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竜人2

食肉。

この国には、昔から、人の肉を食べる習慣があった。

それは、いつからあったのか、その起源を知っている人はいなかった。

最初は、飢えからだったのかもしれない。食料が無かったためだったかも知れない。


俺は、俺の腕にからみつくようにしてべったりとくっついて離れようとしない少女を見ながらため息を吐く。


だけど、一つだけさっき分かった事があった。まさか、この国の人の肉を食べる習慣の起源が、竜人の婚姻に関わっているとは思っても見なかったのだ。


この町は、竜人の一人、ダライアスが作った町であると、笑う少女。


竜人。

竜であり、人である。地竜と、空竜と呼ばれる、巨大亀と、巨大な鳳凰をあがめる種族。

ワイバーンを乗り物として、自分達の弟、妹として扱う種族。


俺の肉を食べ、俺に自分の肉を無理やりに近い形で食べさせた、隣の少女は激しい脅迫じみた発言を自分達を囲んでいた冒険者たちに行い。


竜人の攻撃から、町を守り、人を助け、さらには4Sに溶かされかけた人を全員癒した俺を見ごちに、巻き込みんでくれた。

自分が、俺の嫁になる事により、自分達を殺すなら、俺が出て来ると言い出したのだ。

俺的には、どうでもいい事ではあったのだが、竜人と冒険者が戦うとなれば、それこそ大量の死人が出てしまう。

俺の目的としても、避けたい事ではあったのだが、彼女の戦争回避の仕方は、予想外だった。

結局、俺に恩を感じているバラン達にとって、恩と、恨みを考えた末、恩が勝ったらしい。

町を破壊し尽くした竜人を裁く事ができなくなったバランたちは、結局、竜人の二人を見逃すという、最終手段を取るしかなかったのだった。


さんざん嫌味も言われたが。

今は、隣の少女のために、リュイの機嫌がすこぶる悪いのが問題だった。


「だから、少し離れて歩いてくれないか?」

「竜は、一度絡むと離れるのに時間がかかるのじゃ。千年は待ってもらわんとな」

「首を跳ねたら、一瞬だと思うのです」


いや、首を跳ねたら、死ぬから。竜でも。

そう言いながら、斧をマジックリュックから取り出すリュイを必死になだめる。

「むーその場所は、ミュレの場所なの」


ミュレまで、機嫌が悪くなっている。

「それはそうと、きちんと名前で呼んで欲しいのじゃ。主様」

竜人の少女は、そう言って笑う。


その後ろを、ギャルソンが歩いているのは少しシュールであった。


彼女は、竜人の姫。

ミリエルと言うらしかった。


ギャルソンは、竜人の中で、飼育係のようなもので、ワイバーンを育てているらしい。

それは、趣味で、今までミリエルを育てていたとの事だった。

竜人は、男でも普通に乳母をするらしい。

それほど子供が好きな彼だからこそ。

ワイバーンが殺された事に対して、自分の子供を殺されたような気持ちになり、激怒したとの事だった。


「頭に血が上ったことは、悪かったとは思ってるんだが、まさか、嬢がそんな奴とちぎりを交わすなど、ありえん事を」

ぶつぶつと後ろで言っている、ギャルソン。


時々、ありえないほどの殺気が彼から、湧き出ているのが分かるのだが。

その度に、ミリエルに睨まれ、肩を落としていた。

「ギャルソン。元はと言えば、こんなすごいお人がおる場所を襲ったおぬしが悪いのじゃ。まわ、妾としては、こんないい男に出会えた事に、感謝しかないのじゃがのぉ」

機嫌よく笑うミリエル。


その表情に、激しい殺気をさらにまとわすリュイ。

空いてる俺の左手を、自分の右腕だけで、必死に抱えるミュレ。


「とりあえず、父上に挨拶にいかねばならんじゃろうな。もう、耄碌してはおるが、一応妾たちの長である事には変わりないからのぉ」


反対側を占拠したミュレを視線でにらみつけ、牽制しながらミリエルが呟くように俺にささやく。

「竜人の町って、ミュレ初めてなの。何処にあるの?」

固まっている俺を無視して、ミュレがミリエルを見る。

すると。

彼女は、空を指さす。

「遥か、天空じゃ」


今まで言い合っていた事も忘れて、皆、空を見上げるのだった。






「誘ってくれて嬉しいわ」

女性は、満面の笑みで青年の胸にもたれかかっていた。


「で、どうだった?彼は?」

青年の言葉に。

「本当に強くなったわ。すぐにでも、消してしまいたいくらいに」

「そうか。あの子を倒したから、そうじゃないかと思っていたが、やはり彼もそうなんだろうな」

「あの強さは、間違いなくそうだと思うわ。ん」


唇を奪われた女性は、しばらく身もだえた後。

青年を誘うような目で見つめる。


「だとしたら、何のスキルを持っているのか、気になるな」


青年は、そんな女性を全く無視するかのように、虚空を見つめる。


「ねぇ」

女性が、さらに誘いの言葉をかけようとすると。

「また、行ってくれないか?今度は、本気で」

「あら。いいの?骨も残らないわよ?」

女性の挑発的な視線を全て無視して、青年は続ける。


「【希薄の】を倒した事が気になる。【時空】に関係したスキル持ちの可能性がある。なら、君のスキルで、溶かせるのか、興味がわいて来た。【明星(スターライト)】は、どこまで有効なのか、知りたいね」

「いいわよ。でも、帰って来たら、私をしっかり見てちょうだいね。【皇の】」

「ああ。今からでも、君をしっかり見る事にしよう」


二人が、ゆっくりと倒れる。

部屋の中にいる二人の上で、小さなコウモリが、天井を飛び回っていた。



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