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優しくない世界に転生した。精一杯生きてやる。~創世記の英雄は転生者~  作者: こげら
第2章 フェーロン共和国編 あらたな冒険
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リュイ

ドワーフは、名前に女性が濁りをいれ、男性が濁りをなくしてます。

男性は濁りの無い鉱石を打ち続けれますようにという願いからです。

女性は、出産、育児で血を大量に流すため、鉱石に血が混じり、濁りながら強くなるという意味で名前に濁りが入ります。

ハーフはその枠にとらわれません。

なぜなら、ドワーフは、ゴブリンみたいな見た目から、ほとんど異種間結婚がありません。

なので、ハーフは全てにおいて超越した者として一目置かれる立場にあるからです。




「おはようございます。お義父さんのお酒を一気飲みするなんて、死にたいんですか?私でも無理なのに」

少女は、そう言いながら、水の入ったコップを置き、たらいを抱えて行く。


濡れた布が頭に置いてあった感覚はあるのだが。

俺はただ、体を起こしてその子をボーッと見ていた。

少女の身長は、140かそこまで行ってないくらいか。

ドワーフは低身長が多いから、気にはならないのだが、顔が。

ゴブリンを潰したような顔が特徴のドワーフ達なのだが、彼女は、エルフのように整った顔をしていた。

いや、耳も少し尖っているように思える。

歩くたびに、ふわふわ揺れるピンクの髪が、なんとも可愛らしい。


俺は、本当に大丈夫ですか?と彼女に覗き込まれ、慌てて返事をする。

筋肉で出来ていたダザとは違う、女性らしいやわらかい体つきにドキドキしながら。

「あの酒そんなにつよい酒だったのか?」


「工具職人の、キイさんすら倒れる代物ですよ。樽で飲むような人なのにです」

少女は、唐揚げのような物を出して来る。

「なんか、私を見てますけど、なにかついてます?私なにかおかしいですか?」

彼女は、不思議そうな顔をする。

そんな顔すら、可愛く見えてしまう。

緑色の目に、吸い込まれそうになる。

しばらく見ていると、少女は、ハッとした表情をして、しゃべりだす。

「もしかして、ドワーフみたいな顔じゃないから見ているんですかねっ!だったら怒りますっ!私この顔嫌いなんですからっ!よりによってエルフみたいな顔ですしっ!」

少女は、ぷりぷりと怒り出していた。

その姿すら可愛く感じる。

「いや、かわいいなぁと」

俺がつぶやくと。

彼女はいったん停止し。

顔を真っ赤にして、ガンと激しい音を立ててコップを置く。

「なんですかっ!初対面なのに求婚ですかっ!とりあえず、食べ物は置いておきますから、食べてくださいっ!」

彼女は、そう言うと。

「私は忙しいですからっ!」

と言い残して、部屋を出て行く。

表情が、豊かで楽しい子だなぁと出て行った扉を見ていると、カチャと扉が開き。

「私は、リュイと言いますっ。しっかり食べてくださいっ!」

次は勢いよく、バタンと扉が閉められる。

俺は、笑いながら唐揚げを食べる事にする。

リュイが持って来た唐揚げは、ものすごく美味しかった。


唐揚げを食べながら水を飲む。

コップに入っているのがお酒でない事にほっとしながら、料理を堪能していると、

再び扉が開いた。

「おう。旅の方。すまんのぉ。義娘にも、さんざん怒られたわ。儂特性の酒をふるまうとは何をしているのかとな。はっはっは。ただ、間違えただけじゃのにのぉ」

入り口で話をしていたドワーフが、笑う。

といっても、あまり誰がだれだかわからないのが実態ではあるのだが。

鎧や、雰囲気とでもいえばいいのか、そういった物で誰が、誰だか判断するしかなった。

「それと、義娘が赤い顔をしておったが、お前何か言ったのか?どうしようもないくらい不細工で、ひょろひょろじゃから、武器も打てんが、心は優しい子じゃ。仲良くしてやってくれよ」

