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爆炎の女神

ガンガンと、うるさいくらいの応援音と声援が鳴り響く中、今は目の前で、二年生同士が戦っていた。


「あの人知ってます。最近、シュンくんが居ない時に、食堂で私と同じ席に座ろうとして来る人です」


俺の隣にいたライナが一人の黄色いローブを着た男子を指す。

二人だけでいる時に、なんとかお近づきになろうとしてくる一人らしい。

「対戦相手は、交際を申し込んできた奴だ。私たち二人同時に」


逆側にいたレイアが、相手の赤ローブの生徒を指差す。

こっちもかよ。


「まあ二人とも可愛いから、仕方ないかな?」

俺の言葉に、顔を赤らめる二人。


最近はこの二人からの好感度が暴上がりなんだけど、その原因はいまいち分からない。

武器をあげたくらいしか思い浮かぶ事はないけど、女性に武器を上げて喜ばれるはずもないし。


まあ、細かい事は気にしたら負けだと思い、最近ではあまり気にしない事にしているけど。


特殊トーナメント参加者には、特別観覧席として、一般観覧席とは違う場所、最前列の一般席とはちょっと隔離された場所に座れるのだが、何故か、二人とも俺のそばにいた。

特殊トーナメントは特殊で、出場者はサイン攻勢に会ったり、逆に別の参加者に闇討ちされる可能性もあるため、この席が設けてあるらしい。

まぁ。一種のアイドルというか、金メダル候補のような物なのだ。

ただ、そこに出場者の体の安全が絶対に守られているわけではないだけで。


ついでに、今俺の隣にいる二人も今回の魔法対戦の参加者だろう?とは思ったのだが、他の特殊トーナメント参加者も女性や、男性を側に二、三人おいている人ばかりなので、二人が居ないと寂しく感じてしまうのも事実で。

二人との会話も楽しいから、そのまま横にいてくれて助かっていた。


「あ、黄色の先輩すごいです!」

ライナが叫んだため、試合会場を見ると、雷が地面を走っているのが見えた。


へぇ。雷の魔法。風の魔法の上級魔法で、回避不能魔法だ。

赤ローブは、発動が間に合わなかった炎を空中にまき散らしてビクッと震え、地面に倒れた。


「勝者! 迅雷のガイヤっ!」


激しい怒声と歓喜の声が響き渡り、会場が揺れたかのように感じた。

というか、特殊トーナメント参加者は本当に凄い人ばかりだな。

そんな事を考えていると、隣で大きなため息が聞こえた。

「ああ。こんな雰囲気で戦うのか」

レイアが、誰もいなくなった試合会場をじっと見て、落ち込んでいた。


「大丈夫っ。レイアなら勝てるよっ」

俺が元気付けようとレイアの頭をぽんぽんと軽く叩く。

すると、レイアは満面の笑顔を見せる。


ライナがちょっと怖い顔をしてる気もしたけど、気にしたら負け。


「私も緊張してますのますっ」

ライナの口調がおかしい。

仕方ないので、ライナの頭もぽんぽんしてあげる。

二人とも、にへらと笑顔になっていた。


「試合準備お願いしますー」


二人の頭をぽんぽんしたり、撫でてたりしていたら、進行係の生徒がやって来て、二人に声をかけて来た。


「じゃあ、行って来る」

「行って来ますね。応援してくださいね」


二人とも、俺から離れて、試合会場の方へ歩いて行く。


その姿を見送った後、会場に目を戻し、ぼそっと俺は呟く。


「データベース検索、レイア ライナ ステータス」



[名前] レイア

[職業] 冒険者見習い


[ステータス]


[Lv]  24

[Hp] 700

[Mp] 300

[力] 120

[体] 103

[魔] 180

[速] 82


火魔法 身体強化魔法 無詠唱 連続魔法

着火 無鉄砲


[名前] ライナ シュリフ

[職業] 冒険者見習い


[ステータス]


