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返品不可の慰謝料

「シュン様っ」

今目の前でリュイが楽しそうに王都を回っていた。

いつもリュイは楽しそうに町を見て回るのだが、今回は冒険者学校の近くや、出店、食堂にも寄っていた。

「はぁ。これ、綺麗です」

そういって、じっと髪飾りを見ているリュイに、その髪飾りを買ってあげると、すぐに頭につけ可愛く笑う。

値段は、金貨一枚(10万円)だったが、あまり値段感覚の無いリュイには強く言えなかった。


城から出る時に、「王の謝罪の品とは別に、国からの慰謝料となります」

そう言って、白金貨(一千万)を渡されたりもしてしまい、懐は暖かいのだが。

だから、あまり気にしても仕方がなかった。


「ちょっといいかな」

リュイが、楽しそうに笑っている中、俺は、リュイに話しかける。

「はい?なんですか?」

笑っているリュイに俺は一つの建物を指さす。

「ちょっと、ギルドに寄りたいんだ」

そう言うと、リュイはさらに顔を輝かす。

「冒険者が一杯いるところですか?ギルドなんて初めてです!」

そんなテンションが爆上がりのリュイに笑いながら俺は、ギルドの中に入る。

俺が入った瞬間。

ギルドの中の空気が変わったのが分かった。


ざわざわと、声がする。

「本物か?」

などと話をしている人たちもいた。


「を?見ない顔だな。新入りか?」

ジョッキを片手に、からんでくる一人の冒険者。

「シュン様?この人も冒険者ですか?」

リュイが、首をかしげている。

「はぁ?お子様連れかよ。お前は、幼女趣味(ロリコンマスター)かよっ」

そんな事を言って来たその冒険者は、隣にいた別の冒険者にいきなり引っ張られる。

しばらく騒いでいたのだが、奥で何かを聞いたのか、しばらくして青い顔をしてこちらを見ていた。



「なんか、楽しそうな所なのです」

リュイがそう言った時。

いきなり、後ろから来た人物に肩を抱かれる。

酒臭い息を感じながら、横に来た人物を見る。

「よぉ。元気そうで良かったじゃねぇか。あれから、俺も大変だったんだぞ」

そう言って笑っていたのは、ダルワンだった。

「まぁ、いろいろあったけど、元気だよ。ダルワンも元気そうだな」

俺が返すと、少しびっくりした顔をしたダルワンは、俺の腰のあたりに顔がある少女を見て、納得したような顔をした後、笑う。

「そうか。よかったな。シュン。まぁ、つもる話もあるんだが、俺はこう見えて忙しいからな。また、会ったら酒でもおごってくれや」

それだけ言うと、ギルドを出て行こうとするダルワン。

「ダルワン!」

俺は叫ぶと、ダルワンに金貨を投げる。

それを空中で掴むと、ダルワンは目を細めて。

「ありがとよ。これでまだ生きれるわ」

そう言い残して今度こそギルドから出て行ったのだった。


「今のダルワンさんだよな。やっぱり本物だよ」

そんな声が聞こえて来た時。

「シュンリンデンバーグ様、ギルドマスターがお呼びです」

と、わざわざカウンターから出て来た受付の女の人に言われた。


ギルドにいる全員が、ざわめく。

「やっぱり、【暴緑】だ」

「やっぱり【幼女趣味(ロリコンマスター)なのか】」

「いや、知らないのか?今は、【緑竜】だぞ」


そんな声まで聞こえて来る。

新しい二つ名が増えている気がするんだけど。

そんな事を考えながら、2階へ上がって行く。


ギルドマスターの部屋に入ると、ギルドマスターは、扉の前で立って待っていた。

「シュン君。本当に無事でよかったよ。あの暴動以来、行方不明になっていて、気になっていたんだ」

そう言うと、ギルドマスターは、自分の席に座る。

「さて。ここに来てもらったのは、他でもないんだけど、もう報酬は受け取ってくれたのかな?」

ギルドマスターは、そう言って笑う。

「君への暴動の制圧報酬は、口止めもかねて大金貨7枚だよ」

