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2.御柱の婚姻.1

 東の海の向こうに、蓬莱の地がある。不老長寿の秘宝、風光明媚な景観。まさしく、伝説の桃源郷にふさわしい場所が広がっている、というのは、今現在我々が使っている紀元が始まる前から大陸で言い伝えられていたことであった。

 西洋でキリストが生誕する200年以上前。時の皇帝の部下、徐福と呼ばれる男がそれを求めて舟を出した。正史にはその徐福の行く末は語られることは無い。しかしながら、各地にその足跡を示すものが残り、そのそれぞれの土地が徐福の子孫を名乗っている。

 岐峰らが今降り立った土地、()丹羽(にわ)もそんな土地の一つであった。


一支国で兵を挙げてから、早くも2年の歳月が経とうとしていた。

「誰もが己を誇れる楽土を」、その想いで進む岐峰ら伊舎那の民は、制圧よりもまず対話を優先した。それでも、伊舎那の国土、国民は増加していった。中華思想の文化圏において、強きもの、大きなものに従うことは恥ではなかったからである。何よりも、大陸の帝国がさげずむ自分達を、対等の民族として迎え入れようという伊舎那は、その島国の民達にとっても大きな輝きを持って受け容れられた。

 むろん、徹底的に抗戦する民族もあった。そのものたちは岐峰らを大陸からの侵略者と捕らえ、大陸の騎馬民族暁の民が国土を侵略していると訴えた。

 受け容れるものは、この伊舎那の入植を“暁幸”と呼び、受け容れざるものはその侵攻を“暁寇”と呼んだ。

 今で言う日本海側の島々、及び今で言う所の瀬戸内海に浮かぶ島々は大勢が前者であり、筑紫の島、及び瀬戸内海沿岸部の土地は大勢が後者であった。

 更なる拡大のためには、内陸部の拠点が必要となる。沿岸部の土地は物資量も人員も多い。海上の拠点は防衛の面で圧倒的に不利なのである。内陸からの攻め手がほしい。伊舎那・遠両氏の渇望がそこにあった。

そこで、あがったのが徐福の子孫を名乗る一族、()()氏であった。北海側の要衝、田丹羽に勢力を持ち独自に大陸・半島と交易を行ってきた巴太氏はこの蓬莱において最も強い豪族のうちの一つといっても過言ではない。大陸とつながりが深いとはいえ、いまだ劉秀に対して中立を貫く彼らならば、こちら側に引き込める可能性がある。

 伊舎那の傘下に加えることは出来なくとも、同盟関係を結べれば。それが出来なくともせめて中立・不戦を約束できれば。現在抗戦を続ける安芸国以西の国々と対等以上の戦いができるだろう。目的は対話である。最小限にして効果的な人間のみが選ばれた。蓬莱を代表する豪族である巴太氏との面会に代理の使者で向かうことは出来ない。伊舎那の大王であり長である岐峰を正使に、副使として遠撥耶、提羅子、そして、遠美君が選ばれた。


