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ヘイヴンズゲイト  作者: Hiwatari.M.
14/14

水の星へ

ここは惑星フォルゲナ。

表面の約8割が水で覆われた自然豊かな星である。

昔からなのか、変異でこうなったのか、水で満たされ見渡す限り水。

その公海のど真ん中、ぷかぷかと漂う場違いな宇宙艇があった。


今から数時間前の事。


命からがら賊の巣窟から抜け出してきたフィル御一行。

またデブリ帯を器用に抜け、惑星の周回軌道にいた。

ある程度調整でピーキーな特性を抑えつつ、リマは大気圏突入の準備をしていた。

「周回軌道上機に告ぐ。所属と船名、登録ナンバーを提示せよ」

合成音声による定型哨戒メッセージが流れる。

「こちら赤熊猫運輸所属輸送艇、ササカマカキフネ号、登録番号11305589647」

さも当たり前の如くスラスラとマリアがインカムで答える。

「ササカマ?なんだぁ?!」

フィルはシートに括られたまま素っ頓狂な声をあげる。

「偽装なんですからぁ、いいんですよぉ何でもぉ」

インカムを押さえながらヒソヒソとマリアが答える。

「機体称号、確認。降下後、牽引船に従え」

合成音声で返答がくる。どうやらまんまとすり抜けたらしい。

「牽引船不要。独自の経路での移動を申請」

間髪入れずマリアが合わせる。

「ねえねえ、なんで牽引船断っちゃうわけ?大変じゃね?」

またまたフィルがちょっかいを出す。

「格納庫にあんな物騒なもの積んどいて何言いますか」

またもやインカム押さえてヒソヒソ。

「あー、そうね、ははは」

当然正規の港に着けば船内のチェックが行われる。

試作品とはいえ戦車なんてものが積んであれば只事では済まされるはずもない。

その他にも武装といえるものがちらほら。正規で通るはずがない。

「さすがですねぇ……マリアさん……」

ぽつりと独り言のフィル。

「さっ!覚悟決めなよ!突入するよっ」

リマの怒号が轟く。

周回軌道から徐々に降下を始め、ガタガタと機体を揺らす。

大気圏降下時の摩擦を減らす機構はしっかり備わってはいるものの、振動は多少なりとも起きる。

AIが自動で計算した軌道を順調に進んでゆく機体。

機体表面は既に高温にさらされているが、トラブル無く定温を保っている。

「ってかさ、どこ行くかわかってんの?」

誰にとではないが、フィルはとぼけた質問を発した。

するとリマ、

「どこもクソもあるかい。捕まらない所だよっ」

「あー、そーねー、お尋ね者ばんざ〜いっと」

フィルは戯けて笑えない返しを披露。

そうこうする間にもグングン惑星に引っ張られて落ちてゆく。

周りは炎に包まれ火球のようだ。

リマは外装のチェックをこまめにしていたが、そこはドクの設計、異常は見られなかった。

暫くすると振動が減り、外装温度が下がり始める。

「お?抜けた?」

フィルが少し安堵の声を漏らす。

「ここまではAIが勝手にやってんだ。問題は着水の方なんだよ」

呆れた声でリマがため息混じりに言う。

「はぁ、さいですか……」

大気圏内に入ると雲を切り裂きながら進んでゆく。

AIの指令で滑空翼を展開させ機体のバランスを調整。

暫くすると閉じていたシャッターが格納され、水の惑星が姿を表す。

「ふぃ〜帰ってきたなーって感じ」

フィルが能天気なことを言う。

「無事に着水できたらな」

冷静かつ静かにツッコむドク。

更に引っ張られて落ちていく。

フロートを兼ねた滑走脚が機体下部に展開され着水の時を待つ。

「さぁ、いよいよだよ!イチかバチか、祈ってなっ」

操縦桿を握り直してリマが叫ぶ。

やや機首を上げ猛烈な逆噴射でスピードを削る。

「くそっ、図体デカくてスピードが落ちやしない」

「流石にこのスピードで突っ込んだら機体が持たんぞ。激突じゃな」

ドクが冷静な返答をする。

「そうなんないように今踏ん張ってんじゃないかっ」

逆噴射のスラスターを限界まで噴射しながら姿勢を維持する。

スラスターが悲鳴を上げ、パネルに警告の表示と警告音を鳴らす。

「あーっ、もうわかってるさ、うるさいね」

リマは苛立ちながら操縦桿を必死に微調整している。

緊急時用のパラシュートまで展開させて何とか少しでもスピードを殺しにかかる。

やがて水面が近づき2〜3回バウンドして機体を揺らす。

暴走寸前のスラスターに加えて滑走脚の過負荷を告げる警告音まで鳴り始めコンソールは大合唱である。

必死にシートに捕まるクルーをよそに超過スピードのまま水面へ滑り込む。

