表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/312

リュイは、本当に聡明な子じゃった。

自信が、周りと違う事を小さい頃から悟っておった。

自分の顔を嫌っておったのも知っておった。

リュイは、全てを持つ者じゃ。


儂が若いころ。

選ばれし者と呼ばれる、ドワーフと人間の間に生まれた、リュイの母親。

実は昔から、儂は彼女に一目ぼれしておった。


ドワーフとしては、少し人間に近い、薄い顔の少女じゃった。

儂の趣味が悪いと、仲間内からは、よくからかわれた物で。

少女の名前は、ジダと言う名前じゃった。


人間との間の子と言って、ドワーフは差別をしたりする種族ではない。

むしろ、種族の特徴を二つ持つ、特殊な子として扱うものじゃ。


それは、親族同士で結婚をするしかなくなっている、ドワーフの村の閉鎖的な社会が生み出した生き残る術だったのかも知れぬ。


他人の血を。他種族の血でも。

受け入れなければならなかったかも知れぬ、

だが、そんな事は関係ない。

一種類の純粋な金属はいくら叩いても、すぐに割れてしまう。

必要な汚れ。必要な混ざりは金属を強く強くしてくれる。


汚れを嫌う癖に、それを一番知っておるのがドワーフなのじゃから。

そんなジダを、一人の男がさらっていってしまった。

彼は、迷ったと言っておった。

儂らに、酒をおごりさらには、魔石とか言う、不思議な石の作り方を教えてくれた男じゃった。

本人は、ハーフエルフと言っておったか。


異世界ではと良く言っておった。


彼は、ジダを妻に迎え。

リュイが生まれた。

そう。儂は片思いのまま、迷い人である男にあっさりと負けてしまった。


しかし、ジダはリュイが生まれると同時に、息を引き取ってしまいおった。

男は、そのままドワーフの穴から出て行った。

理由は分からぬ。しかし、何か思い詰めた顔をしておった事は確かじゃった。


もし生きておるなら、リュイとも会える事もあるだろうと思っておる。

しかし、両親が居なくなった事で問題が起きた。

いろいろな混ざりものである、リュイを引き取りたいと言う者は誰もおらず。

儂が育てる事にした。


儂が惚れた女の子だ。

育てきれる確信があった。


そして、娘が20になろうとした時。

あの男、シュンがやって来た。


運命であろうと思った。

リュイが選ばれし者。神に愛された者である事を知らされたのは、娘が10歳の時だった。

神の祭壇に降り、死ななければならぬ命である事を告げられてしまった。

そこから悩み。苦しみ。

しかし、笑って娘を育てて来たつもりだった。


それゆえに。

シュンと言う男に。

ドワーフに無い、強者の気配をまとう彼にリュイを託してみたくなった。

娘が生きていられるなら。

そんな思いも強くあった。


そして、彼は、ドワーフの穴から飛んで消え。

娘は後を追いかけて出ていってしまった。

しかし、儂は満足じゃった。


娘は死ななかった。

ドワーフの歴史上。誰も生き残らなかった神の祭壇から、生きて帰って来た。


儂はキンカに娘が住み着いた事を聞き、長旅を行ってキンカにやって来た。

ドンキと言う男は、すごい奴だと思う。

今まで絶対に通らなかった、ドワーフの穴からキンカまで、道を作ってしまったのだから。

途中で、警備町まで作り、道のりは遥かに安全になっておった。


やっとの思いで儂は孫に会い。

一緒に遊ぶ事が出来るようになった。

幸せじゃった。血はつながっておらずとも、リュイは儂の子供じゃし、この子たちは儂の孫じゃ。


そんな幸せを嚙みしめておったのに。


そんな中、ふとリュイ達は、孫たちを置いていって、ダライアスへと行ってしまった。


メイド達がおるとはいえ、帰って来たら文句の一つも言おうと思っておったら、リュイが帰って来た時に儂は泣いておった。


娘の雰囲気が変わっておった。

一度死んだと娘は言う。


嘘だと思うが、明らかに違う娘の印象が、事実と言っておるようじゃった。

何かが違う。今までの娘とは、何かが変わっておった。しかし、まだ娘は生きておる。

それだけで儂は、十分であった。

儂は娘と話し。孫を可愛がる。

ミュレ殿も死んでしまったと言われ、ミオと、ミリが心配にもなったが、二人は本当に元気そうであった。

日々に。本当に喜びを感じておった。


そう。

昨日までは。


「シュン様を、迎えに行くと言われ、みなさん、旅立たれました」

シリュのために、ちょっと可愛い服を持って来た儂は、シュンの家の、メイドのその言葉に唖然としていた。


しかし、すぐに笑ってしまった。

恐らく、シリュ達が待てなかったのだろう。


そうだった。あの娘の子だ。大事な人を大人しく待つ訳も無い。

好きな人を追いかけるために、荒れ地にあっさり出て行った娘の子だ。


ミュレも、ずっとシュンを追いかけていた娘だ。

ミオと、ミリも、同じ血が流れておる。



血は争えぬ。


「儂はまた待つしかないの」


あの子たちは、儂の孫で、リュイは、何があろうと儂の娘なのだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