暗闇の中の笑顔
「君は、本当にいつも突然に来るね」
俺は、バルクルスの苦笑いを見ながら、自分用の部屋でうずくまっていた。
西方城塞都市。そう呼ばれるようになった都市へ俺は足を運んでいた。
彼女と大量の魔物を倒したのはどれくらい前だったのか。
彼女を助けようと、大量の殺戮を繰り返したのはいつだったのか。
そんな事を考えながら、ぼーっと座っていた。
何かを思ったのか。
バルクルスは、そんな俺に笑いかける。
「せっかく来てくれたんだ。ゆっくりして行ったらいいよ。この町も大分復興が進んでもう半分くらい完成したからね」
バルクルスは、ゆっくりとシュンの部屋を出る。
そこには、心配そうな顔をしている、リンダがいた。
子供を産んでも、休む事なく体を鍛えているせいか、未だに体はがっちりしている。
何か言いたそうな彼女に、バルクルスは、首を小さく振る。
「だ!」
叫ぼうとしたリンダの口を、ふさぐバルクルス。
「相当傷ついた顔だ。何があったのかは分からないけど、思いつくのは一つしかない」
だから、そっとしてあげよう。
そう言われながら、力いっぱい手で口をふさがれてしまったリンダは頷く事しかできなかった。
何があったのか、聞くのはたやすい。
しかし、それをさせない雰囲気が強く彼をまとっていた。
「なぁ。リュイ。ここで君が本当に大切なんだと、もう一度気が付いたんだ。そばにいて欲しいと思ったんだ」
俺は、自分の部屋の前から、帝国側の平原へと続く出入り口を見つめながら小さく呟く。
ここで、彼女は、大量の兵士に囲まれた。
必死に追いかけた。
なんとか彼女に追いついた。
なのに。
「何で、追いつけなかったのかな」
俺は小さく小さく呟く。
「かあさま?」
シリュが、私の服の裾をしっかりと握り返して来る。
私が生き返ってから数日後。
私は、子供達が気になって、キンカの家に戻って来ていたです。
シリュは、少し雰囲気が変わった私に、戸惑っていたようですが、しばらくしたら落ち着いたのか最近は、私から全く離れなくなったです。
ミオと、ミリは、私と一緒に帰った黒竜と一緒に遊んでいるです。
結構激しく叩いたり、追いかけっこをしてるため、いつもギャルソンが泣きそうな顔をして、ミリとミオを追いかけていたりしてるです。
ミオはすぐに捕まえる事が出来るですが、ミリは。
「神獣化!」
捕まりそうになると、一瞬で逃げ出すです。
私ですら捕まえる事は出来ないので、ギャルソンにはもっと無理だと思うです。
そういえば、私の身体能力は、ミリエルさんより高くなってしまっているです。
今まで出来なかった、魔法も使えるようになったです。
竜のブレスまで吐けるようになっているのはどうかとも思ったのですが、シュン様を守るためには、必要な力と思って、割り切っているです。
二人は、あの黒竜が、ミュレさんだと直感で気が付いているようです。
私からは何も言ってないのですが。
時々、二人して黒竜を抱いて、泣きながら寝てるのを知っているです。
二人は強い子です。
お母さんが死んだというのに。
「お父さんがいるから、助けてあげないと」
と健気な事を言うです。
しかし、「早く大きくなって、お父さんの子を産むかなぁ」
などと、聞き捨てならない事を呟くミリには、少し警戒してるです。
獣人は、近親婚も良くするとドンキ様から聞いてしまい、さらに注意するようになったです。
そんな数日を過ごしていた時。
ふと、シリュが私の顔を見上げながら聞いて来たです。
「ねぇ。お父さん、迎えに行こ?」
その言葉に。
私は戸惑ってしまったのは仕方ないと思うのです。
私も一度死んでしまったくらい、旅は、危ないのですから。
私までいなくなったら、この子たちが心配で仕方ないです。
返事が出来ずに、私が困っていると、ミリと、ミオも私の前に来て、私を見上げていたです。
3人の子供にじっと見つめられても、返事が出来ないでいると、声をかけてきたのは、思いもせず、ギャルソンでした。
「私は、自分の不甲斐なさで、王も、姫もお守りする事が出来ませんでした。しかし、もし、その場に私が居なかったら、私は、もっと暴れていたでしょう。そう。子供である、ワイバーンを殺された時以上に、私は、全てを破壊し尽くしたでしょう」
ギャルソンは、私をしっかりと見ていたです。
「姫様を守ると、王と約束しました。黒竜様も、リュイ様も。どちらも、姫様であります。
ならば、このギャルソン。何も考えずにお二人をお守りし続けます。ですから」
「大事な方が泣いている時、困っている時。そばにいて差し上げてください。私にはもう叶わない事なのですから」
その言葉にうなずく3人の子供達。
「だって!パパに会いたいもん」
叫ぶミオ。
「お父さんの子供を産みなさいって、お母さんに言われてるもの」
問題しかないミリ。
「お父さんに、会いたい。なでなでして欲しい」
小さく呟くシリュ。
私はそんな子供達を見て。笑う。
「そうですね。私は、シュン様の相石。離れていては、形を忘れてしまいそうです」
その言葉に、喜ぶ3人。
私は、シュン様を探すため、キンカを出る事にしたです。
キンカに何故か住み込んでいたお父さんに、子供を連れて旅にでる事を伝えるのを忘れていた事に気が付いたのは、ずっと後の事だったです。