リマは慌てて船首を持ち上げ、水面に激突を避けた。

滑走脚に接した海水を蒸発させ、水蒸気の尾を引かせる。

水面を捉えた滑走部が悲鳴を上げミシミシと軋ませる。

コンソールは危険域の赤い警告で埋め尽くされている。

海水との摩擦で徐々に減速し、さらに機体をガタガタ振るわせた。

ようやく破壊寸前の機体が止まり、沈み込んで更に水蒸気を巻き上げた。


「……」


命からがらの帰還に安堵の沈黙がコックピットに広がる。

「はぁ、生きてるねぇ、なんとか」

しばしの沈黙を破ったのはフィルの呑気な一言だ。

我に帰ったドクは機体のチェックを始める。

極度の緊張状態だったリマはその場で突っ伏している。

見回すと、いつの間にかアストリアスとナイトマリアが見当たらない。

フィルは頑丈に固定されたシートベルトを解除にかかる。

「しっかし、暑いなぁ。たまんね」

フィルは上着を脱ぎ腰に巻きつけた。

「そりゃぁそうじゃろ。この星で1番暑いエリアじゃからの」

船体チェックをしながらドクが答え、空調システムを最大に切り替えた。

高負荷のかかった船体は思いの外ダメージが蓄積しており、復旧までに時間が掛かりそうだ。

フィルは船外に出て、出来る限りの応急処置を施しにかかった。


「うひゃぁ、こいつは骨が折れるねぇ」

かれこれ数時間をかけて修理作業をしている。汗で全身がびしょ濡れだ。

「タラタラやっていると夜になっちまうぞ」

指示を出していたドクがインカム越しにつぶやく。

「だってさぁ、めちゃくちゃ暑いのよ。体のどこか溶けてる気がするわ」

「このままだと、どのみちお陀仏じゃわい」

「へーへ、っと」

フィルは気の無い返事をして、再び作業に戻る。

見渡す限り海、海、海。

360°の水平線。

だがフィルは何げに違和感を覚え、咄嗟にドクに声を掛けた。

「なぁドク。何か変じゃね?」

「何がじゃ?」

「いや、何となくなんだけど。何だろ、この感覚。周りに何かいない?」

視覚的には周りに視認できる物はない。

ドクはコンソールを操作してセンサー類のチェックを始める。

フィルは嫌な予感して機体内に戻り設置されているスコープを使って辺りを観察する。

「しまった!こいつら海軍じゃ。既に囲まれておる!!」

ドクが叫ぶ。

「でも、どうして!何も見えなかったけど?」

「視覚を偽らせる光学迷彩じゃ。海軍お得意の装備じゃよ」

ため息混じりにドクが語る。

姿を消して遠巻きに移動し、じわじわと囲んできたに違いない。

そして、国際コードのメッセージが入る。

『貴艦を既に包囲している。速やかに武装解除の上、投降されたし。さもなくば撃沈する』

脅しではない軍の威嚇に、なす術もなかった。

ドクは手早くコンソールを弄りはじめた。

「ドク、どうすんの?」

「どうするって、投降せにゃならんじゃろ」

と言いつつ、まだ手を動かしている。

「時間稼ぎのため、色々ロックしておるんじゃよ。知らぬ存ぜぬを決め込むんじゃ」

「なるほどねぇ……」

投降サインを発して搭乗口ハッチを開き、囚われの身になるのであった。



「失態続きだな、ドミニオ君」

「はっ!申し訳ございません!!」

巨大モニターの前で直立不動のまま軍服姿の三白眼が脂汗をかいている。

「色々面倒なのは御免だよ?わかっているな」

「はっ!閣下に御迷惑はおかけ致しません」

巨大モニターの向こうでは勲章を並べてつけた髭の男がふんぞりかえる。

「次を期待する。頼むぞ」

軍服の男が恭しく礼をすると通信が切れた。

『くそぅ、この私がこんな屈辱を……連中め!』

ドミニオは苦虫を噛み潰した表情で歯軋りをした。


歯軋りをしながらドミニオは、冷たい代わり映えのない通路を進む。

無機質な通路を抜けると、そっけない部屋の中にひしめく機械類。

「まだ何とかならんのか。状況は?」

ドミニオの問いに白衣の研究者らしき人物が答える。

「はぁ、なんとも。代謝が戻りません」

「というと?」

「簡単に言うと、急激に老化しているということです」

研究員が見上げる縦長の水槽の中には、酸素マスクをつけた、長い銀髪の少女が浮いていた。

「くそぅ、こいつさえ使えていたら……」

恨めしそうに水槽を見上げるドミニオ

少女は液体の中で漂う。

ドミニオも気づかぬ刹那、少女はわずかに瞼の隙から、外界を見据えた。

「……」



海軍に囲まれて、もはや成す術もなくハンズアップのフィル一行。

だが、気が付いてみると何か足りない。

船上で降伏する面々にはナイトマリアはもとより、アストリアスの姿も消えたままだ。

「腕を頭の上に、手を後ろで組め!従わない者は即刻処刑するっ」