その言葉を聞いて、俺は思わず笑ってしまった。

アムってやつは、なかなか喰えない奴じゃないか。

俺への慰謝料が一千万じゃなく、暴動の制圧報酬と合わせて1千万だった事に気が付いてしまったからだった。

「その顔は、受け取ってもらったと思っていいんだな。それと、別でお願いもある。依頼だ」


ギルドマスターは、笑顔をやめ真剣な顔になる。

「これは、指名依頼になる。南に、オークがいるのは知っているだろう?」

俺は、うなずきにて返事をする。

「再び、活性化してきたらしい。すくなくとも、小規模とは言えない集落が出来ている。このままだと、南の農耕地帯が被害に会う可能性が高い」

ギルドマスターは、自分の机を叩く。

「壊滅、もしくは、集落の解体をお願いしたい。報酬は、大金貨5枚」


500万の仕事なんて、聞いた事もない。

俺が驚いた顔をしていると、マスターは、真剣な顔のまま、続ける。

「騎士団の一部が壊滅したためか、守りにいける騎士団がいないんだ。その上で、冒険者に援護要請が入ってきたが」

一区切りつけると、大きくため息を吐く。

「Bランクの冒険者すら不足している今の現状で、オークの集落に、突撃できる人数を集める事は絶対に不可能だ」

だからこそか。

「君に頼みたい。お願いできるかな」

ギルドマスターのお願いに、俺は依頼了承の返事をするのだった。



「すごいです!シュン様はやっぱりすごいです!」

リュイはギルドから出た後も、それしか言って無かった。

少し、宿の足しに出来ればと思って、いくつかの魔物も売りさばいて出てきたのだが、それだけで金貨3枚(30万)になってしまった。


まぁ。買取をしてくれた受付のお姉さんが目を回していたのは明らかだったけど。

ついでに、「次からは、もう少し小出しでお願いしますねっ!」

とまで言われてしまったのだが。


その足で、俺たちは宿屋に入る。

部屋の中に入ると、困った顔をしているバルクルスと、知らない男。

そして、ローブに身を包んだ、小さい子供がいた。


「ああ。シュン君。リュイさん、お帰り」

バルクルスが、俺を見て声をかけてくれるのだが、どうも声が低いというか、動揺しているのが分かる。

「シュン様。今回、国王からのお願いにて、こちらに来させていただきました。お手を拝借してもよろしいでしょうか?」

突然、知らない男に言われ、思わず手を出す俺。

すると、手首にグリッと何かを押し付けられた。

魔力が一気に吸い出されるのが分かる。

「なっ」

俺が、びっくりしている間に、俺の心臓にも手を当てるその男。

さらに、魔力というか体力のようなものが少し抜かれる。


そして、男は、その手をローブの少女の口に当てる。

この儀式を俺は知っている。

この流れを俺は知っている。

これは。

青い髪と、緑の瞳の少女を思い出す。

目の前で、少女が、暴れ出す。

ローブがすべり落ち、ほとんど体を隠していない当て布のような服が見える。

全身に、七色に光る文様が浮かび上がる。

両手は縛られているのか、体をくねらせながら、少女は叫ぶ。叫ぶ。

バルクルスは、本当に困った顔をしたままその光景を見ている。

俺も茫然と見ているしかなかった。


光が収まった時。

少女は、その場に座り込む。

「これで、特殊奴隷紋の儀式は完了しました。国王様からの、贈り物です。返品は不可ですので、よろしくお願いします」


男は、それだけ言うとさっさと部屋から出て行ってしまう。

バルクルスは、深くため息をつく。

「シュン君。国王の末娘だけどね、国王が、気ままに手を出した獣人との子供だったって噂があったんだよ」

床にへたりこんで、荒く息をしている少女をみながら、俺は頭をかかえるしかなかった。

それが本当なら、アムもか。

その子には、青い猫耳と、青いしっぽがついていたのだった。

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