒い羽が降り注ぐ。その羽は光を包み。


全てを溶かし切る、悪魔の光りを一瞬で消し去る。


「ははっはあ!」

笑う【皇】


俺は、ゆっくりと奴を見る。

ニヤリと笑う。


一瞬後。

俺は、奴を真っ二つにしていた。


「早い。流石に早いね」

二つに分かれたまま、笑う【皇】


「荷物を持ったままだと、戦いにくいだろ?」


激しい痛みとともに。

俺の両腕の付け根に、突然巨大な刃物が生まれる。次の瞬間、俺の両腕は落ちていた。


シリュの体とともに。


「シリュ!」

俺は、叫びながら追いかけようとするが。


無数のコウモリと、笑う【皇】に邪魔される。

「うるさい!」


俺の叫びとともに、真っ黒い羽の球が【皇】に向かって飛び。

羽が弾け飛ぶ。



羽に包まれ、一瞬で消滅したかと思われた【皇】は俺の上で笑っていた。


「化け物同士。仲良くしようじゃないか」


笑う奴を俺は、力いっぱい殴る。


「もう生えて来たみたいだね。さすが。神の体だよ」

笑いが止まらない様子の【皇】


「気が付いているんだろう?僕たち4Sの能力は、世界を滅ぼす能力だと言うことに」

ささやく【皇】をさらに殴る。


吹き飛んだ顔は、一瞬で復活していた。




「羽がやんだ」

ミオが小さく呟く。


双子を抱きしめ続けていたリュイの前に、見覚えのある槍と、体が落ちてきた。


「シリュ!!」

リュイがその体を抱きしめ。泣く。


その姿に初めて双子もシリュが死んだ事に気が付いた。

そして、自分の父親が何に激怒しているのかも。



その横で、黒い竜が倒れていた。

シリュの体が地面に叩き潰されないように必死に支えて飛んで、頑張ってくれていたらしい。


しかし、どうしたわけか、腕が一本無くなっている。

リュイはその竜に、回復魔法をかける。


緑色に輝く眩しい光の後。

黒い竜は顔を上げる。


リュイはそれを確認すると、唇をひきしめる。


「ミオ!ミリ!おじさん達を守り抜くです!守り抜いて、逃げるです!行く場所は、西方都市!!!」

「え?何で?」

「いや、お父さん戦っているんでしょ?」

二人は嫌がるが。


「魔物が大量に生まれ続けているのが見えるはずです。おじさん達を無事に西方都市へ連れて行くのは相当難しい事なのは分かるはずです」


目の前に落ちたゲートから、さっきまでさんざん見た事のある蟻の魔物の大群と。

目が4つある、赤いトラが出て来るのが見える。


槍を。自分の分身の分身を拾うリュイ。


その姿に、リュイの決意を感じた二人は、顔を見合わせる。

「戻って来る?」

二人の泣きそうな声に。


リュイは笑う。

「当たり前です。ミュアも、リュイも。シュン様も。あなたの親ですよ。どんな姿になろうとも。戻ってくるのは当たり前です」


二人はもう一度顔を見合わせると。

「分かった!」

元気に返事をする。

そんな二人の頭を撫でるリュイ。


「この体は、私が責任を持って守りましょう」

ドンキは、シリュの体を優しく抱き上げていた。


黒い竜であるミュールは翼を羽ばたかせ。

その体を大きくする。


上空の戦いがひっ迫しているのか。

黒い羽は落ち着いていた。



「羽が降っていない今しかありません!!」

サラの叫び声に。

全員がうなづく。


「任せたです!」

リュイは、地面を踏みしめ。

空へと舞い上がる。


双子は見晴らしがよくなった空と、目の前に迫る大量の魔物を見る。


「本気、出せそうだね」

「ミオ、死んだらゆるさないの」

「ミリもね」


笑う二人は、自分の背丈の倍以上ある魔物へと走る。




小さい二人が走る姿を見て、ロアは。

僕はため息をついていた。


絶望して、嫉妬して。自分は何をしていたのだろう。

でも、彼の子供はこんなにも強い。


剣を持つ手が震える。

その震える手をしっかりと握る二つの手。


「子供の所に帰らないといけません」

片目にしっかりとした決意を浮かべるライナ。

娘は、西方都市へに預けている。

誰から聞いた事だったのか?

もう忘れてしまったが。

「私、まだ子供もらってないんだからね」

レイアも小さく。


二人に支えられ、僕の震えは自然に止まっていた。


「帰るよ」


娘の所へ。

その一言に、うなずく二人の僕の妻。


彼ほど強くはないが。

やれる事はやらないと、彼に笑われてしまう。


僕は、まったくこの未来を見通せなかった【予知】を最大限に発揮させる。

せめて。

ここから生きて帰るために。





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