 何故美君なのか、そして何故比士自身が出てこないのか。岐峰のその疑問は船中で撥耶が解いてくれた。

「自分の頭で考えろ、岐峰。兄上は天下に轟くお尋ね者だ。巴太は大陸とのつながりも深い。兄上自身と面会するわけには行かないだろう。」

この2年、供に戦った戦友である撥耶の言葉には遠慮がない。

「…それは、判った。しかし、美君殿を連れてきたのは何故だ。1ヶ月に及ぶ船旅だぞ、女人にそのような荒い旅を…」

「今まで私が一度でも辛い、と申しましたか?」

そばに居た美君がからかうように言う。そういわれてはさらに岐峰は出る言葉がなくなる。

「その、いろいろな問題がありましょう、男所帯の中に1ヶ月もあっては。」

「ほう、大王は美君になにやらいかがわしいことをするおつもりか?」

撥耶のからかい言葉に、思わず目をそらす。そらした先には美君の顔があり、さらに目のやり場を失ってしまう。

「俺とお前が美君を守る壁だ、岐峰。心しておけ。」

その様子を笑いながら撥耶が言う。その言葉に、岐峰はちくりと引っかかるものを感じた。

「お前が、壁なのか。撥耶。」

「その通りだ、岐峰。俺には遠の代表者となるための大切なものがかけている。だから美君が必要なのだ。」

美君は、撥耶の横顔を振り返り、見つめる。

「兄様。」

「美君。何を止める。俺は今から事実を述べるだけだ。それに今聞かずともいずれは知れよう。」

「…何がかけているというのだ。」

「皇帝の血だ。」

一瞬、言葉を失った。その岐峰に、撥耶は言葉を続ける。

「俺と兄上は母が違う。正当な皇帝の血筋を継ぐ兄上の母が死んだ後に遠戚から迎えた後添えが生んだのが俺だ。つまり、一族をして守るべき玉は兄、比士か、それともその血をじかに受け継ぐ美君かということになる。」

岐峰は、自分の至らなさを痛感した。その言葉を言わせてしまった自分の短慮に腹が立った。

「遠家の玉を持参せねば、誠意は見せられまい。だからこの場に美君が必要になるのだ。」

伊舎那と遠、両家の玉を揃えぬことには交渉にもならぬ。言下の意図が岐峰の胸をえぐった。

「もう一度言うぞ、岐峰。俺とお前が、美君を守る壁だ。伊舎那と遠が並び歩く限り、これは変えようがない。」

それは、遠家の兵と、遠家の威光を後ろ盾に進む岐峰への皮肉のようにも聞こえた。

美君は、口を引き結んだまま、もはや一言も発することがなかった。


 岐峰らは、田丹羽の東、半島を回った所で上陸した。(いね)と呼ばれるこの土地はかつて徐福が上陸した土地であるという。目的地である御屋(みや)の津は湾の最奥部にある。稲から陸路に切り替えるという遠回りをしたのにも理由があった。

 遠くにかすかに見える、海を割る海上の砂浜。特に稲の高台から眺めるそれは海上をたゆたう龍のようでもある。

 上陸地点を切り替えたのは、この砂防の存在を察知したからだった。

 まっすぐに御屋の津を目指していた船を止めたのは羅子だった。

「おそらく、この先に砂防があります。目的地まで大きく迂回せねばならぬやもしれません。」

「何故判る?」

不審に思った撥耶の質問に、羅子は海面から目線を動かさずに返す。

「波の返しが大きすぎるのです。眼に見える陸地に比べて。」

これは羅子の一族が生まれながらに持つ能力といっても良かった。天候、波、風向き、地震。それらの動きの先が読める感覚を提の人間は兼ね備えているのである。暗闇の中を一支国までたどり着けたことも、羅子の力に頼った所は少なくない。星から、波から、風から、空気の中に感じる湿気から、羅子は先の天候を読むことが出来る。

 意見を容れ上陸したものの、撥耶も実際に海上のものを読めると思っていなかったのであろう。実際に目にしたその砂防を見て感嘆の声を上げた。

「本当にあろうとはな。」

「嘘は申しません。」

不機嫌に言う羅子。2年戦いを供にしてきたのは羅子も同じなのだが、撥耶に対しても美君に対しても、羅子は打ち解けようとはしない。時として不信の意をあらわにすることもあった。

「気を悪くしたのなら、謝ろう。しかし…」

その態度にも慣れているのか、撥耶は再び砂防と水面に目をやった。砂防とその奥に見える都市集落。大陸の一都市と見まごうその姿はそれまでの島々で見た集落とはまったくの別物であった。巴太氏の都、御屋の津。撥耶も岐峰もその姿に立ちすくんだ。

