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魔の村。防衛戦

「来たぞ!!!」

そんな声が響き渡る。


魔物の姿のまま、言葉をしゃべる獣たちの呼吸があちこちから聞こえて来るようだった。

彼らを魔物と呼ぶのは違う気がする。

魔獣とでも言えばいいのかもしれない。話す事が出来る魔物達。


そんな魔獣たちが無数の虫の魔物達を迎え撃つために、配置についていた。


「悪いな。巻き込んでしまってよ」

そんな中、タイガは申し訳なさそうに声をかけてくる。


「悪いついでに、お願いされてくれねぇか。もし、俺が死んだら、子供たちをお前の・・・」

タイガが、俺が乗っているワイバーンを見つめているのは知っていた。

「無理だな。お前の子供も全員連れていけるわけじゃない。そんなに乗れないからな」

俺は、タイガの言葉を遮り、タイガのお願いを断る。


「そうか」

タイガは、小さく呟く。

一人でも、助けて欲しい。その思いは良く分かる。

俺も父親だ。せめて、シリュ、ミリ、ミオだけは生きていて欲しいと強く思う。

3人のうち、一人でも生き残ってくれればと思うだろう。


そんな事を考えていた時。

激しい声が聞こえたかと思うと、マップの中の一つの青い色が突然消えた。


おかしい。敵の大群はまだ先のはずなのだが。

そう思っていると。

一瞬。

殺気を感じて俺は咄嗟に自分のいた木のそばから、木の遥か上まで飛びのいていた。


激しい音と一緒に、俺がいた場所の近くの木をなぎ倒す巨大な白い虫の背中が見える。

「ゲジゲジかよっ!」

俺は空中で叫んでいた。

アシダカと呼ばれる、ゲジゲシの巨大版。

あいつらは、無茶苦茶早い。

「なんだよっ!」

一瞬確認出来たその体はすぐに消えるように移動し、近くの魔獣に狙いをさだめ、獲物を口に放り込む。


森に隠れていた魔獣の一人の悲鳴が聞こえ。

バリバリという音が俺にまで聞こえて来る。


「足止めをしろぉ!」

悲鳴のような叫び声が辺りに響く。


その叫びもむなしく、次の獲物が捕まったのか。

再び枯れ木をへし折るような乾いた音がする。


俺は、空中で槍を持ち直し。

自分のリミットを解除する。


俺のステータスは、今では上がりすぎて、自分でも笑いが出るくらいだ。

ステータスそのままで生活していたら、常にリニアモーターで動いているような物で、生活そのものが送れない。

しかし今は、そのステータスが助かる。


二つに折れてしまった魔獣を掴み、口に入れようとしていたその無数の手の数本を切り飛ばし。

相手が足による反撃をする来る暇もなく、俺はその頭を槍斧で叩き潰していた。


激しい音と、体液をまき散らして地面に沈むアシダカ。

「本隊が来るぞ!持ち場を離れるな!」

俺は、アシダカを踏みつけたまま、普通に叫んでいた。


あちこちから魔獣の叫び声が聞こえる。


俺はワイバーンに目配せする。

ワイバーンは、小さくうなづくと、空中に飛びあがり。

その巨大な火球を空中から打ち下ろす。


「全滅はしないで欲しいな」

データベースに映っている仲間の数字が凄まじい速さで減っていくのが見える。


燃え盛る火を盾にしながら戦う魔獣たちを見ながら俺は呟いていた。



開幕、いきなり、目に見えないほど早い敵に襲われて、数人仲間が喰われた。

俺は自分の力の無さに、苛立っていた時。

シュンがあっさりと巨大な早すぎる敵をすりつぶしてくれた。


俺も、それなりに強いつもりだった。動きくらい見えるかと思っていたのだが。

まったく無理だった。稲妻といえば早いのかも知れん。

空から落ちてきた瞬間、気持ち悪い虫は地面に沈んでいた。


シュンのワイバーンのブレスの直撃を受け、燃える大量の虫を見ながら俺は、小さく笑う。


「まだ俺も死ななくていいかもしれねぇ。もう少し、あがいてやるよ。悪夢のようなこの森でな」

トラの手と言う、武器を持つにはまったく適してない手を握りしめ直す。

シュンという、希望が俺の中で光り始めていたのだった。



「左側へ!」

俺の叫びにすぐに対応してくれる村の魔獣たち。


本当に無数の虫が地面を埋め尽くしていた。

「気色悪いだよっ!」

「夢に出てくるだろうがっ!」


そんな事を叫んでいるやつもいる。

この世界では、広範囲爆発魔法は無い。

つまり。

素手で引きちぎり、叩き潰し。

切り刻むしかない。

「いっくぜぇ」

そんな声と伴に、竜巻のような風を起こし、数匹を巻き込んで倒している魔獣もいる。

しかし。

そんなものは、焼石に水。

空いた場所に無数の敵がなだれ込み。


敵の中に突っ込んでしまった魔獣はいとも簡単に飲み込まれていく。


「結界を張る!結界の中で戦ってくれ!」

俺はそう叫ぶが、一か所を固めた所で数が違いすぎた。


結界を無視して、村へと押し寄せてしまうのだ。

「ほんとに、毎回毎回無理ゲーだよなっ!」


俺は叫びながら、ビットを低空に展開する。

無数の魔物を一気に切り裂き小さい道を作り。

区画を作るように、敵の大群を小分けにしていく。

その上で、上空から、ビットで魔法爆撃を開始する。

奥側を俺のビット、ワイバーンの火球で爆撃殲滅させていき。

手前へ出て来た敵は、俺のビットで切り刻み倒して行く。

森への被害なんて知った事か。

一時的に、敵の進撃が止まり。


なんとか村への侵入は防げたように思えた。

「流石だな。お前ひとりで、何万匹倒してるんだよ」

笑いながら、俺の所へ来るタイガ。


言いながらも、その大剣で、サソリの頭を叩きつぶす。

俺も、のそのそやって来るロックゴーレムの甲羅をビットで真っ二つにする。


俺達が笑い合った時。

この大軍を最初に見つけてくれた鳥型の魔獣が、必死に飛んでくるのが見えた。


「タイガ!ヤバイるす!虫の、虫の、、飛ぶ奴が村に入って来たるす!」


鳥型の魔獣の報告に。

俺とタイガは目を合わせる。

そのすぐ後。

俺達は二人して村へと走り出していた。


「ちょっ。ここ、激戦区るすよ!俺一人じゃ無理るす!」

そんな鳥型魔獣の叫び声も、俺の耳にはもう聞こえていなかった。

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