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怪盗0(ゼロ)  作者: 和栗
サラリア国篇
5/6

街の噂②


背後で突然声がした。

私はその場で飛び上がる。


「ごめんなさい…って、リヒト?」


そこにいたのは、幼なじみだった。

険しい顔で私を睨んだかと思うと、リヒトはひったくるようにその本を取り上げた。


「これは、禁書だ」

「え」


リヒトは表紙の内側を指差す。


「あ、赤い×印…」

「ここの店主、知らずに売っていたんだろう。良かった、他の者の手に渡らなくて」


リヒトはそう言って、自らの鞄にそれを入れた。


「行くぞ、マーシャ」


叩きつけるようにお代をカウンターに置き、リヒトは店を出ていった。慌てて、私も後に着いていく。



「リヒト、どうしてここに?」


大通りに出ると、ようやくリヒトの歩みは落ち着いた。

多少、息が切れている私を、彼なりに気遣ってくれたのだろう。私のペースに歩みを合わせてくれる。


「お前の父親に、この本を頼まれたんだ。古書街にあると、情報は掴んでいたらしい。そしたら偶然、お前がいた」


「お父様が?」


妙な違和感があった。

お父様の仕事を考えると、禁書を読むことは特段おかしなことではない。

ただ、今朝の神妙な顔付きが気になる。

禁書である『時空と針』

…何か関係があるのだろうか。


「ねえ、リヒト。今、王宮で何が起こっているか、あなた知ってる?」


リヒトは何も答えない。

だから私もそれ以上は聞けず、黙って後に着いていく。


(リヒトは、何か隠している)


直感がそう告げる。

でも、いったい何を隠しているというのだろう。

疑心を持ちながら、私は歩いていた。だからだろう。果物屋の前で話す、婦人がたの声に気が付いたのは。


「この街の宝物って、いったい何かしら」

「そんなのきっと、王宮にあるに違いないわよ。私らには関係無い話!」

「あらま。でもハンサムな人なんでしょ。会いたいわねえ。今だってこの辺を歩いてるかもしれないんだから。怪盗0様!」



「怪盗0?」


ぽつり呟いた私に気付いたのか、リヒトは突然、歩みを速めた。


「ちょっと待って、リヒト」


結局リヒトと家まで帰って来てしまった。

もちろん私は息も絶え絶えだ。


「マーシャ」

「何?」

「今日はここに、泊まっていく」


ぽかんとする私を差し置いて、リヒトはそのまま家の中に入って行った。

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