「あの城壁と、天然の砂防が守る町か…。」

「戦いたくは、ないな。」

「全くだ。」

遠家の精強な兵を持ってしても、帥氏の水軍を持ってしても、あの都を落とすことは至難の業であろう。そう思わせる威容がその町にあった。

「でも、」

岐峰も撥耶も、その声に振り返った。

「美しい町でございますね。」

美君のその言葉に、岐峰は毛羽立った心が落ち着いていくのを感じた。撥耶とて、その苦笑の奥で同じことを思っているはずである。


歩いて3日。岐峰らはその城門にたどり着いた。撥耶や美君の顔が懐かしいものを見るかのように緩んだ。

「どうされました?」

「いえ、故郷の都市は皆こういった城壁と城門であったので。」

「おそらく、大陸の都市を模して作られているのであろう。まったく、そなたらが隣に居なければ大陸の故郷に帰ったのだと錯覚する所だった。」

美君も、撥耶も、その帰ることのない故郷を思いながら城門を眺めていた。

「この御屋の津に何の御用で参られた。」

門番のその言葉に、岐峰ははっとした。

「我らは、先に文を預けさせていただいた伊舎那国の者。巴太の長にお目通り願いたい。」

羅子が答え、門番は伊舎那と遠の印を受け取ると門内に入っていった。


 巴太の長、巴太廉劫(はたれんごう)は30半ばの文官然とした男だった。卓の間に通され、あわせたその顔は、穏やかなものであった。

「ご活躍は聞いている。内海の島々も北海の島々も今は伊舎那国を号しているのだから。漢水の遠氏が協力しているというのも事実であった模様。包み隠すことなく申してくれたことをありがたく思う。」

そう穏やかに言いながら、廉劫の目の奥にはこちらを探る意図が見えた。

「300年以上の長きに渡りこの地に居るとはいえ、元をたどれば我らも大陸より渡来した身。同じ天津の民として、貴殿らに対して今すぐ牙を剥こうとは思ってはおらぬ。」

ふと、岐峰は知らぬ言葉に引っかかりを覚えた。

天津(あまつ)の民とは?」

先に質問をしたのは美君だった。

「ほう。見るところ大王もご存じない模様。この蓬莱においては海の外より来た民をそう呼ぶのだ。逆にこの国に元来ある部族を国津の民と呼ぶ。」

海人(あま)の民、天津の民と、(くに)の民、国津の民ということらしい。

「して、貴殿らの要求を伺おう。」

廉劫のその目に負けぬように、岐峰は息を整えた。

「伊舎那の国づくりに、ご協力願いたいのです。」

廉劫は立ち上がり、窓まで歩く。格子のおくには、あの砂防が広がっている。

「…我らは300有余年、この地で国津の民と融和しながら生きてきた。故に、どちらの情報も耳に入るのだ。」

「どちらも、とは?」

「侵略と、融和だ。」

一同が、息を呑んだ。

「伊舎那と名前を変えようとも日氏は、韓国(からくに)弁韓の旗頭。遠氏は漢水の戦いにおいての“玉”だ。落ち延びて流れてきたそなたらを、侵略者としたものか、それとも、新たなる友としたものか、国津の民の迷いが我々には聞こえておるのだ。」

「侵略など、伊舎那は侵略を行っているわけではありません!」

立ち上がり、声を荒げたのは美君だった。

「伊舎那はまず対話を求め、理解を求めていっているのです。土地を奪おうとしているわけではありません!」

「その対話が遠家の武力を背景に臣従を強要するものではないと言い切れるか、遠の姫よ。」

「美君。」

さらに言い募ろうとした美君を撥耶が制した。

「撥耶兄様!岐峰殿の理想をかように言われて…!」

「まず座れ。礼を失する事が何よりの恥だ。」

それでも、座らぬ美君を岐峰はまぶしい思いで見た。美君がいったい何に腹を立ててくれたが判ったからだった。他でもない、遠家の核である美君が、自分の思いをわかってくれている。これ以上に心強いことはなかった。