ドワーフはそう言うと、どこから出したのか、ジョッキを差し出してくる。

その瞬間。

「お義父さんっ!倒れた人に、酒を渡さないで欲しいですって、いつも言ってるはずですっつ!」

その父親の頭に、タライが直撃していた。

「まったく。何が、【酔い覚ましには、向かい酒が一番】ですか。そのたびに倒れて、仕事が出来なくなった人にお詫びを言うのは私なんですからねっ!」

リュイが、扉の前に怒って立っていた。


「はは。すまんすまん。ついつい、いいやつそうじゃったからのぉ。お前の事も言おうかと思ってのぉ」

その言葉に、ぼっと、顔を赤くしたリュイは、布を父親に投げつけ、走り去っていってしまった。

「ははは。すまんな。あの子は、ちょっと特別での。おお。儂の事を言ってなかったのぉ。入り口近くで武器を打っとる、タチュというものじゃ」

タチュは、笑いながらジョッキの酒を飲む。

「あの子は特別での。ハールエルフは知っておるか?」

うなづく俺。

「では、ハーフドワーフは?」

その言葉に、俺は首を振る。

「じゃろうなぁ。ドワーフはどうやら他の種族から見たら少し独特みたいでな。結婚対象にはならんようなのじゃが。時々、人間と子を為すやつがいるのじゃよ」

ゆっくりと、リュイが走り去った扉を見る、タチュ。

「でな、あの子は、そんなハーフドワーフと、ハーフエルフの間の子でな」

その瞬間に、俺は納得してしまった。

ドワーフの他の人とは違う筋肉ダルマのような体つきではなく、女性らしい体つき。

ドワーフとは思えない顔立ち。


「そのせいでな。あの子は、ドワーフの中では神聖化されてしまっておる」

俺が首をかしげると、「ドワーフは、ハーフがほとんどいない種族でな。ハーフドワーフは常に一目おかれるのだが、あの子は、ハーフとハーフのハーフという事でな。神様みたいな扱いなのじゃよ」

聞いていても、何が何だか分からないが、要は、全ての種族の特徴を持つ、最高のドワーフとみられているとの事だった。

じっと、タチュは俺を見ると。

「おぬしは、冒険者じゃろう。すまぬが、お願いがあるのじゃ。報酬は、お前が言っていた剣を何千本でも打ってやろう」

突然、真剣な顔で俺を見続ける。

「数日後、ドワーフの祭りがある。その祭りで、リュイを娶ってくれんか?」

はい?

俺が混乱していると。

「祭りの最後で、リュイは神の子として、このドワーフの大穴の一番下へおろされる。そこで、神の子を神へ返す儀式があるのじゃ」

タチュは、俺を真剣に見る。

「本来であれば、このような儀式はやらん。ドワーフ、4000年の歴史でも、数回しか記録が無い事じゃ。しかし、神の子が生まれ、ドワーフの数えで20才まで生きれば必ず、やらねばならん掟なのじゃ」


「あの子が、結婚もせず死ぬのは不便じゃし、なにより」

タチュはじっと俺を見つめ続ける。

「別の神の子が欲するのであれば、神へ返す必要は無いとも、記録には、記載されておる。神の使いに勝てる者に、神の子を渡すべきとな。この時期に、この時におぬしが来た。これは、もしや神の意思かと思っておる。鍛冶と、土と、岩の神において。あの子を、おぬしに預けたい」

ええと。

俺は混乱しながらもなんとか口を開く。

「ええと、いいんですか?会ったばっかりの人ですよ?」

「はっはっはっ!これほど、まっすぐで、気持ちのあふれる武器を持って、何を言うか」

タチュが笑って持っていたのは、俺の槍。龍斧槍だった。

「真っすぐに。悲しみを切り裂かんとばかりに。荒々しく、繊細に。儂もなかなか目にかからん技物じゃよ。それに、お前は義娘に、【かわいい】と言ったそうじゃないか。義娘が、さっき泣いておったぞ。それはな、ドワーフにおいては、【全てにおいて、お前を守る】じゃ。まぁプロポーズの言葉だな」

俺は、その言葉を聞いて、崩れそうになった。

異文化か。異文化あるあるの言ってはいけないフレーズか。


肩を落としている俺に。タチュは肩に手をかけ。

「そんな話しは別にして、親として、本当にお願いしたいのじゃ。冒険者としてではなく、名も知らぬ、一人の男に。おぬしという、これだけの武器を作れる、まっすぐな心を持つお前に」

そう言われてしまえば、俺は笑うしかなかった。

「俺の名前は、シュンです。出来るかは分かりませんが、やってみましょう。ここで死ぬ気はありませんし」

俺は、ゆっくりとタチュから自分の武器を受け取る。

ふと、俺の槍が軽く、さらに強固になっている事に気が付く。

「流石じゃな。気づいたかの。ちょっと調整しておいた。真っすぐすぎて、面白くなかったからのぉ。魔物の骨だけで作った武器など、初めて見たが、なかなかじゃな。その作り方、教えて欲しくなったわ」

意地悪く笑う、ゴブリン顔に俺も苦笑いが出る。


目の前で、あの子が死ぬのを見るのは、嫌だしな。

あの子を助けたら、折りをみて、逃げるようにしたら大丈夫だろう。

一回は助けられても、ずっと助ける事は無理だ。

俺は、ミュアすら助けられなかったのだから。


そう思いながら、青の髪をした可愛い少女を思い出すのだった。


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