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落ちる光

咄嗟に張った結界で、光を受け止める。

全てを貫くはずの光線は、俺の結界に受け止められ、はじけ飛ぶ。

「あら。残念。終わったと思ったのにね。反応は早くなったのね」


あきらかに、見下したかのような笑みを見て、俺は、唇を噛みしめる。

光りの速度で飛んでくるあの光を避けるのはかなりしんどい。


二発目を打たれる瞬間。足元の結界を解除する。

落下し始める俺を、ワイバーンが咄嗟に拾ってくれる。

頭上を通り過ぎる光が見える。


「アクマ、アクマ」


【明星の】姿を見たトレント達が、騒ぎ始める。


彼らも、【明星の】を知っているのか?

俺が、疑問に思うと、トレントは一目散に、逃げ始める。


「スベテ ノ ハジマリ アクマ」

叫ぶように慌てて逃げ出すトレント。


そんなトレントを見て、鼻で笑い。

俺と視線を合わせると、微笑みかけてきた。


「大丈夫。やさしくしてあげるわよ」


そんな事を笑いながら言いながら、何個も光の球を作り出す、【明星の】


今まで追いついていた、俺の継続回復魔法が追い付かず、全身に痛みが走り始める。

ワイバーンも、痛みを感じ始めたのか。

羽を動かす速度が遅くなっていた。


【明星の】攻撃は、光の球による、範囲内、継続ダメージ。

そのうえで。


「もう少し踊りなさい」

光の球から、光の線が飛んでくる。

見てからでは避けられない速度。


俺は、ワイバーンを無理やり動かし、光を避ける。

痛み感じ始めていたワイバーンが、悲鳴のような、抗議の声を上げるが、知った事じゃない。


俺達がすれすれで避けた光の線に当たったトレントの枝が、森に落下していくのが見えた。


「相変わらず、勘がいいのね」

前に戦った時。ミュレに乗っていた時も、何とか避けれていられたのだが。


今は、あの時よりも、さらにステータスは上がっている。

今の自分なら、光を見てからでも、自分だけなら避けられる自信はある。

しかし、ワイバーンはそうはいかない。


次々と、単発的に放たれる光の線を無理やり動かし、避け続ける。


無茶苦茶な軌道をさせられているワイバーンは、明らかに弱っていた。

「その鳥も、もう限界でしょ?」


うっすらと笑う【明星の】


俺はその姿を睨みつける。

ミュレの溶けていく最後が。

落下していくリュイの姿が。


俺の中で蘇る。


無言のまま、ワイバーンの首を女に向ける。

絶対的な力の差を感じているのか、ワイバーンが嫌がるのが分かる。

しかし、俺はそんなワイバーンの背中を叩き、無理やり女に突っ込ませる。


「怯えてるじゃない。可哀そうよ」

そんなワイバーンの姿を見て、笑う【明星の】


「キュ~」

情けない声を上げるワイバーン。

そんな声すら無視して、ワイバーンで、女に突っ込む。

体当たりさせようとしたのだが、あっさりワイバーンを避ける【明星の】


うっすらと笑った【明星の】その顔が一瞬。

驚きに変わり。彼女の片手が吹き飛んだ。


そう。ぎりぎりで避けた【明星の】片手を、すれ違いざまにワイバーンから飛び降りた俺の槍斧が斬り落としたのだ。


落下しながら、斬り落とした片手を、ビットでみじん切りにしてやる。

俺は落下しながらも、笑っていたと思う。


ワイバーンが焦って、こちらに向かって向きを変えてくれるのが見える。

怒りに震えている、【明星の】顔が見える。


俺は、そのまま、ビットに張った結界で、足場を作り。

再び飛び上がる。【明星の】に向かって、一直線に。


【明星の】顔が引きつる。


無数に襲い掛かってくる、光の線を全部、絶対結界で受け止め、まっすぐに、女に向かって跳んで行く。


「あんた、正気なの!?」

叫ぶ女。

しかし、そんな事は知った事じゃない。


お前だけは。

絶対に。


絶対結界が間に合わず、俺の右手が光に当たり吹き飛ぶ。落下していく俺の右腕。

関係ない。

空間収納を使って、左手に武器は持ち替えている。


全身は光の球の影響で、痛みを超え、出血が始まっている。

そんなの知るか。


自分の血をまき散らしながら、俺は槍を振るう。

「この、キチガイめ!」


叫びながら、後ろに下がりながら光を打ち出す【明星の】。

焦りを含んだ女のその目の前で、俺は、ビットを自分の左肩で押しながら飛ぶ。


絶対結界で光を受け止めたまま【明星の】目の前まで来ると。


俺は、左手を力いっぱい振り下ろしていた。


何かを叫けぶ【明星の】


しかし、そんな事などおかまいなしに、【明星の】頭に槍斧が刺さり。

その顔が二つに分かれた。

絶対結界の範囲外だったのか。【明星の】最後の光が俺の足を貫く。


痛いとも思わない。感覚が無くなっていた。

足も無くなったかも知れない。


けど、俺は満足していた。

ミュレ。リュイ。


仇はとったぞ。

そう思いながら、落下する。

全身に、力が入らない。


しかし、気分は良かった。

ミュレの顔が。

リュイの顔が浮かぶ。


「これからも、一緒にいれるといいな」


俺は、落下しながら呟く。


その時。

「本当に、私の相石は、私の心を何度締め付けたら気が済むのですか!」

聞きなれた叫び声が聞こえた。


「リュイ母さん! 父さんの手足見つけたよ!」

幼い声が聞こえる。


「まかせて!がんばる!」

ピンク色の小さな小さな顔が叫び。

俺を緑の光が包みこむ。


落下していない体に戸惑う。

うっすらと残っている意識の中。


泣き顔で、ぐしゃぐしゃのピンクの少女の顔が目の前にあった。

俺は彼女に抱かれているのだろうか。



途切れる意識の中。

心が落ち着くような、安心する臭いと、安心する声に俺の意識は落ちて行った。


「おかえりなさいなのです」

そんな声が聞こえた気がしていた。

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