「答えられよ、大王。伊舎那はこの土地に何を望む。」

「誰もが、己を誇ることが出来る楽土を。」

「遠家の為にか?」

「それがないといえば、嘘になります。遠家は同盟を組んだ半身ともいえる存在です。その彼らの未だ拾いきれぬ命を拾える国を作りたいと思ったのが最初でした。」

美君が、椅子に座したのが気配で感じられた。岐峰は、続けた。

「我らとて、漢の帝国の領にあっては東夷の蛮族と蔑まれてきました。誰もが、誰もを蔑むことのない国があれば、漢の民も、暁の民も、天津の民も国津の民も、どちらが上でどちらが下だといわずに済む国があれば。そう、今思っているに過ぎません。」

「真っ直ぐな目で、ようもそのような夢を語る。」

廉劫は振り返り言う。

「ならば、その夢に我らも乗らせてもらう。」

「廉劫殿。」

「同盟をご承諾いただけるのですね。」

美君のその言葉を、廉劫は手で制し、岐峰に額づいた。

「蓬莱は山城の巴太廉劫。及び一族郎党二千。これより伊舎那の大王に臣従しよう。」

誰もが、驚きで言葉を失った。

「…何故、」

「試すようなことを申し、申し訳のしようもありませぬ。韓国(からくに)の戦が始まった折から、軍勢に加わりたいと思う思いがありました。なれど、己の臆病ゆえに参じることもできず。」

廉劫は、語った。若き日に岐峰の父、岐稜に受けた大恩があったこと。そしてその器稜に心酔していた事。戦で岐稜が命を落としたことは、廉劫も聞き及んだ。

「岐峰様の挙国の噂は聞いておりました。貴方様の理想を実現するお手伝いを、この廉劫にさせてください。」

額づいた廉劫を立ち上がらせ、岐峰はその手を取った。

「よろしく頼みます。廉劫殿。」

力強く握り返す廉劫の手の暖かさが、岐峰には何より嬉しかった。


 巴太氏の参陣という大手柄を土産にすすむ帰途。船は闇夜を進んでいた。羅子の提言で、夜のうちに出来るだけ進んでおくことになったからである。

「この海域をおそらく時化が襲います。来る前に抜けきることは難しいでしょうが、せめて少しでも多く進んでおくべきです。」

羅子のその言葉に、誰も疑念は挟まなかった。

 夜、進む船の甲板の上に立って、岐峰は月を眺めていた。巴太の参陣は間違うことなく父の置き土産だった。父、器稜が背中を押してくれている。そんな思いが、岐峰を包んでいた。

