海の神秘
「で、一撃で燃やし尽くして倒した、、、と」
港町、トウのギルドの中で、報告をしたのだが、案の状。
全く信用されていなかった。
「だから、本当だ。俺が目の間で見たのだがらな」
「確かに、ヤトの村の村長のあなたが言うのなら、そうなのでしょうが、とてもではないが、信じられないのも事実なのです」
そう言って苦笑いを浮かべるギルド職員。
このギルドは、いわば冒険者と、漁業組合の役割も担っており、もちろん海に関する全ての依頼や、海に関する情報、噂話は全て知っているのだが。
「たしかに、巨大な竜が海にいると言う話はありました。王都へ、相談も出してます。前みたいに、津波が起きては遅いですから。だからといって、、ねぇ」
あり得ない報告に、苦しい笑みしか浮かべる事が出来ない職員。
「だから、」
ダイクが必死に弁明してくれるのだが。
ギルド職員は、一つため息をつくと。
「ここに、もう一つ眉唾な噂がありましてね」
「これの調査をしてくれるのなら、シーサーペントの件、終了と言う事でいいでしょう」
突然、そんな事を言い出した。
「本当に、それでいいんだな!そんなのあっさり出来るに決まってる!」
俺の事を無視して、勝手にあっさりと返事をしてしまうダイク。
俺が慌てた時はもう遅かった。
「ありがとうございます。なんせ、噂もうわさ、誰も信じれない事なのですが、どうも気になる事件が続いていまして、どうにもできなかった案件なので。調べてもらえると本当に助かります」
そう言って笑うギルド職員。
「依頼内容ですが、最近、海で人魚を見たと言う人が増えておりまして。さらには、海ガメがその人魚を食べていたと言う話までありまして。その目撃情報の増加につられるように、行方不明になる船の数があきらかに増えて来ているのです」
「その調査を?」
「はい。どこにいるか分からないシーサーペントをあっさり見つけてくだされた、あなたでしたら、簡単な仕事だと思いまして」
そう言って笑うギルド職員。
いや、あっちから来ただけなんだが。
そう思ってしまうが、無言で笑みを浮かべたまま圧力をかけてくるギルド職員に、何も言い返す事が出来なかった。
しかたなく、宿に帰ってその事を家族に伝えると。
「やったー!まだここにいていいんだよね!」
「あの、巨大なイカを今度こそ食べきるの」
「砂遊び、またしたい・・」
喜ぶ子供達。
そんな姿を皆がら、俺とリュイは笑っていた。
暗い世界。
日の光りすら差さない真っ暗な水の中で、男は小さく笑っていた。
「こんなところにいたのか。どうりで、誰も知らなかったはずだ」
目の前のいるのは、クジラのような人魚のような姿をした魔物。
ただ、大きさが。
地球にいたと言われる、海の恐竜でも、ここまでは大きくないだろうと思われるほど巨大であった。
そう。
海の底と勘違いするくらいには。
「昔に見た、ティアマットの姿にそっくりだな」
男はうっすらと笑う。
そんな男に横から、巨大な魔物が襲い掛かって来るが。
腕ムチのように振るだけで、その魔物に巨大なボルトが数十本突き刺さっていた。
脳を一撃で破壊され、絶命する魔物。
「魔物を生み出し。魔物を従える。伝説の聖獣。生き返ってもらおうか。俺のために」
男は小さく笑いながら、何かの塊を石のように動かない魔物の巨大な口に放り込む。
口の中から泡が生まれ。
その目がゆっくりと開くが、しばらくするとその目は再び閉じてしまう。
その姿を見て。
男は巨大な魔物を指差す。
突然目を開ける巨大すぎる目。
「それが現実だ。お前がやった事。お前が願った事に対して、お前の同胞が出した答えだ。
悔しいか。にくいか。ならば、目を覚ますがいい。復讐のために」
地震でも起きたかのように水が。地面が震え出す。
「さぁ。起きるがいい。お前が助けた物の、愚かな返事に、最大の復讐を果たすために」
巨大な地面から、無数の魔物が生まれ始める。
亀の頭に魚のしっぽを持った魔物。 ワニの下半身から、無数に生える蛇の頭を持つ魔物。
どれも、何もかもを喰らいつくすといわんばかりに、ギラギラした眼をしていた。
身もだえ動き出す地面をそっと触る男。
生き返った聖獣とまで呼ばれた魔物のスキルを無事コピーした男はにこやかに笑っていた。
「さぁ。俺の目的は敵った。あとは、好きに生きるがいい。全てを壊すのも、お前の自由だ」
男はいや。【皇の】と呼ばれていた男は動き出す巨大な魔物を見て笑う。
無数の魔物をまといながら、光の一つすら差さない暗闇から地面がせりあがっていく。
それは、火山の噴火のようで。
世界の破滅を見せつけられているようであった。