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優しくない世界に転生した。精一杯生きてやる。~創世記の英雄は転生者~  作者: こげら
第2章 フェーロン共和国編 あらたな冒険
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死霊都市

「これは、確かに。どうにもならない状況だな」

俺は、ファイの後ろに乗り、上空からドウタツの町をを見ていたのだが。

町の中にいたのは、無数のアンデット達であった。

「なんでこんな事になったんだ?」

「とりあえず、クソ親父がこの状況になった理由を知っているはずだから聞いてみたらどうだ?」

小さく呟く俺に、ファイが心底嫌そうに返事をする。

そのまま、ファイは近くにあるキンカの兵士達がいる宿舎に鳥オオカミで飛んでいく。

宿舎に入ると。

「やぁ、連れて来てくれてうれしいよ。ファイ。本当に助かった」

透明なグラスに入った飲み物を飲んでいる所であったドンキが宿舎のテントでこちらを見て笑う。

「ここまで、一気にこれたんなら俺がわざわざ武器を作ってもらうように頼む必要は無かったんじゃないのか?」

俺がドンキに問うと、彼は笑う。

「まぁ、たまたま運が良かっただけだよ。けど、今回はそうも言ってられなくてね」

ドンキは、グラスを傾けると落とすに落とせなくなった目の前の都市国家を見つめる。

「まさか、この都市にあるとは思わなかったんだよ。最強の魔法というか、禁忌呪法の一つがね。ほんとうに僕が言うのもなんなんだけど。忌々しい」

ドンキの手の中のグラスが粉々に砕ける。

「何があったんだ?」

「たぶんね、転生者がいたんだよ。あの町に。狂った殺人者が。私のスキルも大概なんだけど、昔に一度戦争があった時にキンカで見た事があるんだ。私のスキルと似たくらい狂ったスキルを」

ドンキは、一呼吸置くと話を続ける。

「【屍霊作成】。自分を中心とした一定範囲の全てをアンデットに変えてしまう、アンデット生成スキル。あの時は、そんなに数が出来なかったし、なんとか倒せていたけどね。今度のは違う。ゾンビは倒すと、スケルトンになり、スケルトンを倒すとその骨が集まりスケルトンホープになってしまった。つまり、倒せば倒すほど強くなる。それが、都市国家の人数分だよ。まったく何も出来いんだよ」

「まて、都市国家の人数分て」

「そう。彼は、都市国家ドウタツの中にいた全ての人間を、アンデットに変えてしまった。本当にクソだよね。たぶん生きた人間は誰も残ってはいないね。しかも、あの都市に入るとしばらくしたらゾンビになってしまう事も判明している。常時、設置型のトラップのようにね」

俺は、その言葉に呆気にとられる。

ありえない。町一つの人間を全て、問答無用でアンデットに変える。つまり町の人間全てを殺した事になるのだ。

「今、この町を囲んでいるのは、アンデットがこの町から出ないためと、冒険者がこの町に入らないように注意喚起をするためなんだよ。この数。倒すのは無理だからね」

ため息を吐くドンキ。

「で、そんな絶望的なにらみ合いの真っ最中に、俺を強制的に連れて来た理由は?」

「いやね、ちゃちゃっと、爆撃でアンデットだけ燃やしてくれると助かるかな~と思ってね」

ドンキは、いとも簡単に言ってのける。

いや、確かに爆撃は出来るけど、町も燃やし尽くすぞ。

俺が、ドンキを見つめていると、ドンキはゆっくりと笑う。

「大丈夫。生きた人間が誰もいないのなら、町は一から作り直した方が早いのだよ。いっそ全てをまっさらにしてくれた方が楽でいい」

ドンキの話を聞きながら、俺は頭が痛くなる。

この男は、無茶苦茶をさらっと言って来る。アンデットとはいえ、100万匹じゃ効かない。

大体、都市の大きさが日本とは違うのだから。

キンキですら、端から端まで歩くのに数日かかるというのに、このドウタクはそれよりもさらに大きい都市だ。

俺は思わず頭を押さえる。

「無理は承知。やらなければ、この数のアンデットが野に放たれる。町の外に出て行くと、面倒な事になる。冒険者が都市の間を歩けなくなる可能性すらあるからね。とあるゲームみたいに日の光で燃えてくれれば本当にうれしいけど。この世界のアンデットは太陽の下を歩けるから厄介なんだよ」

今までの少し気取った顔から、真剣な顔になったドンキは、俺を見つめる。

その顔を見て、改めて今回の出来事の大事さに気がついたのだった。



俺は、転生者だ。

こっちでは、ダウスと名乗っている。本当の名前は違うけどな。

この世界は本当に楽しかった。

俺はゾンビをアンデットを作れる。

つまり死んだ兵士すら戦力に出来る上に、生きている敵の兵士すら自分の味方にする事が出来る。アンデットとしてだけどな。

このスキルを生まれて時から持っていた俺は、この都市で好きに生きる事が出来た。

俺一人が一部隊の活躍が出来るんだからな。

そりゃ、大事にされたよ。

女も、食べ物も困る事は無かった。

それなのに。

キンカを昔に襲った時、俺はまだ10代だったか。

自分の周りの死んだ兵士をアンデットにして戦争に参加したのに。

あの時だけでも、30人は作ったはずなのに。

攻めきれなかった事を、キンカを落としきれなかった事をこの都市のやつらは俺のせいにしやがった。

腹が立った俺は、この都市全体をアンデットにしてやれるように、魔法陣を作り続けてやった。

5年以上かけて、この巨大な都市の全てを飲み込める魔法陣を作った時、あいつらキンカの奴らが襲い掛かって来た。

ドウタツのやつらは、それで完全に尻込みしてしまった。

最後には、絶対勝てないから、全ての女を差し出して降参しようとか言いやがったし。

ふざけるな。最近、俺は可愛い嫁をあらたにもらったばかりだ。

前の嫁は、うるさいから骨にしてしまったからな。

だから、俺はキンカに勝てるように魔法を発動してやった。

大量の兵士しかいなくなったドウタツに恐れをなしたのか、キンカの兵士は一回もこの都市に入っては来ない。

ざまぁみろだ。

怖気づいて、降参しか考えなかったあの馬鹿どもにも見せてやりたいものだ。

俺は、ゆっくりと領主の館の領主の椅子に座りながら笑う。


このまま、死霊の王として生きるのも悪くは無い。

どうせこの世界には戦争と、屍しかないのだから。


俺は、町を囲んで動かないキンカの兵士達をあざ笑うようにアンデットが自由に動き回る姿を見て満足するのだった。

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