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怪盗0(ゼロ)  作者: 和栗
プロローグ
1/6

伝書鳩

ときめきを、貴女に。


その知らせを王家に運んできたのは、真っ白な一匹の伝書鳩だった。


たいていの情報の伝達に、このサラリア国では馬を使う。

鳩を、それも白い鳩を使うのは、よほど切迫した、いわゆる緊急時だけだ。大広間の窓ガラスから勢い良く一匹の白鳥が姿を現したその時、王は少し遅めの朝食を楽しんでいるところだった。


鳩の細い足に巻き付けられた、赤い紙を見て、家臣一同の顔つきが変わった。重役家臣の一人が、恐る恐る、手紙を開く。


「文を読め」


静かな、しかし緊迫感を含んだ面持ちで、王は年老いた家臣に命じる。


「はっ。文はサラリア国外れにある孤児院の院長からでございます」


「なに、孤児院からだと?」


不審そうに、王は目をすぼめる。


「恐れながら、送り主は確かにそのように。文にはこう書かれております。


『今朝、当孤児院の玄関先にて、包みがひとつ、ございました。中身を確認いたしましたところ、なんとエメナルドの大粒の石がはめ込まれた、高価な髪飾りが入っていたのです。これはおそらく、先日より話題になっている、二百四十年前のマチューダ国で盗まれた王妃の髪飾りに相違ございません。送り主の名も、包みにしたためられております。


その名を…怪盗0(ゼロ)と』」



皿が音を立てて、床に砕けた。

しんと静まったのは一瞬のこと。

次の瞬間、家臣らの間にどよめきが走った。


「怪盗0だって」

「噂には聞いていたが」

「次は何を盗む気だ」


どよめき沸き立つ大広間。

王は立ち上がった。


「静まれ!」


水を打ったようにしんとなる家臣逹。

王はしばらく黙りこみ、思慮にふけっていたが、やがて顔を上げ、重々しく口を開いた。


「我がサラリア国に、戒厳令を敷く。

怪盗0の襲来に備えよ!

そして今すぐここへ、歴史の門番を呼ぶのだ!」


こうして王宮内の静かな朝は、終わりを告げた。

だがそれが、マーシャという一人の少女の耳に入るのは、まだもう少し先のお話である。

お読みいただきまして、ありがとうございます。

今後も更新を続けて参りますので、宜しくお願いします。

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