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幕間 ダルワン

【バースシュリフ】


俺は、ただ目の前でボロボロになったその名前を持つ親友を見る。

ただ、思うのは、なんでこうなった?

ただひたすらに考える。


バースとは幼なじみだった。

同じ村に生まれ、一緒に遊び、一緒に村を出た。

子供の頃、俺には、魔法の才能あると言われた。

しかし、大きくなってから分かった事は、俺の才能とは、魔法をただ効率よく使えるだけだった。なのに。

バースには本物の剣の才能があった。いや、本物の剣の天才だった。

バースの必殺技でもある、皇帝剣は、全てを切り裂く一撃であり、普通に振るう剣は、羽よりも軽く鋭かった。


ダルワンは子供ながら、大人でも倒してしまえる、その才能が、羨ましいと思った物だった。

二人で良く遊んでいた事もあり、仲が良かった俺たちは、二人で村を出て冒険者学校に通い、そこで、タヤという女性に出会った。


金髪のとにかく可愛い人だった。


俺は、一目惚れした。

必死にアプローチを行い、一緒にパーティを組んだ。


ヒーラーのタヤと、魔法使いの俺、剣士のバース。

さらに、ローグのネクロの4人でパーティが結成される事になった。


ネクロは、好青年だった。

タヤにアプローチをかけるために、本当にいろいろと手伝ってもらっていた、冒険者学校でできた友達、いや悪友だった。

あの頃は、好青年であったのに、なんで、あんな暗い性格になったのか。

まあ、パーティを解散してから、いろいろあったのだろうが。

とりあえず、俺たちは、難攻不落と言われた西の森を切り開き、入口を作る事に成功したり、南の農地を作るため、護衛などの地道な依頼をこなした。

危ない時もあったが、死ぬ事もなく俺たちは依頼を次々とこなす事が出来た。


また、依頼のミスも無かった事が幸いして、一気にランクも駆け上がり続け、いつの間にか、Aランクを獲得していた。


俺は、タヤにカッコいい所を見せたくて、ひたすら頑張った。新しい魔法も覚え、全ては順調で、何も怖いモノはなかった。


そのとき。


あの事件が起きた。

ワイバーン襲撃事件。


竜と言われているが、実際は、ワイバーン2体が、村を襲ったのだ。


直ぐに冒険者達に声がかかり、俺たちも討伐に出た。

もちろん、引退していた数人のBランク以上の冒険者にも声がかかり。

大人数での討伐となった。


そこで、俺は何も出来なかった。

有名な冒険者の夫婦が、噛み砕かれ捨てられる姿を見て、失禁してしまった。


ワイバーンには、火の魔法は全く効かなかった。

俺は何も出来ず。

兵士が、冒険者が噛み砕かれ、吹き飛ばされる姿を見ているしか無かった。


ブレスで、村は燃えて行く。

まさに地獄だった。


目の前で、地獄のような光景と、統制がとれなくなった混乱と騒動に紛れて他の柄の悪い冒険者がタヤに襲いかかって来た。

なのに俺は全く動けなかった。

ワイバーンが吹き飛ばした、大岩が飛んで来て、その冒険者達はたまたま潰された。俺も潰されるかと思ったが、走って来たバースに投げ飛ばされ、バースはその岩を一刀両断にしていた。

タヤは、そのままバースによって助けられていた。

ふと見ると、ワイバーンが遅れて来た、4Sの一人に切り刻まれている姿を見ながら、助かった安心から、俺はその場に座り込んだ。俺は、死に損ねた。


無事帰って来てから、俺は、パーティメンバーと一緒に歩かなくなった。

タヤを助けられなかった事が悔しく、タヤと顔を合わせられなかった。

さらに夜になれば、人が潰され、噛み砕かれる音が耳元からずっと聞こえ、俺は眠れなくなり、酒を浴びるほど飲むようになった。


タヤは心配してくれたが、その言葉は全て拒絶した。


酒場で飲むだけの俺のせいで、パーティは解散となり。

俺は捨てられた。


ただ、酒に溺れ、酒で全てを忘れようと、流そうとだらだらと過ごしていた。


何年の月日が経ったのか。日付を数える事すら忘れてしまった後で、バースと、タヤの二人が結婚した事を知った。

その時に、タヤが、貴族の娘であった事も知った。

バースは、自分の力と、タヤの実家の力を借りて、新しい家を立ち上げ、その剣技と人望で、一気に将軍まで上り詰めた。


その間も、ひたすらに俺は廃人のように酒に逃げていた。

全てを手に入れたバースと、全てを失った俺。


情けない生活をしていた時。

タヤが不意に酒場で飲んでいた、俺の前に来て、俺をひっぱたいた。


「いつまで、引きずる気ですかっ!後輩のために頑張ろうとか思わないのですかっ!」


泣きながら、言われたその一言で、俺は、自分の今までを振り返る事が出来た。

Aランク冒険者としての俺の名前は、まだ死んでいなかった。

酒代を稼ぐつもりで、簡単な依頼をこなし、何度か新人教育に付き合ったりしているうちに、俺は冒険者として、復帰する事が出来ていた。

おそらく、タヤがいろいろと話しをしてくれていたのだろうと思う。

いつか、タヤにはお礼をしたいと思っていたのだが。


「この、生真面目野郎が。国の事なんか、気にしすぎなんだよ。このくそバカ野郎、タヤを泣かせる気かよ」

俺は、憧れた親友の体に残りの酒をかける。


空になった酒袋を握りしめながら。

俺はただ流れる涙をそのままにボロボロに成り果てた、親友の前で動けなくなっていたのだった。



ダルワン好きなんです。

弱いおっさんなのに。

必死に生きてるようで。

 だから、ちょっとだけ、書いて見ました。

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