表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/312

冒険者最高峰という事

空を飛び。

普通ならとんでもなく時間がかかる距離を、ほぼ一日で飛んで来た俺達は、その破壊された町を見て、あっけにとられていた。

王国、首都ダライアス。

その規模は、東京23区はおろか、周りの首都圏内といわれる地域全てを含めた広さがある、超巨大な町である。


1000万以上の人が住む巨大都市。

高層ビルが立ち並んでいるわけではないのだが、圧倒的な広さの町のためキンカや、ドウタツにあるような、高い塀や壁、城壁すらない。


襲える物なら、襲ってみるがいい。圧倒的な兵力で返り討ちにしてやる。

そう言わんばかりの巨大都市なのだ。


しかし、その巨大都市が。

空中から見てすぐに分かるように、綺麗に4つに裂かれていた。


「これは、酷いと思うです」

リュイが小さく呟く。


俺も、その光景を見て、思わずうなずいてしまう。

そんな地獄のような十字架を見ながら、俺達は、貴族たちが住む中央区画に降りて行くのだった。


「お前のせいで!」

降りた瞬間。

突然一人の男から罵声を浴びせられる。

明らかに、高価な、豪華な服と、ローブを着たその男は、すぐにこの町を支配する、特権階級の一人だと分かった。


「卿、少し落ち着くべきです」

他の一人がその男をたしなめる。

ふと見ると、数十人の男が、俺達をいつの間にか取り囲んでいた。


「シュン殿。で良いかな。ようこそ、ダライアスに。と言いたい所ではあるのだが、今回の件。隣の国の王族であろうとも、許せるものでは無い。いろいろと話を聞きたいので、付いて来てもらってよいかな」

その中の一人。

初老の男が、進みでて、俺をにらむように見つめて来る。


その男たちに連れて行かされた先は、広すぎるほど広い屋敷だった。

誰かの家では無く。

この国の政治を行うためだけに作られた、議会のような物だという事は分かった。

そして。


凄まじく多くの人が周りを取り囲む中。

大量の椅子と、人が取り囲む中で、俺たちは裁判の受けるかのように、その中心の証言台のような場所に連れて来られていた。


周りにいる大量の貴族たちから、絶えず罵声が飛んでいる。

そんな中。

俺に声をかけた初老の男は、その中で一番高い場所に立ち。

「シュンリンデンバーグ殿で間違いないか?」

と尋ねて来る。

俺は頷くが、ミュレが、小さく「嫌な雰囲気なの」と呟くのが聞こえる。


「これより、今回の災厄について、聞き取りを始める!」

そう宣言される。


そこからは、質問と言うよりは、尋問だった。

「お前は、ナニモノだ?」

から始まり。

「ダライアスを壊滅させるために、竜族をけしかけたのか」

「乗っ取りに来たのか」

「キンカは戦うつもりなのか」

「むしろ、帝国からの宣戦布告か」

などなど。

ひどいのになると、今、ここで俺の首を跳ねて、献上すれば丸く収まるといった発言まで。


もう、これは、裁判と同じ。しかも、俺が許される事は絶対に無い、地獄の裁判のような物だった。

「シュン様。もし、襲い掛かってくる事があれば、暴れていいです?」

リュイがそんな事を呟くくらい、イライラするような尋問のような質問が続く。


そんな中で。

「竜族は、シュンリンデンバーグの身柄を欲している。これは事実であろう。次の襲撃がいつあるのかは分からぬが、次に来ると言ったのは事実。それだけ恨みがあるのであれば、この男が、竜族に何かしたのも事実なのであろう」

そう、最上段に立つ男が言い放ち。

「シュンリンデンバーグを拘束し、次の襲撃時に、身柄を引き渡す」


それだけ言い、長い長い、無意味な尋問の時間は終わってしまった。

そのまま、牢屋へ連れていかれそうな雰囲気を感じたのだが。

一人の男が、声を上げる。

「卿の方々に申し上げたい!シュンリンデンバーグは、確かに、大罪を犯しているのかもしれないのですが、同時に、冒険者として、最高位の地位を持っている男でもあります!」

その男は、これだけ広い場所で、すみずみまで通るような大声で叫ぶ。

「今、彼を拘束するということは、冒険者をないがしろにする事と一緒。彼の拘束による弊害は、あまりにも大きすぎます!さらに、彼は最高位の冒険者である以上、この町の事など知らぬふりをして自身の依頼をこなしていけば、良かっただけの事!」


全員の声が、一段小さくなるのが分かった。

「なれば、彼が来てくれた事。今回の厄災について、手伝ってくれると言う事!冒険者についての取り決めに基づき、彼を丁重にもてなす事が、最善策と思われます!ご意見を賜りたい!」


その言葉に、「いや、そうはいっても」

「町の者が納得せぬ」

「大量に死んだのだぞ」

「我々の町が襲われているのだぞ」

など、愚痴のような言葉が漏れて来る。

その中で。

「卿たちの、不満、疑問、怒りはもっともであると感じる。しかし、冒険者最高位、4Sの称号を持つ物は、竜を上回る者にか与えられる事は無い!なれば、彼は、この町をおそった竜族すら超える者であると言う事!その意味、もう一度ご一考願いたい!」


その言葉に、一気に会場におびえが走る。

そして。

「そこまで言うのなら、冒険者がその者をしっかり監視してくれるのだな。もし、逃げたり、行方が分からなくなるようであれば、分かっておるな」


一人が放ったその言葉に。

「無論。冒険者は、約束を破る事を良しとしない。我々が、責任を持ち。彼を監視しよう」

はっきりと断言し。

「ならば、今回の彼の身柄については、冒険者に一任する事とする」


そう言われて、このおかしな無理やり連れてこられた茶番は、終ったのだった。


俺達が、屋敷から出ると、俺達を囲んでいた、兵士のような人達は凄まじい速さで、屋敷に戻っていく。


そして、俺達の目の前には、さっき、大声で俺達を解放するように叫んでくれた男が立っていた。

「シュンリンデンバーグ殿と、その奥方。ほんとうに、申し訳ありません。突然、おかしな出迎え、心から謝罪いたします」


手を胸の添え、そのまま、膝を折る。

「私は、このダライアスの冒険者育成を始め、冒険者の全てを取り仕切らせていただいている、バランと言います。冒険者総括と言えば良いのでしょうか」

そう言い添える。

「この町の者たちは、4Sという言葉の重さ、そしてその強さ、地位の高さを理解している者がほとんどおりません。お許し願えれば、幸いでございます」


頭を下げたまま、微動だにしないバラス。

それは、王に対して、謝罪をする姿そのものだった。

「いや、大丈夫だが」

俺が呟くように、声をかけると。

凄まじい勢いで頭を上げ。満面の笑みで。

「ありがとうございます!このバラン、シュンリンデンバーグ様のために、尽力をつくさせていただきます!」

そんな事を言ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