表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/312

仲直り

一人で狩りをし続けていたある日の昼休み。


「シュンくん」


一人で、久しぶりに食堂でご飯を食べていたら、ふと声をかけられた。

俺が顔を上げると、金髪がふわふわ揺れているのが見える。

ストレートヘアから、ふわっとしたボブショートに髪型に変えた、ライナだった。

 歩くとふわふわと金髪が揺れてちょっとかわいい。


「もう、食堂に来ないのかと思って心配したんだ」

前もショートだったけど、さらに短い髪にしたレイアもいた。

うん。男の子みたいなレイアもかわいい。

今まで、二人と顔を合わすのもなんか苦しくなっていて、あえて避けていたような気がする。

いや、お昼ご飯は外の食堂で食べたりして明らかに二人を避けていた。


二人とも、自分達が持っていた、野菜大盛定食を俺の前に置いて座って来る。


あの定食は、俺、苦手なんだよな。あんな山盛りのサラダは食べれない。

 自分が食べているのは、巨大ケバブサンドのようなもので、大き目のパンに大量の肉が詰まっている。サラリーマン時代に好きで良く食べていたんだよな。ただし、今は育ちざかり。一個じゃぜんぜん足りない。


「あの時は、本当にごめんなさい。私たちもシュンくんみたいに動けて、戦えるんだって勘違いしちゃったの」

ライナが、サラダを目の前にして、うつむきながら小さく呟く。


「自分が弱いんだって、守ってもらってたんだって事にやっと気づけたと言うかさ」

レイアも呟くように言う。


周りの視線が痛い。

みんな、俺が二人を連れてちょくちょく、町の外に出ていた事は知っていた。そして、突然二人を連れて歩かなくなったり、一緒にご飯を食べたりしなくなった事も。

これは、俺たちが付き合っていて、町の外でフラれたとか、変なストーリーが構築されてるパターンの行動だろう。


皆が興味深々でこちらを見ているのが分かる。


二人は、しばらく考え事をしているような沈み込んだ顔をしていたのだが、突然顔をあげると、真剣な顔で叫ぶ。

「「ごめんなさい!」」

涙を流して、謝ってる二人に俺は何を言えばいいか分からない俺は、その姿を茫然と見る。


そもそも何に謝ってるのかも分からない。

けど、とりあえず、何か言わないと二人とも泣いてるし。

とりあえず、口を開く。

「あ~。え~っと、いや、悪かったのは、僕だし、それに、戦い慣れてるのも、僕だし。それに、いろいろと準備というか、やっていなかったのも僕だし。僕こそ、ごめんなさい」


何を言ってるか自分でも分からないまま、とりあえず俺も頭を下げる。


「本当に?シュンくん怒ってない?」「怒ってない?」

二人は俺を見ながら、聞いて来る。


「いや、本当に悪いの僕だし」


「「良かった~!」」


いきなり、二人とも大泣きし始める。

俺は一生懸命、二人をなだめる。

なんか、周りが騒がしいけど、無視っ!


あっちで、別の女の子達がワクワク顔でよろこんでるけど無視っ!


これ、公開告白とかじゃあないからっ!