「眠られませ、主。」

そう声をかけたのは羅子であった。

「羅子。眠れないんだ。気持ちが、昂ってしまって。」

本拠地に帰れば、ぜひ筑紫にも聞かせたい。いや、供に逃げ延びた日の民すべてに伝えたい思いであった。岐稜が、自分達を応援してくれている、と。

「お気持ちは、私も同じです。岐稜様が、まさかこのような形で助けてくださるとは思っても見ませんでした。」

羅子も、目を細めて言う。

「なれど、とかくお休みなさいませ。向こうへ戻ったらすぐに軍勢の建て直しです。休めるうちに休んで置かれませんと。」

「そうなんだが、」

「なんだ、眠れぬものが後二人も居たか。」

後ろからの声に振り返ると、撥耶と美君が立っていた。

「美君殿?撥耶も。」

美君は気まずそうに目をそらしている。撥耶はそれをおかしそうに眺めながら言う。

「俺は少しだけ夜風にあたろうと思っただけだ。そこに甲板に上がるはしごでもじもじしていたこいつが居たのでな。」

「も、もじもじなどしておりません!ただ、どうお声をお掛けしたものか迷っていただけです。」

美君はそういいながら腰を下ろす。

「美君殿。何か、主にお話が?」

「いえ、お話というほどでもないので、迷っていたのです。」

「ならば明日以降になさいませ。今は主も貴方様もお休みになることが大事でございましょう。」

羅子のその言葉に、言葉をつぐむ美君に、岐峰は何だか申し訳ない気持ちを感じてしまった。

「羅子。どうせすぐ眠れるものでもないだろう。夜風に当たりながら皆で雑談でもしよう。」

美君は、そんな岐峰を見て笑う。

「晴れやかなお顔。」

岐峰は、ふと自分の顔を触る。そのような顔をしているだろうか。

「巴太様のこと、嬉しゅうございましたね。本当に、うれしゅうございましたね。」

美君の言いたかったことは、これだったのである。それを分かち合いたいがために。岐峰は思う。この佳人のこの花の咲くような笑顔が、この2年どれだけ自分を支えてくれただろう。時に負け戦もあった。一度は傘下に入った国が裏切ることもあった。その度に、美君の慰めと励ましに助けられてきた。

 今回とてそうだ。美君があそこで立ち上がってくれたから、岐峰は迷いなく応えることができた。

「ええ、本当に。」

この思いを、美君と供に味わえる。今の岐峰にはそれだけがとても幸福なことのように思えた。

「ここからだ、岐峰。」

「…?何がだ?」

岐峰には撥耶のその言葉の意味が解釈できなかった。

「ここからがまつりごとの範疇だといっている。」

「どういうことだ?」

「帥王はあくまで協力国、他の島々の豪族もかように大きな存在ではない。故に、遠の兵は必要不可欠だった。しかし、巴太が加われば、伊舎那の最大兵力は彼らの軍勢だ。もはや遠の軍勢は必要ない。むしろ、大逆の汚名を着たままの遠は害にしかなるまい。」

美君は、思わず目を伏せた。目をそらしていたことでもあった。

「かようなお言葉が、他ならぬ遠撥耶様からお聞きできるとは思いもしませんでした。」

「お前も考えていたことだろう。」

口を挟んだ羅子に、撥耶は言葉だけで返し、岐峰から目を離さずに言う。

「おそらく、いずれ必ず決断に迫られよう。」

「遠大夫には、大恩がある。利己的な理由で供に行動しているわけではない。」

「お前の国だ。お前の好きなように決めればいい。ただ、あまり兄上を信用するな。」

その言葉には、岐峰だけでなく、美君も言葉を疑った。

「兄様、それはいったい…」

「さて、もう夜も遅い。本当に眠る間を逸するぞ。さっさと眠れ。」

撥耶は、そういうと、岐峰と美君を甲板下に追いやった。

羅子は動かない。撥耶から眼を離そうとしなかった。

「どうした?」

「他ならぬ遠比士の御身内からそのような言葉が聴けるとは思いもしませんでしたので。…いったい何をお企みです?」

「企みなど何も無い。やつが知るべき情報を知らしめているだけだ。」

撥耶は、羅子に振り返って言う。

「羅子よ、お前はこのたびの外遊をどう考える。兄上は何故美君をこの少人数の中に放り込んだ。美君のあのはしゃぎようを見れば判るだろう、美君は岐峰に惚れている。」

「…おそらく、主も美君様に惹かれていましょう。」

「兄上がそれを察知していないはずは無い。この旅の間に、二人に間違いが起これば、大手を振って婚姻の準備に移れる。そうすれば兄上は伊舎那の外父となる。」

「…。」

「お前が一番に恐れているのはそれだろう。」

「…撥耶様は、どうなされるおつもりです。」

「今言ったところまでで兄上の計算が止まっているようなら何も問題は無い。俺たちも大手を振って命が拾える。…むしろ問題はその先だ。」

撥耶は、そういったまま、闇をにらんだ。羅子はかける言葉をなくし、空を見上げた。空は来るべき時化に向けて、少しずつ暗雲に包まれていた。


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