騒ぎの予感
「いや、それは無理だろ?」
王都の中。
俺は、ヒウマの武器屋の中にいた。
ヒウマの武器屋で魔骨を作ってから、その作り方を教えて欲しいと言われたので、作っていたのだが。
「いやいや、そんな魔力ぶち込んだら、流石に壊れるだろ!」
そう言っている先から、骨が小さくなり、俺達の身長以上ある骨が、腕くらいのサイズまで縮んでいく。
「まじかよ。こんなの今まで知らなかったぞ。なんでこんなに縮むんだ?」
ヒウマが、不思議そうに見ている先で。
「ここからさらに小さくして、強度を上げる事も出来るが、これ以上小さくしたら武器として使い勝手が悪くなる。このサイズが、見極めるタイミングだと思う」
俺の言葉に、ヒウマは小さく頷きながら、その魔骨を手に取る。
「魔力を込めて、骨を武器化する。なるほど。これなら、魔物の皮膚も切り裂けるかもな」
その横にある、俺の武器をもう一度見て、ため息をつくヒウマ。
「その結果が、その槍か。魔骨と、鉱石を混ぜ合わせた黒竜槍」
そう。俺の槍は、黒く染まっていた。
リュイの武器もなのだが。
黒は、全てを包み込む色。全てを癒す色。
ドワーフでは、そう言われ、女性は、黒を表す。
男性は、炎であり、作り出す色。赤で表される。
本来であるならば、ドワーフの持つ武器は、結婚した女性は、旦那の赤に染まるのだが。
俺の武器は、リュイの黒に染まっていた。
「本当は、赤に染めるべきらしいんだが、何かリュイの武器と合わせたら黒になっただけなんだけどな」
「尻に敷かれてるって事でいいんじゃねぇのか?」
ヒウマの言葉の後。
「ヒウマー!手伝って欲しいのにゃ!仕事もいいけど、少しは子供の面倒を見て欲しいのにゃ!」
奥から、突然、にゃんの叫び声と、子供の泣き声が聞こえる。
俺は、ヒウマと顔を合わせ。
思わず笑ってしまう。
「お前、二人目だろ?手伝ってやれよ」
俺の声に。
ヒウマは、頭を掻いて照れていた。
「育児とか、柄じゃない気もするんだがなぁ」
「獣人は、なかなか気が強いから、痛い思いするぞ」
俺の言葉に。
「今のは、ミュレの事言ったの?シュンでも、許さない事もあるの!」
奥から、可愛い声が聞こえて来る。
俺は、ヒウマと再び顔を合わせ。
二人で笑いながら、とりあえず仕事を放りだし。
小さいイタズラっ子をいじり倒すために、奥の部屋に向かうのだった。
そんな日々を過ごしていた時。
アムから、再び城へ呼び出された。
「甥と、姪と遊びたかったんだけど。ちょっと、大変な事が起きた」
アムの私室に入った俺達一家に、アムは真剣な顔で伝えて来る。
「キンカの、ドンキさんからの連絡だ」
そう前置きすると。
「ワイバーンを倒してくれたこと。本当に感謝しているんだけど。ちょっと問題が起きたみたいでね」
アムは、俺達を見続けたまま。
「この世界には、竜とよばれる魔物がいる。ワイバーンも、その一つだが。地竜と呼ばれる伝説の竜も。空竜と呼ばれる、存在すらあいまいな竜もいる」
俺は戦った事があるので、頷く事しか出来ない。
リュイも、シリュの小さい手を握りしめる。
ミオと、ミリが、そんな俺達の様子を不思議そうに見上げていた。
「そんな中で、【竜人】と呼ばれる者が降りて来たらしい」
その言葉に。
俺は、呆気にとられる。
すかさず、データベースが、返事をしてくれた。
『【竜人】地竜、空竜をあがめる、空の民です。空中にある町に住み、人と交わる事を良しとしない種族です。一部、竜と同じで羽を持ち、空を飛べます。人とは関わらない、干渉しない、干渉させない。が基本原理のはずなのですが』
そんな言葉が、俺の頭に流れて来る。
なんか、大分データベースの音声機能が、スムーズになった気もするのだが。
しかも、どう聞いても、ミュアの声だし。
そんな、どうでもいい事を考えていると。
「そんな種族がいた事も聞いた事がないし、聞いた事もないんだけど」
アムは、少し時間を置くと。
「でも、ゲームの話なら、ありえるよね。天空の使者だっけ?」
ああ。こいつもか。
俺は、その言葉の一つで、アムも、転生者である事に気が付く。
「天使なら、いいんだけど、どうやら、そうではないみたいでね。気性が荒いのか。彼らが、帝国のいずれかの町を襲ったのなら、僕たちで対処のしようもあるんだけど」
アムは、小さく息を吐く。
「襲われたのは、王国の、ダライアスだそうだ」
その言葉に。
俺は、思考が停止してしまう。
「それゆえに、面倒な事になっているらしい。ドンキさんから、すぐにシュンさんに帰ってもらうように通達が来たんだよ。【犬鳥】の速達でね」
ファイは、またこき使われているらしい。
「だから、とりあえず、さっきから、この王都は、さっそく、結界の発動をする事になった。そして、シュンさんは、キンカに戻ってもらう事になった」
そう言って笑うアム。
相手は、前にキンカを脅してきたダライアスだ。何か言って来ているのだろう。
俺が、うんざりした顔をしていると、アムはそんな俺を見て笑う。
「子供たちは、どうする?僕が面倒を見てもいいよ?ここには、お手伝いも、メイドも、お世話係もいっぱいいるからね」
子供達を置いて行ってほしそうなアムを無視して。
「「キンカにあるのが、私たちの家なんで、帰るです」の」
嫁たちは、そろって答えたのだった。




