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相石から 同石へ

「リュイ!」

リュイを抱えたままでは、避けれないと一瞬で悟り、俺はリュイを離す。


リュイを投げ捨てるように離した瞬間。気が付けば、吹き飛ばされていた。

空中で絶対結界を張り、とりあえずの足場を作る。


通りすがりの一撃で気絶したのか、俺が乗っていたワイバーンが落ちていくのが見える。

今頃になり。

ゴウッと音が音が遅れて聞こえて来る。


「音速超えか」

俺は耳を押さえながら小さく呟く。


次の瞬間、俺は再び吹き飛ばされていた。

早いっ。避けれない!

そう思った時には再び空中を回っていた。


「避けるのは無理かっ」

4回目の突撃で、さらに吹き飛ばされる。

音速突破の衝撃波が、今更のように襲い掛かって俺の体がきしむ。


左腕が妙に軽い。 しかし、それを確認する暇すら与えてくれない。



空中で白いアシダカに振り回されていた俺は、突然、後ろからリュイに抱き着かれた。

「おい!リュイ、危ないから、離れてろ!リュイの速度じゃ」


避けれない。耐えれない。


そう言おうと思ったのだが。

両手を回しているリュイの体に奴隷の紋様が浮かび始めた。


遠くに飛んでいっていたアシダカが、ゆっくりと旋回しているのが見える。

再び、体当たりが来る。


離れろ。そう思っていると。

紋様がリュイの全身に浮かび。

俺自身の体にも浮かび始める。

「え?」

俺が疑問に思う中。

魔力が。心が一つになって行く感覚を覚える。

リュイの魔力の流れも。リュイの心も。


「いつも一緒です。何があっても。何をされても。」

泣いているリュイの心が。

そして、俺を守ると言う強い強い思いが。

その思いが、俺の心を包む。


光りが、七色の光りが、俺と、リュイから生まれる。

リュイから生まれた光が、俺に。

俺から生まれた光がリュイに。


再び白いアシダカが突撃してきた時。


俺達は、その速度を超えてさらに上空に移動していた。

俺の腰を掴んだリュイの手には、びっしりと紋様が浮かんでいた。

いや。紋様ではなく、彼女の血が噴き出ていた。

アシダカの音速を超える速度をさらに超えたのだ。

竜の体といっても、無事で済むはずもなかった。

俺の体すら、悲鳴を上げていると言うのに。



なのに、リュイは手を離さない。

ぎゅっと抱きしめたその手に浮かんだ紋様も、血も光の往復とともにみるみる薄れていく。

リュイが往復する光とともに、俺の心の奥に入って来るのが分かる。


嫌な気はしない。

むしろ心地よさすら感じる。


「私の全てを、シュン様に」

「私は相石です」


その強い気持ちが、俺の心を包む。


『スキル統合、スキル取得。スキル融合。終わりました』

データベースが呟く。


「この声は、なんですか?」

リュイが呟くのが聞こえた。


え?


データベースの声が聞こえている?

俺がリュイを見ようとするも。リュイは俺の背中に張り付くように抱き着いている。

それでも、リュイが困惑しているのが分かる。


『奴隷契約と、譲渡を統合。感覚一体、主従一体を取得。譲渡と統合。魂の回廊、魂の接続スキルを取得。感覚一体、主従一体と統合』


何が起きているのかを淡々と言い続けるデータベース。


『精魂同一を取得。所有物リュイとのリンク完了』


その瞬間。リュイの魂とも言うべきもの全てが俺の中に入って来る。

俺の魂とくっついてしまう。


その異常事態に、慌てる暇もなく、突然上空からとんでもない明るさの光が降ってきた。


その光は、俺達を包み。

音速で再び飛んで来ていた飛ぶアシダカを吹き飛ばし。

地面にうごめいていた無数の魔物すら吹き飛ばして、クレーターを作る。


俺の後ろで、音速を超えた代償としてぼろぼろになっていたリュイの体が再生されていくのが分かる。

俺をずぶぬれにしていたリュイの血が、俺の中へと吸い込まれるように消えて行く。

それと同時に、ちぎれ飛んで無くなっていた俺の手が生えて来た。


『女神の力をリュイに付与。両名の素体変更を開始。竜の加護の強化開始。終了。両名の素体変更終了。リュイ・シュンリンデンバーク両名に、EPリンクシステム定着。リュイと、シュンリンデンバークの同期完了』


白いアシダカが、いや、キングインセクトが再び飛んでくるのが見えるが。


俺と、リュイは二人で音速で飛んで来るキングインセクトを捕まえていた。


リュイの背中に羽があるように。

俺の背中にも羽が生えていた。


「スキルの同期」

つまり。

「魔力弾くるです!」

リュイが思う。

キングインセクトの背中から思い出したかのように突然生まれた魔力弾。

しかし、絶対結界を背中にくっつけるように張る事で、完全に魔力弾を防ぐ。

お返しとばかりに、二人して黒炎を背中に打ち込む。

全く同時に、全く同じ場所に打ち込まれた黒炎は、キングインセクトの白い殻を打ち破る。


金切声を上げ、キングインセクトがあがき。その体が光り出す。

当り一面が、空全体が一瞬で紫に染まる。


空すら燃やしたプラズマの中で、俺とリュイは二人で無傷で浮かんでいた。

絶対結界が二人を守るように浮いている。普段の2倍の数が。

「私は、シュン様の相石で」

「俺はリュイの相石」

だから。

「「二人が一つになった時、本当の大岩となる!」」


俺の槍斧と。

リュイの大斧と。

二つの斧が、キングインセクトを真っ二つにしていた。


突然。

無数の魔物が、キングインセクトの死体から湧き上がる。

その数は黒い荒ぶる竜の様にすら見える。

絶望すら感じれる数の魔物を前にして。


俺はリュイと顔を合わせ。

二人で笑う。


大丈夫。

不安は無かった。

多分。億の敵が来ても大丈夫。

リュイとなら。

俺達は、手を繋ぎ。

ビットが俺と、リュイ二人の手の前で巨大な魔法陣を作り始める。


リュイの魔力が俺の中で満ち溢れ。

俺の魔力がリュイの中で満ち溢れているのが分かった。


愛羅舞竜・神竜(あいらぶりゅうしん)!!」


俺達の声に応じて、火の鳥ではなく。

巨大な炎のワイバーンが2匹生まれ。

空中で一つとなる。


二つの頭を持つ炎のワイバーンは、無数にも見える魔物で出来た黒い竜をあっさりと飲み込み。

二つになったキングインセクトの体まで飲み込むと。


一気に炸裂した。




「ラブラブって事か」

空中に生まれた、隣の国からすら見えそうな巨大なハートマークを見ながら、青年は呟く。

肌は黒く、服すら着ていないのに、まるで学生服を着ているように見えるのは気のせいだろうか?

その両足は、上半身とはアンバランスなほど、異様なほど膨れ上がっている。


「これで、さらに強くなれる」

青年は、そう言うと。

目の前に落ちてきた腕に食らいつく。


血をむさぼり喰いながら、青年は嗤う。


「ふふふ。素体。素体が無かったから、うまく発動しなかったのだろう?ああ。親の味を感じて、喜んでいるようだ」

両足が、うごめいている。


足が一度破裂し。

すぐに再生される。

さらに両足は巨大になっていた。






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