表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/312

入学試験

泣きなくなるあだ名を付けられながら。とりあえず一日一日が過ぎて行き。

やっと来た。入学試験の日。


午前中は、筆記試験だったのだが。

これは、大っぴらのカンニングで難なくクリアできた。

データベースという、スマホを持って入れるテストほど、楽な物はない。

しかも、検索スピードは、現代のWi-Fiをはるかに超えるスピードだし。


文字が書けない人は、面接試験らしい。


ただね。その筆記試験がね。今の国王の名前とかはまだ、問題としてわかる。

 安宿でもある、火喰い鳥。一泊が安いから、俺も宿をとってるけど、そこのオーナーの名前とか、試験に出るとは思わなかった。

なんだこれ?! 状態の問題が一杯ありすぎて、逆に頭を抱えるはめになってしまった。


一番笑ったのは、ゴブリンは、何オークか?と言った問題かもしれない。

種族が違うので、何オークにはなれません。


突っ込むつもりで、そんな回答を書いてやったのだが。


で、午後からの実技試験。


「ライナですっ!よろしくお願いしますっ!」

金髪の可愛い子がちょっこっと頭を下げて、自己紹介をしていた。 


俺が入学を希望したのは、魔法学科だった。

とにかく、銃を始めとする、大量殺戮兵器は素材不足で、作れない。

大規模殲滅魔法もない事がデータベースを調べていて、絶望的な気分になるくらい理解した。

そんな詰んだ状況でも、なにか、魔法で大量に敵を殲滅する方法がないのか。

その手掛かりの一つでも見つけられたらいいなと思ったからだ。


剣をどんなに振り続けたって、1万匹だって倒せる気はまったくしなかった。


俺は他の受験生が魔法を使う様子を見ている。

今、ライナと言った可愛い子は、俺たちの目の前で必死に集中し、頭くらいの大きさの水の玉を出し、的にぶつけていた。


へぇ。無詠唱か。珍しい。

ただ、的には傷一つ入ってない。


まあ、13歳だし、実戦も経験ないだろうし。

俺は、皆はびっくりしている。

試験監督の先生も、拍手していた。



「ちょっと、あんたっ!」

何も反応も示さない俺に、突然声をかけてきた、女の子がいた。


「あんたよっ!あんたっ!何、ライナがスッゴい魔法を披露してあげたのに、すました顔して立ってるのよっ!ライナは天才なんだからねっ!」


振り向くと、赤い髪のいかにも気の強そうな女の子がこっちをにらんでいた。


あ~ ライナって言った子の前に、炎の矢を使って的に当てていた子だ。


なかなかの威力で、この子の魔法で、的が少し焦げてたな。

この子も十分天才だと思う。


「あんたね!声をかけてるんだから、返事くらいしなさいよっ!」

女の子が、赤い髪を逆立てるかのように、ぷりぷりと怒っている。


「次、シュンリンデンバーグ」

あ、呼ばれた。


 まわりから、クスクスと笑い声が聞こえる。

まあなぁ。俺の名前は日本いた頃でいうなら、[佐藤左枝座江門]みたいな古臭く、ありそうで無い名前だからなぁ。


「ぷっ。あなた、変わった名前ね。ライナの魔法を見て驚かないんだから、どんな魔法を見せてくれるのかしら?」

笑いながら、煽ってくる。


はあ。面倒だけど、ちょっと本気を出してみようか。

定位置に立ち、的を見る。

的をイノシシに見立てる。


レイアさんの言葉を思い出す。

「足止めの意味を込めて、敵の足回りを先に崩すと楽よ」


うん。分かってる。

風魔法を使う。 もちろん無詠唱。

足の筋を切り取る最初の一撃。


あれ?柔らかすぎる。こんなもの?

戸惑いながら、一瞬で次の魔法の発動も終わる。



「早くしろっ」

試験官の先生が少し苛立った声を出す。

「終わりましたよ」

審査官の言葉にそう返し。的に向かって走れる態勢になっていた体を戻して、元の位置に戻る。

的は、一瞬で空中に吹き飛び、バラバラになっていた。


カイル達と戦ってた時によく使ってた魔法。

大体、うさぎとか、鳥とか、動きが速いやつばっかり相手にしてたから、手をつき出す動作すら、省かないと当てれない。


さらには、動きながらこの魔法の発動をするように言われてたし。

本当に、子供イジメだったと思う。


ただ、ありがたいとも思う。イノシシとかで、ちょっとでもぼーっとしていたら轢き殺されるような、とんでもない魔物ばっかり相手をしていたから。

今では、こんな感じで、連続魔法を打てるようになっていた。


イノシシに見立てて、足回りを一気に切り崩し。相手の態勢が崩れた所でするどい追撃。

頭部や、目を切り裂き相手の視界を奪う。

本当なら、ここから、カインさんの剣や、俺の槍が入る所なんだが。

的が柔らかすぎて、バラバラになってしまった。


僕は、何事もなく自分の列に戻る。

他の受験生が声もあげれず、しんとしてる中。


「あー、まとぉ~!」

と試験官の思い出したような叫びが試験会場に響いた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「はぁ」

