君のいない世界を覗いた
目覚まし時計の音がうるさい。
止めても止めても何回もなって、腹たって電池を取り外す。
部屋に誰か入ってきた。
「ちょっとサク起きてー!あ!さ!朝だよ?学校遅れるの!!」
「はぁ…先行ってて」
「先行ったら絶対こないでしょ?」
「…」
「起きてってば!」
「うるさい」
「もー知らない!」
彼女は出て行った。静かになった俺の部屋は時計の針の音だけが鳴っている。
あのとき一緒に行ってればどんなによかったことか。
「はー!もう!サクってばねー!朝せっかく起こしに行ってあげたのに『うるさい』だよ?ひどいと思わない??」
「あはは、ユナは朝からよく人起こしにいけるねー」
もう…あんなに怒って言わなくたっていいのに…
…!
突然どこからかわからないがサイレンが鳴った。
「ちょっとユナ、なんの音??パトカーとかでもないよね?」
「大丈夫だよー、きっと誰かのいたずらだよー」
『警告する』『警告する』
『只今、日本全領土に生物兵器 麒麟が侵入。屋外にいる国民は直ちに屋内に避難せよ。繰り返す…』
「ユナ…ねぇ…ちょっと!前!前見てよ!」
「え…あ……」
「ユナ!!助け…」
この世の理不尽さを見た。警告など意味がない。角の生えた馬のような美しい生き物は電車を倒し、中の人を食い尽くす。怒りも悲しさもなく、ただその光景を見続けていた。きっとこの気持ちは『絶望』というのだろう。ユナの耳にはもう声は届かない。
友達はもう既に内蔵が飛び出て死んでいるだろう。
ーしにだいがー
「うん。死にたいよ。生きる意味ないもの。」
ーぞゔがー
私の体が太陽になった気がした。
焦げて焦げてふわーっとお風呂に入った気分。気持ちよくて、気持ちよくて。目を閉じてみました。
「ユナ…!ユナ!!」
警告など聞かず足が勝手に動く。
「頼む!頼むからユナは…!ユナだけは!」
ー自分勝手な人間がー
後ろから声がして振り返った。そこには口が裂けているピエロがフラフラと立っていた。
「ユナはどこだ。」
ー居場所なんか知らないねー
そうか。と俺は無視して歩き続ける。
ー僕を無視するか。怖くないのかいー
うるさい…もう結果はわかってるんだ。既に街はボロボロで人なんかいない。わかってる。けど…
ーユナは死んだよー
「うるさい!うるさい!」「なんなんだよお前は!!なんでこんなことするんだよ!!」
「やっと僕と話せたね。」
気づけば十字架に釘で手を刺され、捕まえられていた。痛みはない。
「ここは僕が作った仮想空間。そして僕は怒りの麒麟さ。君が心から怒りを見せてくれたおかげでこうやって話せてる。」
「……」
「麒麟には七種類の麒麟がいる。一つ目『ルシファー』 二つ目『レヴィアタン』 三つ目『サタン』 四つ目『ベルフェゴール』 五つ目『マンモン』 六つ目『ベルゼブブ』 最後に『アスモデウス』だ。そして、僕はサタンさ。」
「君はユナちゃんがとても大切なんだね?」
「お前がユナを語るな…」
「あはは、怖い怖い。ユナちゃんはレヴィアタンに殺されたよ。残念だ。」
「さて、そんなユナちゃんともう一度会いたいと思わないかい?」
「結局はなにが言いたい?」
「僕が力を貸そうと言っているんだ。わかるだろう?」
「日本にいる全ての麒麟を倒せばユナちゃんを蘇生してあげよう。」
「お前も殺すことになる。それでお前になんのメリットがあるんだ。」
「簡単さ。君が死んだら君の全魔力が欲しい。」
「死んだ後なんか興味はない。その話乗った。」
「わかってくれてありがたいよぉ。そんじゃっ、そのハンマーで僕を打ち殺せ。そうすりゃ力を手に入れれる。」
「拘束魔法を解いてくれ」
「とっくにその魔法は切れてるよ。」
さあ、殴って。とピエロはいい僕は全力で殴りつけた。
ー君はもう人じゃない。いいね?ー
現実世界に気づくと戻っていて、そして魔力が気持ちいいくらいみなぎっていた。力は確かに手に入れたようだ。
人じゃない。か。とっくに人なんかやめる覚悟はできてる。こんな世界で人である必要なんてないさ。
ユナのいない地球は回らない。
初めまして長吉です。読んでくれた皆さんに感謝です。
ダークファンタジー作品が前々から好きなのでちょっと挑戦してみました。うまくできてるかな?大分体力奪われますね、これ。割と自分はコメディー系を書くので大変でした…
次回もまた見てくれると嬉しいです。




