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農耕の村

「あ、ありがとうございますです」

リュイが、渡された鎧に、泣きそうな顔をしている。

地竜のウロコを使用した、ドラゴンメイルだ。

軽くて、動きやすいのに、防御力は、地竜を上回るはずだった。

その上、腰の部分に数個丸い突起が付いている。

そこには俺の魔力ビットが仕込まれており、鎧がリュイの魔力を吸って絶対結界の小さい物が発動できるようにしてある。

ただ、かなりの魔力を吸うから、リュイが気絶する可能性は高いが、一回発動すればリュイを囲むように発動し、数時間は時間が稼げるはずだった。

俺が、リュイを助けに行ける時間を稼ぐには十分である。


「シュン様に吸われるのは気持ちいいです」

などと、この装備の説明中に、危ない発言が聞こえた気もするが気のせいだと思いたい。


「私の装備はあるの?見せてほしいなの」

ミュレが、リュイの装備を見て、しつこく聞いて来る。

俺は、そんなミュレに、ビキニを見せる。

ボンボンが胸の横と、パンツの両方に付いている。


「これなの?露出なの?プレイならミュレ受け入れるの。」

ミュレが、俺をじっと見て来る。

俺は、ため息を一つつくと、ミュレの頭をポンポンとする。

リュイが、ちょっと不機嫌な顔をしているのが見えるが、俺はミュレの顔を見ながら言葉を続ける。

「ミュレは、俺と契約してしまっただろ。奴隷契約の一つで、奴隷は、そんなビキニみたいな服しか身に着けてはいけない事になってるんだよ。

寒けりゃ、主人にくっつけってことだな。で、町の中で違反が見つかると、奴隷商人に引き取られる可能性もある。そんな条件だから、町の中で余計なトラブルに巻き込まれるのは避けたいんだよ」

