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異変

「入るぞー」

間延びした声で、男が入って来る。

ダイクは、ベッドの上を見ると。


「こりゃ、今日は話を聞くのは無理か」

頭を掻きながら出ていく。


息子である、カイは、人魚の女の子と一緒に自分の部屋にこもってしまった。

「あらあら」

にこやかな顔の妻を見ていると、このまま彼女を娘にするのもいいかもなと思ってしまう。


「しかし。何が起きたのやら」

俺の村にはいまだに、虹色の壁がゆらめいている。

この壁は、出る事は出来るのに、出てしまうと、二度と戻って来れない。


この壁のおかげで助かったのは事実なのだが、平常時はすこぶる邪魔だった。

「解除してくれねぇと、外で寝る奴が出てしまうな」

ダイクは、大きく息を吐く。


けど、今日は無理だろうな。

家族で団子のようになって寝ていたシュンを見たダイクはさらに大きくため息を吐くのだった。



その時だった。

ズタボロの犬が、空を飛んでくるのが見えた。


「あ?なんだ?あれは?犬?」

ダイクは、空を飛んでくる犬という、不思議な光景に思わず自分の目を疑う。


バサバサと飛んできた犬は。

虹色の壁に当たると、力尽きたように壁をずり落ちていく。


「おい!」

ダイクが叫ぶが。

その上に乗っていたと思われる青年と、犬鳥は、意識を失っていた。


「緊急かよ。シュンをたたき起こすしかないか」

外に出たら、町の中に戻って来れない。

ダイクは、慌ててシュンを呼び起こしに行くのだった。



「王都が、完全に孤立した。魔物に取り囲まれて」

ダイクにたたき起こされた俺達は、ダイクの家の中で、ファイの話を聞いていた。

「頼む。助けてくれ。王に呼ばれたとかで。親父も、王都にいるんだ。。。」


傷はなんとか治せたが、ファイは明らかに疲れ切っていた。

多分、休憩なしで全力で飛んできたのだろう。

振り落とされないように掴まっているだけでも、大変な速度で。


大進攻だと思う。

だが、王都の周りをうめつくす魔物なんて、普通ではあり得なかった。

「シュン様?」

リュイが心配そうにこちらを見る。

まだ寝ている子供達を見る。


そして口を開こうとしたとき。

リュイが、俺の口をその指でふさぐ。

「置いてく。は無いです。子供達も一緒に行くです。私は、シュン様のモノで、相石です。子供達は、シュン様の右腕です」


真剣に、目線をそらさずに言われてしまう。

「行くんなら、俺もすぐ出る」

無理やりでも体を動かそうとするファイの肩を押さえる。


「無理だろ。少し休んでから戻ってきたらいい」

俺はそれだけをファイに伝える。追加で回復魔法もかけてやった。


何かを言おうと口を開くが、そのまま何も言えずファイはその場に寝てしまった。


「不眠不休で飛んで来たのか。分かりやすいな」

ダイクは苦笑いを浮かべている。

簡単な回復魔法を追加でかけただけなのに、体が悲鳴を上げている証拠だった。


「ダイク。少し、面倒を見てやって欲しい。頼めるか?」

「こんな状態の奴をほったらかしに出来るほど、人間腐っちゃいねぇよ」

ダイクは豪快に笑う。


その笑いは、少しだけタイガを思い出す。

「行くのか?」

ダイクの声に頷く。


「王都を完全に取り囲む数の魔物。ここで出た魔物の数よりも多いかもしれんぞ」

「それでも行くしかないだろう」

「ダイク。お前には言っといてもいいかもしれないな」


俺は、ダイクの顔を見る。

俺の話を聞いた後。


ダイクは驚き。

俯き。

「俺に何をしろと?」

小さく呟く。


「事が起きた場合、人を乗せて、海に出て欲しい。海の沖は魔物が少なそうだしな」

俺の言葉に。

ダイクは笑う。


「そりゃ無理だ。海の上のが、被害が多くなる。そうだな・・・」


そっと部屋の外を見るダイク。

「お前の結界?か?あれをそのままにしてくれたら、ここを拠点に出来る。出来ないか?」


その言葉に。

俺は小さくうなずく。


大量に海の魔物を捕獲出来たところだ。

魔骨なら、余るほどある。


結局、朝まで結界を維持するための魔骨を大量に作り。

王都に置いてある、結界意維持装置と同じ物をダイクの村に設置したのだった。




「あなた?」

心配そうに声をかけてくるアヤ。

「信じられるか?億の数の魔物の進撃」

「信じたくはありません。でも、いろいろと考えると、あると思います。そんな数の魔物を何とかして欲しいと、私たちがここに連れてこられたとするなら」

アヤの言葉にダイクは大きくためいきをつく。


「何にも出来ない俺が、なんでこんな事になってんだろうな?」

「あら?何もないところから、数年で、ここまで村を再建したのは、どなた?あなたは、十分すごい人ですよ」

アヤの言葉に照れ隠しに顔を掻くダイク。


「けど。あの人が可哀そうです。全てを背負い込んでいるようで」

俯くアヤの肩を抱くダイク。

「大丈夫。俺が最初に見た時は、確かに危なっかしかった。ミュアちゃんも十分見ていなかったしな。けど、今は違う。あいつは、しっかりと周りを見れていると思う。それに、荷物も一人じゃなきゃ、結構持てるもんだ」

「そうですね」


笑う妻をしっかりと抱きしめ。

ダイクは、朝日の中、飛び立っていく一家を見つめるのだった。







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