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凶悪な蛇

バジリスク。

転移者が名前をつけた北の森にしかいない魔物だ。

姿は、巨大な大蛇。しかし、頭は二股になっている。

そして、その名前を付けられた理由は。


「バジリスクが来ているぞ!数は不明!」

「子供を家の中へ!急げ急げ!」

「解毒薬は全部出せ!」

「にゃんも、家に入って扉を固定しろ!俺が死んでも出てくるんじゃねぇぞ!」


獣人達の町は、一気に大騒ぎになっていた。

「バジリスクってそんなに危険な魔物なのです?」

リュイが、獣人のあまりの慌てぶりに驚いていると。

「俺がこの町に転移して、しばらくした時にあいつは降りて来た」

ヒウマが、唇を噛みしめながら呟く。

「簡単に解毒出来ない、致死毒の唾と、少々の岩なら溶かしきってしまう溶解液を吐く化け物だ。 俺は、小さかったから家に閉じこもって何も出来なかった」


「あの惨劇は、忘れられん。子供が、半分喰われた」

長が、殺気をまとったまま会話に入って来る。

「家の扉など、あの溶解液の前では無力だった。そして、致死毒は食らってから動き回れば確実に死ぬ。動きを止めても、喰われて死ぬ」


「みんな死んだ。誰も助けられなかった。だから、俺は、強くなろうと思った」

ヒウマは、なんとも言えない顔をしていた。


「今度は、やらせん」

長が、拳を握りしめる。

「シュンさん。申し訳ないのですが、討伐に参加をお願いいたします」

獣人の一人が、声をかけてくる。

言われなくても、参加する気だった俺は、小さくうなずく。

その返事にほっとした様子のその獣人は、俺に小さなビンを2本渡してくれた。

「致死毒の効果を遅らせてくれる解毒薬です。致死毒は、瞬時に解毒は出来ないですが、毒を受けて、すぐにこれを飲めば、即死は防げます」


データべースによると、バジリスクの致死毒は、5分で体が動かなくなり、10分で死ぬらしい。

しかし、これを飲むと、30分程度は動けるようになる。

その後は、安静にして数日寝込む必要はあるのだが、死ぬ事は無いとの事だった。


「ありがとう」

俺は、素直にその解毒薬を受け取る。

「解毒薬は、今渡したので、全部だ。ほぼ戦闘に参加する全員に渡してあるからな」

その言葉に、長の本気が見てとれる。


俺たちが、十分な準備をする間もなく。

「最上部に到達!第一陣、突撃しました!」

そんな報告が入って来る。

「動きを止める事を最優先しろ!最上部まで行くぞ!ヒウマ!」

そう言うと、長と、ヒウマは、3メートル近くある上の足場に向かって跳ぶ。

足場を掴むと、体を持ち上げ、さらに上の足場へと跳んで行くのが見えた。

「獣人の長は分かるけど、ヒウマも慣れたもんだな」

俺は、どうでもいい事で感心してしまう。

「私たちも行くですか?」

リュイが聞いて来る。

俺はその言葉にうなずきながら、リュイの頭を撫でる。

いつも通り、赤くなるリュイ。

「絶対に、接近しない事。いいなリュイ」

俺は、頭を撫でながら、リュイに言い聞かせる。

「でも、私、近づかないと戦えないです」

そう言うリュイに、魔力ビットを大量に浮遊させて見せる。

「あ。そうですね。それがあったです!大丈夫です!」

笑うリュイを、軽く抱きしめ。

俺は、リュイを抱える。

「一気に上に跳ぶからな。しっかりつかまってくれ」

俺はそうリュイに言うと、空中に向かって跳ぶ。

崖の外へ。

しっかり首に回されたリュイの手を感じながら、俺は空中の結界を蹴って飛びあがる。

【手加減】を切ったために異常なステータスが、仕事をしてくれる。

ひと蹴りで、3つの足場を飛びあがる。

「化け物かよっ!」

ヒウマの声を置き去りにして、二回目の蹴り。

そして、おれは、数回の蹴りを繰り返して一番上まで跳びあがっていた。

空中で見たのは、崖から獣人の町でもあるくぼみに入ろうとしている二股の大蛇。


「見つけた!」

俺が、叫んだ時、大蛇は何かを飛ばす。

少し緑色っぽいそれは、大蛇を迎え打とうとしていた一人の獣人に当たってしまう。


「いったん下がれ!タロウを安全な場所へ引きずっていけ!急げ急げ!」