俺は、試験結果を待ちながら、学校の中庭でため息をついていた。


年甲斐もなく、張り切ってしまった自覚はあった。

同年代というか、若い子にいいところを見せたくなった。


「80年近く生きてるのになぁ」

体は、13歳だし、心も13歳だけど。

自分の子供っぽさにうんざりする。


「シュンリンデンバーグさん」

そんな感じで、一人で落ち込んでいたら、誰かが顔を覗き込んでくる。

赤毛の子とライナと言っていた子だ。可愛い、金髪の髪がふわっと揺れるのが見える。


「何してるのよ」

赤毛の子が、怒ったような顔でこちらを見ている。

「いや、何もしてない。ただ、張り切り過ぎたな~と反省中」

俺が返事をすると、ぷっと吹き出す赤毛の子。


「それ、自分で言う?あなた、面白い人ね。私の名前は、レイアって言うの。こっちは、ライナ。よろしくね」

「まだ、受かったかどうか、分からないけどな。受かってたらよろしく」


その名前に。赤毛の少女に。一瞬、やさしい魔法使いを思い出してしまって、ドキッとしてしまう。自分でも分からないが、なぜか、ぶっきらぼうに返事を返していた。


「あら、あなたが落ちたら、今回誰も合格者はいないんじゃない?」

いたずらっぽい顔で、こっちを覗き混むレイア。


うん。胸はまだ、発育期だ。


「あなた、今、私の胸見たでしょ?見たよね!罰として、何か手伝ってよねっ」


思い切りレイアと言った、赤毛の少女に押されながら、俺はうなずくしかなかった。

女の子は、強いなぁと年寄りみたいな考えをしながら。


――――――――――――――――――


試験終了後、合格審査の中、二人の中年が話しをしていた。

「シュンリンデンバーグですか?」

「はい。冒険者ギルドに登録がありました。冒険者付き添い として」


「ほう。冒険者付き添いは珍しくないですか?あの年で。あの魔法の威力と正確さは、異常です。どこのパーティーにいたのですか?」


「《炎の楔》だそうです」

「なるほど。《火炎の魔女》の申し子ですか」

頭を抱える、スキンヘッドの男性。


「どうやら、3人とかなりの時間、一緒にいたようでして、すでに、Dランクの魔物くらいなら、倒せる可能性があります。あの子がいる時に、ゴブリンアサシンもパーティー討伐しています。さすがは、元Bランクのトップパーティーと言ったところですか」


「Aランクの魔物の討伐実績ですか。しかし、そうなると、本当に扱いに困る子ですね。すでに、ここで学ぶ事以上を知っている可能性が高い。だからといって、国の規則で、冒険者ライセンスは卒業後の17歳にならないと上げれない」


大きなため息が出る。


「とりあえず、超特待生としての入学を認めましょう。あのロア君と言い、とんでもない子が来ますねぇ」


「あと、彼が無茶苦茶しないように、対策も考える必要がありますか」


「はい。何か考えないといけないでしょう。冒険者が生き残って、有名になれるのは、地を這う以下の確率ですからね。あの、ところで相談なのですが、胃薬は、経費で落ちますか?」


「そこは、諦めてください」


あっさり切り捨てられた返事にうなだれる、担任予定の教師であった。


――――――――――――――――――――――――――――

「合格おめでとう~!」


日も完全に落ちきった中、安宿、火喰い鳥の食堂で、レイアとライナにおごる羽目になってしまった。


まあ、レイアの胸を見たお詫びと、ライナの笑顔に負けてしまったせいなのだが。


「シュンリンデンバーグさんは、本当にすごいです!あんな魔法、お父様も見せてくれませんでした!」

興奮気味に話すライナ。


ライナは、魔法騎士の父親を持つ家の5女らしい。

長男、次男も魔法騎士見習いとして騎士団にいるらしく、まさに、魔法一家であった。

妹、弟もいるため、ライナは家を出るしか道がなかったらしい。


レイアは、冒険者の親を持ちながら、親が死んでしまい、ライナの家に引き取られたとの事だった。


この世界は基本子沢山で、大体、7、8人は兄弟がいる家庭が多い。

まあ、死んでしまう人数も凄まじいのだが。

多婚も認められていて、数名奥さんを持つ男は、格好いいと言われる。女性同士のトラブルを回避しながら、数多くの家族を養えると見られるのだ。


「しかし、超特待生て、なんなのよ。ロア先輩以外、2人目だって聞いたわよ」

「そうです!それもすごいです!こんなすごい人とお知り合いになれて、本当に嬉しいです!」


ひたすら、褒めちぎるライナと、ちょっと羨ましそうに見て来るレイア。


まさかの超特待生。

授業料免除と、授業への参加は自由、調べ物や移動に制限なし。

入学したら、寮生活なのだがそれも自由にしていい。と言われた。

だが、俺は授業料はきちんと払うし、授業も出るがただひとつ、お願いしたい事があると、頭をさげた。

比較的安全地域での、魔物討伐の許可。


これだけは譲れなかった。

ステータスアップは必須だし、武器作成スキルはすぐにでも欲しい。


EPは稼ぎまくらないと全く足りない。


そして、本当に、本当に粘り強い交渉で、冒険者疑似カードをもらったのだった。

 本当なら、最高学年にしか配られないカードで、冒険者Fランクとして、狩りをする事が許される証明書だ。

本当に冒険者として、魔物と戦えるか。それを確認するための実習を行う時に初めて発行されるカード。


それを超超、特例処置でもらえる事になったのだ。

もちろん、素材の買い取りもギルドで、相場でやってもらえる。


ただ。誰か必ず連絡役を付き添わせる事。と条件をつけられた。


にやけた顔で、先生から

「試験結果トップクラスの二人と仲良くなってるみたいだし、ちょうどいいんじゃないかな?」


と言われた時にちょっと殺意が浮かんだ。

こいつ、〈2人を囲いたかったら、囲ってもいいんだよ?見逃すよ?あと、君がむちゃくちゃしないための首輪がわりにもなるしね〉

と、隠す様子もなく、態度で伝えて来やがった。


明らかに、子供扱いではなく、冒険者。というか、危険人物としての扱い。


上機嫌で、美味しいご飯にかぶりつく二人を見ながら、俺はこっそりため息を吐くのだった。




名前の一部を変更しました。7/21

10 24 少し書き換えました。

2023 2 加筆修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