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竜の町へ

「ミリエル。朝からくっつき過ぎです!」

リュイの激しい声が響く。

ダライアスにまだ拘束されてしまっている俺達は、バランが準備してくれた家にまだいたのだが。

リュイと一緒に寝ていたはずなのに、気が付くと、リュイを押しのけてミリエルが俺のそばで寝ていたのだ。


リュイは、140cmくらいしかないのだが。

ミリエルは、170cm近くある。

スタイルの良さは、二人をダントツで抜いていたりする。

3人並ぶと、ミリエルが一番背が高いわけで。


寝ている間に入ると、小さい二人は押し出されてしまう。

しかも、竜人という事もあり、二人がいくらレベルが高くても、力が強くても、押したくらいではビクともしない頑丈さを持っていたりする。


ちなみに、奥で、ギャルソンは、ドス、ドスと鈍い音をさせながら朝食を作っている。

俺の作った包丁は、あんな鈍い音はしないはずなのだが、何を切っているのか不安になる音だった。


「今から、妾たちの家に行くのだから、卵は抱えておきたいと思うのが、女としての望みではないのかえ?」


そんな事を真顔で言うミリエル。

少し顔を赤くするリュイ。


「そななたちには、おるのじゃろう?主との証が。ならば、妾にも主との証をくれても良いであろう」

「絶対認めません!押しかけてくるのは、ミュレだけで十分です!」


真顔で言い続けるミリエルに、はっきり言いきるリュイ。

お母さんになったからか。

リュイは、しっかりと自分の意見を言うようになったなぁと俺が余計な事を考えていると。


「シュン様も、シュン様です!これ以上、増やさないでください!本当は、リュイだけ見て欲しいんです!」


突然叫ぶように言い出した発言に、思わず思考が止まる。

「ミュレも、ミュレも。本当はシュン独り占めしたいの」

ミュレも参戦して来た。


俺は、朝から、頭を抱える事になってしまったのだった。

この頭痛は、決して女の喧嘩に巻き込まれているせいだけではないと思いながら。



「で、今回の件で、竜人の町に行ってくると」

バランにとりあえず、今回の話をしに行くついでに竜人の町に行く事を告げる。

冒険者の本部ギルドに行ったのだが、裏道から入り、直接バランの執務室に来ているので、冒険者とは会わず、トラブルには発展していない。


しかし、今、バランの顔が明らかにひきつっていた。

ミリエルは、俺の腕をずっと握りしめている。

ギャルソンは、今回、明らかな騒動の火だねになりかねないので、家に置いて来ていた。

それでも、この顔である。


バランは、そんなミリエルを睨みつける。

「今、この町は、君に対して、かなり不満が溜まっている。なんといっても、、、」

隣で、俺の腕にくっついているミリエルを見て、言いにくそうに口をつぐむバラン。


俺は、絶対に俺から離れようとしない、竜族の姫と呼ばれた少女を見つめる。

彼女は、そんな俺に笑みを返してくれるのだが、その姿にリュイがイライラしているのか、カタカタと鎧が擦れる音が後ろから聞こえてきていた。


「ミリエルの事か」

「当たり前だ」

バランの口調が、きつくなっているのも、彼女のせいだろう。

「この町は、彼女の連れと思われる竜人に、破壊された。かなりの犠牲者が出ている。なのに、その娘と結婚し、二人とも保護している形になっている。君がね」

バランは、俺の顔をじっと見る。

「討伐隊の準備が進められている状況だ。もちろん、君へのね」

激しいくらい大きなためいきを吐くバラン。


「正直、これ以上君をかばう事も難しいといえば、難しい所に来ている。討伐隊は、町の人間まで集まって来ているらしい」


確かに。家族を殺された人から見れば、ギャルソンとミリエルは絶対に許せないだろう。

たとえ、自分では勝てないと分かっていても。

「襲われても、妾たちに傷一つつけることは敵わぬのにの」

ミリエルが呟く声を聞き。

俺は反対の手で、ミリエルの頬っぺたを思いっきり引っ張る。

「ぐぬっ。イタイ、イ、イタイ!」

「とりあえず、竜人の町に行って、今回の件を謝って来ようと思ってるんだが」

涙を流しながら痛がるミリエルを無視する。

「ならば、今回の襲撃の落としどころを探しに行ったと、評議会には伝えて納得してもらう事にしましょうか。あの場所に出るのも、馬鹿ばっかりの顔を何百も見るのも疲れるだけどね」

バランは、涙を流しているミリエルを見て、少し怒りが落ち着いたのか、柔らかな口調に戻っていた。


そうか。俺がさんざん罵倒されたあの弾劾裁判の場所は、評議会だったのか。

裁判所だと思っていたのだが。

俺がそんな事を思い出しているとバランが尋ねて来る。

「で、出発は、いつになるんだ?」


俺は、その質問に、薄く笑いながら答えるのだった。


「明日にも、行く事にしたい」


その言葉に。バランは盛大にため息を吐くのだった。




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