仲直り謝り大会の後、俺は二人と一緒に午後の実技練習に付き合う事になった。


てか、二人ともなぜか、俺の腕をつかんだり、背中を押してきたり、ボディタッチが多い。


ライナにいたっては、俺の腕を抱え込むように掴んで、練習場まで引っ張って行こうとする。


振りほどくのもかわいそうだから、されるがままになっていた。


いや、ごめんなさい。女の子の体はやっぱり柔らかくて、引っ付くと癒されます。


そんなこんなで、練習場に到着する。

途中、野郎の殺気を浴びたり、他の女の子のしたり顔を見つけたりといろいろあったけどね。


で、練習場で二人の魔法の打ち合いを見ていた。

普段は的をめがけて撃つのだが、今回は、二人が魔法を打ち合う、実戦形式の実技だ。


この練習場の中は、回復魔法と、威力軽減魔法がかかっていて、即死はないし、当たってもほぼノーダメージに抑えてくれる。

原理は全く分からないけど、いわば、PVPエリアみたいな場所だった。

安全性はどこよりも高いと思うけど、俺の魔法の威力だと軽くこの場所の許容範囲を超えてしまうから、万能というわけでは無い。

魔法使い見習いと言われている人が、魔法の打ち合いをして感覚を掴むためだけに設置されている練習場だ。


なんせ、魔法は必中だからな。


ライナが水魔法を()()放つ。


レイアは飛んでくる水魔法のいくつかを火魔法で打ち消し、その間をすり抜けるように走り出し、ライナの足元に火炎魔法を打ち込む。


ライナは、巻きあがる土に視界を遮られる。すかさず水魔法を地面に使い、泥状にて土煙を抑え込む。


しかし、レイアの次の火の魔法がライナにせまっていた。


ああ。危ない。

直感に近い感覚で、俺は動き出す。

足元を泥状にしてしまったため、足が滑り、咄嗟の回避行動も、魔法の発動も遅くなっている。

風魔法を使い、レイアの火魔法を吹き飛ばす。


きょとんとするライナに


「今のは減点」

と俺がいうと、ライナはめっちゃ可愛く笑った。

レイアがむくれている気がするけど、気のせいだと思いたい。


だけど、レイアとライナが天才というのは分かった。

今、ライナは相手の魔法を見てから、水の魔法を使用している。

魔法の発動スピードは、本当に凄いとしか言いようがない。

俺でも、ギリギリ出せるかどうかの構築速度だ。

今は、、ね。

レイアにいたっては、連続で火魔法を打ち出せている。

無詠唱だからこそ出来る技だが、普通、ここまで連続で打つと魔法がぶれたり、暴走したりする事もあるのに、本当に安定している。


自分もこの数日、めちゃくちゃ練習して出来るようになってきた魔法の複数、即時発動だけど、正直、かなり難易度が高い技術だった。


「ちょっと、シュンも付き合いなさいよっ」


レイアが片手に火の魔法を発動させながら、俺に声をかけて来る。少し口調に不機嫌な感情が入っていた気がしたけど、気のせいだと思う。


「いいよっ」

俺は返事をすると、武器を構える。


「ちょっと、何よ!その凶悪な武器はっ!」

俺のこん棒を見て、レイアが驚くが気にせずに武器を構える。


「本気で行くから、覚悟しなさいっ!」


レイアは、炎の矢を()()放つ。

連続発動だけじゃなく、複数同時発動とか。

レイアも十分天才だと思う。


俺は、そんな事を思いながら、冷静にメイスに水魔法をまとわせ炎の矢を叩き落とす。いくつかの火魔法は、風魔法で火の軌道を変える事で避ける。


一歩も動いていない状態で全ての魔法を叩き落とされたレイアはポカンとしていた。

魔法は必中だものね。

でも、魔法が撃ち落とせたり、魔法の起動を変えられると言う事実は、実はデータベースに載ってたりする。


さっき、レイアとライナがやっていた魔法に魔法を当てて打ち消すのも、俺が教えた事だ。

けど、魔法を武器で撃ち落とすなんて、基地外しか思いつかないよね。

いわば、飛んでくる鉄砲の弾を叩き落とすような物だから。


呆気にとられている、レイアを俺はうっすらと微笑みながら見る。

「レイアも強いねっ。そうだ。ライナ、いいもの見せてあげる。水魔法は攻撃力が低いからこっちに切り替えるといいかもよっ」


俺はそういいながら、水魔法で作った弾の数々を()()()()()


「いくよ」

俺の声と同時に、前方に散らばるように氷の弾が飛んで行った。

氷状散弾魔法。


「ちょっと、それは無理っ!」

レイアは、身体中を氷に叩かれて、地面に倒れ()()

直撃なんてさせて、傷つけるわけには行かないから。

全ての魔法をわざと外したのだ。


最近やっていた、人を守る戦いをする上で身に着けた魔法の発動後の軌道修正。

風魔法を使い、威力を落とさずに魔法の起動を変える技だ。

発動させた魔法をUターンさせる事は出来ないけど、外れる起動から、直撃させる事は出来るようになっていた。もちろん、その逆も。


ある意味、俺の魔法だけ本当の意味で必中になったのかも知れない。


ついでに、回復魔法もかけておく。

女の子に傷が残ったらやっぱり罪悪感があるしね。


「やっぱり、シュンくんはすごいですっ!」


ライナは興奮しながら、声を張り上げる。

「なんか、強さが桁違いだよな」


レイアも少し機嫌悪く呟く。


「シュンくんは、魔法対戦に出ても十分戦えそうですっ!」

「だよな~。本当に強いわ」


興奮しながら話す二人を見ながら、俺は聞きなれない言葉が気になった。


「魔法対戦?」


「えーと、魔法対戦というのはね、、、」


どうやら毎年一回、学校内で、大会を行うらしい。

剣技と、魔法、特殊とあり、学生同士で戦う、いわば、PVP大会みたいなものという事だった。


優勝商品は、武器やローブ。店で売られている、最上級の物だと言う事だが、はっきり言っていらないものだ。


「シュンくんは、多分選ばれると思いますよ」

二人は嬉しそうに笑う。


「実は、私たちも推薦を受けたの」

「なんだけど、武器がね。試合で使う武器は、自分の持ち込みみたいでさ」


嬉しそうに両手を握るライナと、本当に心配顔のレイア。


二人を見ているとつい口に出てしまった。


「まあ、まあ、二人に何か武器作ってあげるからさ」


「本当に!」

「いいのか?」


俺が何気なく言った言葉に二人とも満面の笑みで答える。


あ、もしかして、自分でハードル上げたかな?

ちょっとだけ、不用意な発言に自分でへこんでしまった。


11.29 ほんのちょっぴり少し書き換えました。

2023 2 加筆修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