タロウと呼ばれた、獣人が、解毒薬を飲んでいるのが見える。

しかし、一回退こうとした獣人達に向かい再び大蛇のもう一つの顔が口を開けるのが見えた。

「シュン様!」

「分かってる!」

俺は、切断結界を出す。

その色は、七色ではなく、黒い板だったが、バジリスクの頭を切り取る。

地面に頭が落ちるのと一緒に頭が一つになった本体もくぼみにおりてきた。


「気をつけてください!あいつ、再生するんです!」

獣人の一人が叫ぶ。

綺麗に切り取られた頭の付け根が、膨らんだかと思うと爆発するように何かの液を飛ばしてくる。

絶対結界で防ぐ俺の前で、頭が復活していた。

「とんでもないです」

リュイが小さく呟く。


切り取った場所は、再生する。

しかも、復活時に溶解液か、致死毒液をまき散らしながら再生するのだ。

厄介極まりない。

「一匹だけか。助かったな」

長が俺の横で呟くのが聞こえた。


いや、これが数匹出てきたら壊滅どころじゃなくて、全滅してしまう。

俺がそんな事を思っていると。

「どっせーい!」

聞いた事もないような掛け声とともに、ヒウマがバジリスクを殴っていた。


「潰せば、回復も遅くなるだろ?」

岩鎧をまとった拳で殴られたバジリスクの皮膚が避けているのが見える。

「無茶するな!ヒウマ!」

長に注意されながらも、二発目を繰り出すヒウマ。

しかし、相手の頭は2個ある。

もう一つの頭がヒウマをかみ砕こうと頭を伸ばす。

「行くです!」

その時、リュイの斧が唸る。

打ち出された俺のビットは、真っ赤に燃え盛り。

ヒウマに向かっていたバジリスクの頭に、正確にヒットした。


「助かった!」

ヒウマは、俺たちの所まで飛びのいて来る。

頭から、肉が焼ける臭いと音をさせながら、バジリスクは口を開く。

「動くなよ!」

俺は全員に叫びながら、絶対結界を張る。

結界に阻まれ、致死毒液は俺たちに届かない。

俺は、それを確認すると。

ニヤリと笑う。

槍を握りなおし。


地面を蹴る。

懐に入った俺は、槍を一気に振り、二つの頭を切り落とす。

一気に膨らみ、再生しようとする頭を、もう一度切り落とす。

切り落とされたコブのような頭は地面で破裂するが、結界に阻まれ俺には届かない。

「なます切りにしてやるよ」

俺は、次々とコブを切り落としていく。


その合間合間に、赤い球が大蛇にヒットしていくのが見える。

長たちも一気に突撃して来るのが見える。

液が厄介なら、飛ばせなければいいんだ。


俺は、余裕の顔で頭を、こぶを切り落とし続ける。

もう、勝ちは確定していた時。

突然、俺はビット事、吹き飛ばされていた。


衝撃波?

俺が体制を整えて地面に着地した時。

弾き飛ばされた何人かの獣人が、一段下の足場につかまっているのが見えた。


「マジかよ」

ヒウマが絶望の顔をする。

「最上段の家の中にいる者は、下に降ろせ!急げ!」

長が切羽詰まった声で叫ぶ。


俺たちの目の前にいるのは、翼の生えた蛇。

悪魔が乗るといわれるう、蛇。

「ウロボロス。A級が2匹かよ」


ヒウマの言葉が、俺の耳に残る。

そして。

ウロボロスと呼ばれた、空飛ぶヘビは、口を開ける。

「耐えろ!」

長の言葉の後。

巨大な岩でもある足元や壁ににヒビが入るほどの衝撃が俺たちを襲ったのだった。


全員で耐える。

俺はリュイを腕の中に抱え込みながら、絶対結界を地面に刺してじっとしているしかなかった。

魔力ビットの方は、今の一撃でだいぶ遠くに飛ばされてしまっていた。

衝撃波が落ち着きかけた時。

とどめといわんばかりにバジリスクの両頭が弾ける。


衝撃波に乗り、全方向に飛び散る致死毒液と、溶解液。

耐えきれず、獣人のほとんどが薬を飲む。

ヒウマも、両手の鎧を溶かされながら、なんとか耐えていたのだが。

「反則だよな」

と呟きながら、膝をついていた。

「また、悲劇が起きるの、、、か」

長が、小さく呟いた後。長は、2匹の蛇を睨む。


「そんな事は、させぬわぁ!」

力いっぱい叫んだ長は、巨大な獣になり、バジリスクにかみついていたのだった。

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