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海の異変

俺達は、子供達と一緒にいつも通り、海の浜辺で遊んでいた。


結局、ギルドからは、無茶な依頼をされたのだが、これだけ広い海を探すとなると、人間が潜っただけでは絶対に無理だ。


しかし、俺には、とんでもないスキルがある。

魔力ビットは、広範囲の散策を得意としている種類もあるし、常時展開しているビットたちもいる。

その数を増やして、海の中に放り込んでみたのだ。


俺の空間収納には、次々とサメや、エイのような魔物の死体が送り込まれてきている。

サメは、刺身に出来るくらい油ものっていて美味しいのだが、これだけ数が多いとさすがに飽きて来る。

ダイクの所には定期的に、持っていってやったり、時々売ったりしていた。


意外と好評で、結構いい値段で売れていたりする。

一番大きい個体が、金貨で売れたりしたから、マグロみたいな扱いなのかもしれない。


「漁師でも生きていけるな。お前」

ダイクにそんな事まで言われてしまった。



そんな遊んでいるように見える探索をずっと続けていると、必ずカイが突っかかって来る。

「また遊んでやがって」

そんな事を言って来る。


最近は、ときどきミオと一緒に戦闘訓練もしているようなのだが、いかんせん、ミオの方が圧倒的に身体能力が高い。

いつも負けてばかりだった。


だが、そのおかげなのか、俺につっかかってくる事は無くなった。

ミオがいつも口癖のように言っているからかもしれない。

「パパは、イジョーだよ。僕なんか、影すら踏めないもん」

「パパの一撃で打ち上げられたら、星が見えるよ」

「本気で叩かれたら、僕なんて、ちぎれちゃう」


そんな事を言われている隣で、

「嘘だと言いきれないのが、辛いところなのです」

などとリュイにしみじみ言われてしまい、震えあがったらしい。



そんな日々を過ごしていると。


「ぱぱ!」

突然、ミリが叫ぶ。

獣人の特性か。ミリの目はすごくいい。


俺がミリの指さした方を見ると、ひとりの少女と言ってもいい子が必死に泳いでいるのが見える。

その後ろで。

巨大な亀が口を開けてその子を追いかけていた。


「こんな浅瀬でか!」

俺は叫びながら、ビットを繰り出す。

探索に出しているビットは海の奥に出していた。


目に見える範囲は、あまり真剣に探索をしていていない。


俺がその事を悔やんでいたのだが。

俺がビットで、亀を攻撃するも、すぐに海の中に潜ってしまう。


海の中では、かなり切断結界の速度が落ちてしまうため、海の中に追っていっても避けられてしまう。


「速すぎる」

俺は小さく呟いていた。

遅くなっているといっても、そんなにのろのろしているわけでは無い。


亀は人一人くらいなら、楽々飲み込めるくらい巨大なのに素早い。


何度目かの攻撃をかわされて、俺が苦い顔をしていると、少女が突然海から飛び出して来た。


そう。

飛び出したのだ。

ビタンと音を立てて、砂浜に打ち上げられる少女。

その足は見事に魚だったが、だんだんと二つに分かれ、人間と変わりない姿に変わっていく。


カイが、真っ赤になりながらもその姿をじっと見ている。


「見ちゃダメ!」

シリュが、必死に小さい体でその視線をふさぎ。

リュイが、自分のパーカーのように服を少女に着せて上げる。


そう。少女は素っ裸だったのだ。


ミオがカイに対して、何か言おうと口を開いた時。

突然、水しぶきと一緒に、亀が陸に上がって来た。

口を開け、俺達を飲み込みに来たのだが。

その首は、勢いそのままに俺達の頭上を越えて、砂浜に落下する。


陸に上がったらこっちのものだ。

俺はとりあえず仕留めた事に安心していた。

巨大な亀の頭を切り飛ばされた、巨大なイルカの下半身をした亀を見つめていた。




「助けてくれてありがとう。私は、ピッピです」

そう言って挨拶をしてくれた少女ははっきり言って可愛かった。

カイは、ちらちらとその少女を見ている。


「人魚?なのか?伝説には聞いた事があったが、見たのは初めてだ」

ダイクは、あっけにとられた顔で少女を見ていた。


俺の依頼が終わるまでと言って、彼はまだ俺達の面倒を見てくれている。

居心地がいいので、俺達も、町ではなくダイクの村に滞在していた。


そのついでと、水路を増設したり、農地を作り変えたり、森を一気に切り開いたりして村が一気に様変わりしている事は気にしないでもいいだろう。


土魔法を使い、土壌まで作り変えた畑では、必死にこの辺りの生産物である麦のような食物の種付けが行われている。


7000個位のビットを数日使うと、ここまで造成できるのだと自分自身すら感心してしまっていた。 

重機を7000台突っ込んでいるような物だ。

ダイクに呆れながらそんな事を言われてしまった。

海の中へは、1万個くらい放り投げているのだが。


魔力が足りないと思う事は無い。

ビットが仕留めてくる魔物のEPを魔力に変えていたのだが、すでにデータベースのステータス表示でも、俺の魔力はその桁の表示を諦めて、Eやら、¥やらが出て来るような数値になっているのだから。

今はまた、EPが溜まり続けている状態だ。




「私たちを助けてください!」

少女がミオの服を引っ張り真剣に言って来る。


少女は人間の共通語も話せるらしい。

少しニュアンスは違うが、聞き取れないほどじゃない。

必死な顔の少女は、俺達を見ると。

「ティアマトの使いが、私たちを襲いだしたの。今までは私たちなんて見向きもしなかったのに」

そんな事を言いだした。



少女が言うには、あの亀。

ティアマトの使いと言う魔物だったらしい。

確かに、下半身は魚という、不思議な亀だったが。


「最近、魔物が数が少なくなって、喜んでいたの。子供とか、襲われなくなったから」

「そしたら、そしたら」

少女は今度はカイの方を向き。そして泣き出す。

「ティアマトの使いが、私たちの集落を襲いだしたの」


「私、必死に逃げて。逃げて・・・」

思いっきりカイにすがりつきながら泣きだすピッピ。


思わず、カイは、ピッピを抱きしめていた。


ミオは、「にいちゃんやるねぇ」

とか言っていたが。


「海の中での戦いですか」

リュイは真剣に悩んでいる。


海が。というか、水が苦手なリュイは置いていくしかないだろう。

さっきの戦いを思い出し、俺のビットが陸ほど重い通りに動けない事を思い出す。


「一人で行くしかないか」

俺は小さく呟くのだった。

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