短い自動小銃を抱えた海軍の兵隊の怒号が飛ぶ。

フィル一行は成す術もなく従い棒立ちする。

兵隊は怒涛の如く船内に突入し、各ブロックを確認し始める。

「見当たる人員は以上ですっ!」

上官に報告が上がる。

「よぉ~し、連行しろっ!」

複数の隊員に囲まれ、フィル一行が宇宙艇から買う軍の船へと移送される。

海軍の船団は最寄りの海岸へ向け、フィル達の船を曳航しながら囲んでゆく。

とはいえ、ここは公海のど真ん中。しばらくは囚われのクルージングだ。

身動きのとれない宇宙艇など、地表ではなすがままだ。

延々と続く海上をただ揺られながら幾時間が過ぎていった。

海軍の戦艦内の取調室へ各々が呼び込まれ尋問されるも、会話には応じるものの、全員しらばっくれていた。

暫くして、飽きたのか独房へ放り込まれて日を越した。

次の日の朝、宇宙艇を曳航した船団は、連合軍領の端っこの辺鄙な街の港へ入港する。

「艦長!外部より入電」

通信役の船員が声を上げる。

「どうした」

「捕縛した宇宙艇ならびに乗組員を速やかに引き渡せとの事です」

「くっ、なんだと?どこからだ」

「連合陸軍からです」

艦長にあたる将校は苛立ちを隠さず見せる。

「管轄は我が陸軍が引き継ぐものなり。速やかに引き渡せ、です」

艦長は席のアームレストを軽く叩く。

「くそっ、狙っていたかの様にかっさらっていきやがる」

「どうされますか」

通信役が顔色を伺う。

「どうもこうもないだろ。各所に連絡!引き渡せ」

「はっ!」

海軍が寄港している小さな港に現れたのは、陸軍が保有する中で大型の部類の陸上戦艦だった。

荒野も難なく乗り越えられる大きなキャタピラを装備した、陸上を走る小型基地である。

「またけったいなもんが、このド田舎に現れたもんだ。何事だよ」

拘束者の引き渡しを準備していた兵士があきれ顔でつぶやいた。

甲板には余裕で宇宙艇くらい載せられるスペースがある。

備え付けの巨大クレーンで機体を吊り上げ甲板に収容する。

船体内にも格納スペースがあるらしく、戦車や装甲車などを搭載できるようだ。

船体後方のハッチが開き、そこから数人乗れる大きめの装甲車両がスロープを降りてくる。

拘束者をワイヤーでつなぎ止め待っていた兵士の前に滑り込んで停車する。

細身のアーミールックの男が装甲車から降りて、颯爽と海兵に敬礼をする。

「あっ!」

声を上げたのはフィルである。

「お疲れ様ですっ!」

会釈しているのは、姿を消したアストリアスであった。

「さっさと連れていけ」

海兵は吐き捨てるように告げ、拘束者がつながれているワイヤーの束を渡した

「諸君らを連行します。こちらです」

アストリアスはぎこしなく連行する演技をしているらしい。

『しーっ、大人しくしててくださいよぉ』

小声でフィル達にささやくアストリアス。

装甲車へ乗り込ませ、そそくさと陸上艦へ帰還する。

「さて、どういうことか説明はあるんだろうねぇ」

ジト目でアストリアスをにらむフィル。

「まぁ、待ってくださいよぉ。今拘束を外しますから」

フィルとリマ、ドクの拘束を外しにかかる。

「皆さんに黙って消えたのは謝りますけど、助かったでしょ?」

ニンマリのアストリアス。

「降下して、直後に本隊と連絡を取ってて、急いで手配したんですよ。早急に格納庫にあった緊急艇拝借しましたけど、連中に見つかる前で良かったですよ」

自慢げにピースサインを出すアストリアス。

「こちらは少将閣下に頼んで寄せてもらった砂上船です。宇宙艇も余裕で格納です!」

何か勝ち誇ったようなアストリアスの仕草にイラっとするフィル。

「へーへ、そりゃたいそうなことで」

ジト目は続く。

「え、なんすか、その反応!頑張ったのにぃ」

ダルダルな流れに業を煮やしたドクが口をはさむ。

「そんで?陸軍様の移動基地艦に乗艦したわけだが?これからどうなるんじゃ?」

「あー、失礼しました。これからある場所へ向けて船を進めます。それまではひとまずゆっくりしてください。捕縛の件も無しです。ただ、うろうろされると、流石に困るので自重お願いしますよ。部屋も用意してますが、まぁ、一応戦艦内なんで期待しないでください」

アストリアスは各々カードキーと部屋の案内図を手渡す。

大型の陸上戦艦はゆっくりとデカい図体を軋ませ、道なき道を進み始めた。

数年空いてしまいましたが、筆は折ってません!

といっても自己満足なので、あくまでマイペースに。

次はいつだろうねぇ(苦笑)

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