データベースで検索した情報をからめて、ミュレに説明する。


「だから、これなの?ミュレ納得したの」

その場で、今来ている服を脱ぎ始めるミュレ。

「おいおい。ここで着替えるのか?」

「ミュレは、シュン様の奴隷なの。シュン様の持ち物だから、裸を見せても平気なの」


などと、姫さまとは思えない発言を続けるミュレ。

リュイも、負けじと脱ごうとしているのを見て、二人を囲むように、すぐに簡易更衣室を土魔法で作る。

リュイの裸はいつも見てるが、彼女の体は綺麗だから、俺の気分が上がると困る。


そして、二人が着替えて出てくると、俺は、ミュレに外套をかけてやる。

「ふにゃ?」

ミュレが不思議な顔をすると。

「上着を着てはいけないという、条件はないからな。ジャイアントバッファローの毛皮から作った上着だから、少々の攻撃は防いでくれる」

俺は、少し不満そうな顔をしているミュレに少し笑ってしまう。

「ミュレの服も、そのボンボンにビットが仕込んである。ミュレの魔力と合うかは分からないが、とっさの盾にはなると思う」

そう言って、4つついているボンボンを指さす。

「これが、シュン様の欠片なの。いつもシュン様と一緒なの。ミュレ、うれしいの」

笑いながら、ボンボンを揺らすミュレ。

残念ながら、胸は無いから、揺れるはずの場所は揺れない。


リュイが、そんな彼女を見ていたのだが。

俺はそのリュイにも外套をかけてやる。

「これ、シュン様の臭いがするです」

リュイがそのローブを匂う。


それ、この前斬られてしまったローブを外套風に作り変えた物だからな。

その事を告げると、リュイはすごい可愛い笑顔を見せてくれたのだった。


ついでに、自分のローブはというと、前の戦いでビットが狩って来た、イヌ型の魔物の皮から作った物を使用している。

防御力は一気に落ちるけど、俺には絶対結界があるし、【希薄の】との闘いでは、素の防御力で勝負するしかない。

あいつの武器は、ワイバーンのローブすら切り裂くのだから。


EPを体力に振り、防御を上げる対策をしていくしかないのだ。

とても喜んでいる二人を見ながら、俺も笑顔になるのだった。



「村がみえたの!」

そんなこんなで歩いていると、ミュレが突然叫ぶ。

前に来た時は、馬車で、一週間か、そこらだった気がしたが、今回は歩きだった事もあり、半月以上歩いていた気がする。


村に入ると、あちこちに小麦の束を干しているのが見える。

昔は、あまり気にならなかったが、多くの村人がせわしなく刈り取った作物を干していた。


「冒険者の方でしょうか?」

町を見回しながら歩いていると、一人の村人が声をかけてくれる。

「ああ。ギルドの依頼で来たんだけど」

俺が返事をすると、村人は嬉しそうに顔を明るくする。

「お待ちしておりました。村長がお待ちです。どうぞこちらに」


そう言われ、村人について行くと、少し大きな家に着く。

「こんな所あったっけ?」

俺が呟くと。


「シュンさん!お久しぶりです!冒険者が来るとは聞いていましたが、まさか、シュンさんとは!」

突然奥から飛び出して来たのは、2人の冒険者だった。

「覚えていますか?助けていただいたガッシュですっ!」

「武器を作っていただいた、バウスです!」

二人とも、俺の手を取り、必死に振る。

少ししてから、そういえばここで、回復の奇跡をおこなった事を思い出した。

ついでに、いろいろと思い出したのだ。

カラさんの事も。


シュリフに切り殺された彼女を思い出し、少し泣きたくなる。

そんな時、俺のローブの裾をそっとミュレが掴む。

俺は、そのしぐさに笑顔になる。

「ああ。今思い出したよ。リバイブで助けた冒険者だったか」

二人の連携のダブルスラッシュは恰好良かった事も思い出す。


そんな笑顔の二人は、俺を見ながら、剣を取り出して来た。

「後で、兵士達が来て、これを持って行こうとされたんですが、絶対に死守しました。

これは、シュンさんとの絆と思ってます」

そう言いながら、見せてくれるのは、俺が昔に作ったヒートソードだった。


「ちょっと、雑かもです」

ぼそっとその剣を見て呟くリュイ。

ちょっと言わないで欲しかった。

自分でも一目見て、渡すべき武器じゃないくらい、下手な作りなのが分かったのに。


「あれから、ここで、結婚して冒険者を辞めたんです」

そう言って笑うガッシュ。

「今は、私が村長をして、相棒のバウスが、警備隊の隊長をしてます」

もう一人の冒険者だったバウスは、苦笑いをする。

「ここで、2人とも、女房に捕まってしまいました。けど、後悔はしてません。ただ、シュンさんの強さだけは今でも覚えてます。だから、追いつけるように、練習は欠かしてません」

そう言って笑う二人。


俺は、最近練習をさぼりがちになっている事を思い出し、少し後ろめたい気持ちになってしまう。


「それは、ともかく、ここには、兵士はいないのです?」

リュイが、いつまでも本題に入って来ない二人に、斬り込むように尋ねる。

すると、二人とも声を落とし、下を向いて黙ってしまった。


しばらく沈黙の後。

「王都で、大規模な軍事活動を行うから、絶対参加するように声がかかったんです。兵士はほとんどそっちに行ってしまって。残っていたのは、兵士に付いて来た冒険者だけだったんですが、ここは昔も今も依頼なんてない場所なので」

ガッシュ。いや、村長は、小さくため息をつく。

「残ってくれる、偏屈な冒険者なんて俺たちくらいなものなんです」

バウスも、笑うしかない。

つまりは、戦える兵士は誰も残っていないと言う事か。


「オークが出た時に、兵士も冒険者も大量に来たんだがなぁ、兵士がいるから、冒険者はいらないとかなりの数の冒険者を兵士達が追い返したんだよ」

「蒼碧騎士団と団長の【魔力球の】ロアは強かったんだがなぁ」


俺が考えていると、二人のその呟きが聞こえて来る。

俺は、頭が痛くなる。

ロア先輩。何してるんだよ。

自分が常に居れないのなら、兵士も冒険者も育てるべきだろ?

それなのに、兵士に追い返されたから、冒険者にとって、ここに良い印象が無くなったと言う事か。


「俺たち二人だけじゃぁなくて、村の男たちも練習させてるんだけどな」

「ほれ、あの約束があるじゃないか、兵士と、冒険者以外は魔物を倒してはいけないという奴」


ああ。そういえば、この国には、そんな法律があったな。

「あれのせいで、俺たちも戦いに出にくくなったんだよ」

「冒険者は登録解除してないんだろう?」

俺の問いかけに、二人は再び顔を合わせる。


「無理なんだよ。掛け持ちが大丈夫なのか、知りたくても、村から離れられないからなぁ」

「俺は、一応まだ冒険者だから、大丈夫だが、ガッシュがな」

なるほど。


防衛隊の隊長であるバウスはまだ冒険者として活動しているから、魔物の討伐も大丈夫。

しかし、ガッシュは、村長になったため、冒険者としての資格が微妙な所となっていると言う事か。

「なんなら、お兄様に直に聞いて見るといいの」

ミュレが、素直に俺を見つめる。

その言葉に、一瞬固まってしまったが、良く考えたら、勝手に王族の一員にさせられてしまったのだ。

アムに、反撃するのもありかも知れないと思ってしまうのだった。

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