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暗闇からのししゃ

「ぐすっ」

「ほら、俺がいるから。大丈夫」

泣き続けているピッピの背中をずっとさすっているカイ。


その姿を見ながら、俺はゆっくりとビットの捜索範囲を広げていく。

ここに滞在していて、どんなにティピに自分達を守って欲しいと言われても、その約束を守る事いかに難しいか。


人魚といわれている彼らの居住地が広すぎるのだ。

地上にある、港町の3倍の広さに点々と居住地が広がっている。

はっきり言って、俺のビットでも全部を把握するのは厳しいくらいだ。


「無茶苦茶な要求だよな」

俺は海の中に来た事を後悔し始めていた。

このまま、何事もなく、ティアマトの使いが魔物だけを狙うようになって欲しいと願っていたのだが。



俺の願いは数分も経たずに打ち砕かれる。

「カイ!ピッピを守ってくれ!」


俺はそれだけを言うと、自分の絶対結界に乗り、海の中を滑走する。

風魔法により、スクリューを得たかのように爆走する絶対結界に乗り、ビットが知らせてくれた場所に行くと。


亀の頭と魚の尻尾を持つ魔物が大量に動いていた。

魔物も。

魔物判定になっていない、貝や、エビなど、全てを喰らいつくしている。


その中には、三又の槍のようなしっぽを持った、骸骨のような海蛇すらいる。


海が真っ赤に染まり始め。

ふと見ると、ティピに良く似た魚の尻尾が食いちぎられているのが見える。


「タスケ・・・」

そんな声が、ティアマトの使いが暴れる渦の中から聞こえて来る。


俺は、咄嗟に風魔法を使う。

海の中に出来た竜巻は渦を作り、全てを巻き上げて行く。

データベースに、ティアマトの使いと、人魚の選別をお願いする。


『無茶なお願いです』

軽く拒否されたが、すぐにマップ上に反応を示してくれる。

ほんとうに、ありがたい。

そのマップに従い、絶対結界を張ったビットで、彼らを包み込む。


「助かった・・・の?」

そんな声が聞こえる中。

竜巻に巻き込まれているはずなのに、絶対結界にぶつかっていくティアマトの使い達。


その姿は、普通の捕食者の姿では無かった。

そう。もっと別な物。


「ユルサヌ!!!ユルサヌ!!!!!」


突然、ティアマトの使い達が叫び始める。

「スベテ! スベテ!!ユルサヌ!!!!!!」


突然、海の中に作っていた竜巻が消えてしまう。

いや。

消えてはいない。

壁が目の前に生まれ。竜巻がその壁に止められたのだ。



その壁は、絶対結界ごと、俺が助けた人魚を飲み込んでしまう。


バリバリと、絶対結界の核となっているビットがかみ砕かれる音が聞こえて来る。

もちろん、その中にいた者も一緒に。


守れなかった事に絶望する暇もない。

大きい。

そんな思いすら抱けないくらいだ。

ティアマトの使いすら一緒に飲み込み。

バリバリとかみ砕く音をさせ続けながら。

壁が動く。

いや。

動いているのかすら、疑問に思う。

こんな巨大な生物を見た事すら無かった。


俺が茫然としていると。

壁から、大量の魔物が生まれて来た

さっき見た数より倍近くはいるのではないのか。


イワシの大群のような数が壁からこちらに襲い掛かって来る。

「イワシは、弱いから群れてるんだぞ。お前ら、強いだろうが」

俺は思わず愚痴を呟く。


「やってやるよ!」

俺は、ビットを展開する。


密集しているからか。

避けられる事もなく、大量にバラバラになっていくティアマトの使い。


「シュン殿!あれを!」

戦えないと言ったはずのティピが、後ろから叫ぶのが聞こえる。

心配で着いて来ていたのか。


無数のティマトの使いが水中に生まれ続けて行く中。

俺が見たのは、海の水面に上がっていく、羽を生やした魚型の魔物達。


「嘘だろ」

俺の声に。


「飛ぶ魚です!ティアマトの使いの伝承にあったものです!」

ティピが叫ぶ。


トビウオ型の魔物は、海面へと上がって行く。

その数は。


海を深海に変えてしまったかの如く、太陽の光りを全て遮るほどのものだった。




砂浜で、心配そうに海を見続けている子供達。

「何か来る!」

何かを感じたのか、待っていたミオが叫んだ。

「何ですか?」

リュイが目を凝らした時、海から何かが飛び出すのが見えた。


「ミオ!ミリ!シリュ!こっちに来るです!」

リュイの叫び声に、集まる子供達。


シュンの絶対結界が、その子供達と、リュイを包み込む。

その一瞬後。

世界は真っ暗になった。


「魚!全部魚だよ!」

「飛ぶサカナだー!」

子供達ははしゃいでいるが、リュイは奥歯を噛みしめる。


最近、シュン様に教えてもらった数。

万を超えて、億。

その数に匹敵するのではと思うほどの数。

村にも張っていたシュン様の絶対結界にぶつかり、地面に落ち。

しかし、すぐに再び飛び出すトビウオ。

いや、魚型のバッタといったほうがいいのかも知れない。

疲れる事も知らず、延々と飛び続ける魚など見た事も無い。


全てを喰らいつくそうと。

海から延々と飛び出し続ける魔物に対して、リュイ達は何もできないのだった。



激しい音に驚いて、家から飛び出て来たダイクが見たのは、空を飛ぶサカナの大群だった。


「トビウオだと!こんな魔物、今まで見た事も無い!」

ダイクの叫び声は、ベチベチと結界にぶつかる音で掻き消えて行く。

「こんな数、どうしろっていうんだよ」

槍を持ったまま、途方にくれるダイク。

村はトビウオに包まれ。

真夜中のように真っ暗になっていたのだった。


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