[Lv] 22

[Hp] 600

[Mp] 380

[力] 80

[体] 93

[魔] 283

[速] 92


水魔法 氷魔法 無詠唱 連続魔法 同時魔法発動 速度強化魔法

回復魔法 瞑想 妄想


うん。二人とも強い。なんか、見てはいけないスキルも見えるけど。


多分、Cランク冒険者に近いステータスのはず。


「まあ、負ける事はないよな」


俺は、同級生の秘密を覗き見る罪悪感に包まれながら、独り言のように呟くのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――

「さあ行くかっ!」


シュンに頭を撫でてもらって私は、気分がめちゃくちゃ良かった。


両手の赤いグローブを閉め直し、ナイフ型の杖を取り出す。


そして、闘技場の真ん中で、目を閉じる。

さっきまでの緊張は消えていた。


昔、両親はAAAランク冒険者だったらしく、鬼のように強かった。


父親の動きは見えなかったし、母親の魔法は全てを吹き飛ばしていた。


だけど、その二人は一瞬でいなくなった。


里に降りて来た竜の討伐に出掛けて行き、帰って来なかった。


今でも、引退気味だった両親に頭を下げて来た騎士の姿と、泣きながら、まだ9才になったばかりの私に謝る騎士の姿は目に焼き付いている。


そのまま、ライナの家に行った。

ライナは優しい。私を受け入れてくれて、ずっとそばにいてくれる。


私の親友。


けど。今回は負けられない。両親のためにも。シュンを捕まえておくためにも。

シュンが好きだと思い知ったのは、空中に弾き飛ばされたライナを優しく抱き締めていたシュンを見た時だった。


彼は、最初から私たちの事も気にしてもいないし、入学の時から、先生の授業すら自分にはいらないと言った素振りを全く隠さない。


何か、もっと先の何かを見つめている姿。

そして、いつもはゆっくりした動きなのに、戦闘になると、鬼のような動きと顔になる。

まるで、何かに追われるように、または焦っているようにも見える。

何かができない事の苛立ちをそのままに、荒々しく戦闘を行い、戦闘が終われば再び穏やかな雰囲気をまとう彼。

何に焦っているのか、何にいら立っているのかは、分からないけど。

そのギャップに、普段見せてくれる彼の優しさに、戦闘の荒々しさに。

また、彼に私と同じく好意を寄せている親友の存在も。


彼をとりまくすべて、全部含めて、私は彼が好きになった。


だから。


「魔法トーナメント 一回戦 レイア 対 ファウ 始めっ!」


「勝って、シュンを手に入れるっ!」


私は、思い人からのプレゼントを握りしめて走り出した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「レイア 対 ファウ 始めっ!」


その掛け声と同時に走り出す、レイア。


なんか、不穏な言葉も聞こえた気がするけど、空耳だと思う。


一気に距離を詰めるのは、レイアの癖みたいなものだ。


至近距離からの魔法連打。

レイアが一番得意とする戦法だ。

危ないからあまり行って欲しくない戦闘方法なんだけど。


レイアは、身体能力が高い方で、魔法よりの近接アタッカーといった感じの戦闘スタイルを好んで行う。


だから、基本接近戦が増えるわけで。

強力な暴風魔法を詠唱準備していた相手が焦っているのが見える。


まさか、魔法使いが走って突撃して来ると思わなかった相手は、あわてて、詠唱を省略し、威力の弱い魔法を準備しなおす。


とっさに切り替えたのは、風の魔法だと思う。その対応力と判断は悪くないけど。


弾丸型のレイアのスピードにはかなわない。

詠唱切り替えと、新しい魔法の詠唱終了前に相手に接近したレイアは、両手を振る。

ナイフで、ローブを切られ、焦る彼の胸には拳から放たれた数十発の炎の魔法が当たっている。


一瞬遅れて起きた、激しい煙と爆発音が収まった時には、相手の上級生は床に倒れていた。


「勝者! レイアっ!」


まさかの女性新入生圧勝の結果に。


会場はけたたましい歓声に溢れたのだった。




1 16 少しだけ修正しました。

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