表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/312

うごめく大地

「ミュレも、甘く考えてたの」

【神獣化】を見せて、びっくりしていた冒険者たちを置き去りにして、俺達は目的地についていた。


冒険者たちが、ミュレが巨大化するのを見て騒いでいたが、まぁ、気にしてはいられない。


俺達は、データベースの地図が真っ赤に染まっている一角を空から見ていた。


「昔、テレビで見たけど、蛇の島みたいだな」

俺がそう言うと、ミュレがぶるっと震えるのが分かった。

「ちょっと、ミュレ、この数は苦手なの」

ミュレが呟くのも良く分かる。


今俺達の真下に見えるのは、見渡す限りの蛇だった。

地面すら見えず、一面全てが、うごめく黒い物体に覆われている。

それが、少しの範囲ならまだしも、上空から見える範囲全てという凄まじい数だった。


「増殖でもしたのか?」

「こんなの増やしたくないの。増やしても全然いい事ないの」

万。いや、下手したら、数十万、数百万はいる。


「まぁ。見てても気持ち悪いだけだからな。やるか」

「とってもやりたくないの」

俺の言葉に、ミュレはしょんぼりした返事を返して来る。


俺はそんなミュレの体を小さく叩いてやり。

「さあ。やるぞ!」

自分に気合を入れる意味で声を張り上げる。

と同時にミュレと感覚を同化していく。

ミュレが震え。

「にゅっ!いきなりは、ダメなのっ!」

そう言いながら、ミュレと感覚を同調し、一体化していく。心に侵食されていくようで、支配される感覚が、嬉しいと感じるミュレが、少し興奮しているのは、やっかいな性癖のせいだろう。

俺は、ミュレの体に顔を一度うずめ。

ミュレの臭いを嗅ぐと、ビットを展開するのだった。


「なんでも来いなのっ!」

突然元気になったミュレに笑いながら、空からの攻撃を開始する。

ミュレも、獣の血があるようで、自分の臭いを嗅がれたり、俺の臭いを嗅ぐのは好きなようなのだが。

感覚が一体化しているので、俺がちょっとだけ気持ち良くなっているのが分かったらしい。

猫を見たら、時々、吸いたくなるじゃないか。

ミュレの機嫌が、一気に良くなる。

ビットを、地面すれすれに飛ばしながら、俺は情報を集めて行く。

ビックバイバーは、大型犬くらいの高さと太さを持つ巨大蛇なのだが、比較的おとなしい魔物だ。

締め上げられたり、人間くらいなら大人でも飲み込まれてしまうが、ディアボロスのように、飛ぶわけでも、バリジスクのように、辺り一帯に毒をまき散らすような凶悪な攻撃はしてこない。


ただ、ただ、巨大な蛇なのだが。

「さすがに、この数は嫌になるな」

俺は、ビットから、魔法を放ち、数を少しずつ減らしながらも呟く。

ミュレも、魔力弾で空爆して、俺の追撃しているのだが、まったく地面の蛇の数が減る様子はない。


「もう、飽きてきたの」

ミュレが呟く。

俺も飽きてきているのを感じていた。一向に数が減る気配すらない。

「しかし、こんな数、どこから来たんだ?」

俺が呟くと。

「ミュレも、分からないの。帝国でも、これだけの数が来たら絶対に大騒ぎなの。森から出て来たとは絶対に思えないの」

ミュレが俺の独り言に返事を返してくれた時。


俺のビットの一つが、とんでもない物を見つけた。


紫色の光を放つ、巨大なゲート。

そして、その前にそびえたっていたのは、4階建てのアパートに匹敵するような大きさの巨大蛇。


「なんで、見つけられなかったんだ!」

俺は思わず叫んでいた。

クイーンバイパー。蛇の女王。 バジリスクとは違い、蛇を呼び寄せ、コロニーを作る女王アリのような蛇の女王である。

凄まじく大きいのだが。あれは、魔の森でしか見た事がない。

俺が、40年孤独に戦っていた時に、見かけた事はあるが、あまりの大きさに隠れてやりすごした奴だ。

奴は、常に無数の蛇を回りに連れているため、俺一人だと絞殺される未来しか見えなかったヤバイ奴なのだ。


「あの光の中からさっき出て来たの!」

獣人特有の視力で見えたらしい。ミュレが叫ぶ。


それを聞いて、俺は納得してしまった。

あのゲートは、昔に炭鉱で見たゲートに良く似ている。

あれも、無限に魔物を吐き出していた。


炭鉱のゲートでは、やっかいなゲジゲジまで出て来ていたし、亀や、ムカデも大量に出て来ていた。

それと同じように。

きっとさっき見た、ジャイアントバッファローもこのゲートから出て来たのだろう。

それなら、こんな平原にあの魔物がいた理由も分かる。


そして、これだけの数の蛇がここにいる理由も。どっかから、移動して来たのか。


「ゲートが開いたから、移住でもしようと思ったのか」

「それは、絶対にやめて欲しいなの。ミュレ、気持ち悪くて眠れなくなるの」

ミュレの毛が逆立つのが分かる。

まぁ、ミュレの意見には、俺も賛成である。


こんな風景をみたら、しばらくは悪夢にうなされそうだ。

「ミュレ、あの女王からやるぞ!」

「はいなのっ!」

俺の指示に、元気に返事をして、巨大な蛇に向かい飛んで行くミュレ。


しかし。

いきなり、目の前に蛇の口が現れる。

慌てて、槍で殴り飛ばす。

おとなしく地面に落ちていくビックバイバーを見ていると、すぐ次々とビックバイパーが、地面から飛びあがってミュレに襲い掛かって来た。

 次々と跳びあがり襲い掛かって来る蛇を叩き落としていくのだが、流石に数が多い。

俺が、対処しきれずに、噛まれると感じた時。

ミュレは、咄嗟に、さらに空高く飛びあがり、蛇のジャンプの届かない高さまで飛び上がって逃げてくれていた。


「面倒なの」

「だな」

遥か空中で、一息ついたミュレの言葉に、俺も呟く。

女王蛇の高さは、他の蛇もジャンプができる高さらしい。

明らかに女王に近づけないように邪魔をしてきていた。


「やっぱり、上空から、空爆が一番いいか」


俺がそう呟き、ビットを大量に発動させたとき。


「なんでなのっ!シュン!厄介な事になったのっ!」

ミュレが突然叫ぶ。


俺が何か起きたのか分からず戸惑っていると。

データベース上の地図に、緑色の丸が十何個近づいて来るのが分かった。

「まさか」

俺が呟くと。

「まさかなのっ!あの人たち、こっちに来たのっ!」

ミュレが悲痛な声で叫ぶ。獣人の異常な視力にて、見えていたらしい。


俺は、思わず頭を抱えるしかなかった。


必死の形相で、走ってくる冒険者たちがなんとなく見える。



そう。

俺と一緒にいた冒険者たちが、範囲感知の魔法を使い、大量の敵を察知して、俺とミュレが心配になり助けに来たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