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ゲーム



転移した場所は謁見の間の様な部屋で、魔王は転移してすぐに部屋の奥にある玉座へと座った。



俺は風魔法を使い、話している内容が緋月さんに聞こえないようにする。

「私達をここに連れてきて何をするつもりだ」


「言っただろ、楽しむと。まあまだ特に何をやるかは決めていないが、もしかしたら助かるじゃないかなんて希望は抱くなよ」


そろそろ正体をばらすか。

「お前は今回の件、ゲームだと言っていたな。おそらくだが最初から王都に攻め込むつもりはなかったんだろ?もしあそこで戦争が起きていれば高確率で大戦が起こってしまうからな」


「くふふふ、よくわかったじゃないか。だが、それなら何故お前はこの選択肢を選んだ。俺が戦争を起こさないとわかっていたならば迷い無く戦う選択をすれば良かっただろ」


やはり最初から戦う意思はなかったのか。それなら…。


「なあ、お前はさっきある冒険者とのゲームに負けたと言っていたな。それは誰の事だ」


「なんだいきなり?」


「本当にわからないんだな。俺はガルマリア国王じゃない。お前がゲームに負けたと言っていた冒険者だよ」


「は!?何を言ってーーー」


「ギニィをぶつけて俺の足止めを図ったようだが、俺の強さを見誤ったな」


「ギニィだと……まさか、本当に」


「そう言っているだろ」


「だがギニィは俺と同じ魔王。貴様1人が勝てるわけない」


「今俺がここにいるのが証拠だ。それにお前は今回、いろいろと見誤っていただろ。今回お前は途中で作戦の内容を変えただろ。ルイーナにいる手下が裏切ったと知って」


「…ああ、そうだ。だからこそ再び手下を送りつけた。その2人を始末する為にな」


「そう、それを知った俺はその手下もこちら側へ引き入れた。そこから街に潜んでいたすべての魔族も手に入れ、そいつらに虚偽の報告をさせた。だからお前はルイーナの魔族を始末して作戦は変更なく進められると思ったんだろ」


相変わらずフードで顔はよく見えないが、唯一見える口元、先程まで笑っていたそれは今はもう笑っていない。


「そして俺が作戦決行日を知っている事を思い出し、作戦の日数を早めた。さらに俺に尾行をつけさせ行動を把握しギニィに足止めを任せ、俺の邪魔が入らないようにした。幹部達はその間に暴動が起きている街へ侵入し領主を抑える。だがここで計算違いが生じる。街にいた魔族は全員裏切っているのだから作戦通りいかず幹部連中は街には入れない。そこで初めてお前は俺に負けた事を自覚した」



「く、くふふふふ!これは傑作。最初からゲームにすらなっていなかったというのか」

その笑いはこの状況を楽しんでいるというものだと、なんとなく感じた。


「そうでもない、俺にも幾つか予想外の事があったんだ。例えばギニィの登場とか作戦が失敗したのにお前が姿を現した事とかな。俺はてっきりお前は来ないと思ってたんだぞ」


「今回の件は暇潰しだった。だが俺のゲームの賞品は国王だったんだよ。確かにお前には負けたが俺自身のゲームをクリアする為にあそこに行ったまでだ」


「あ、もう1つ誤算があったな。お前が姿を現さないと思っていた俺はこの一件が終わったら、お前を裏切った魔族達とここに乗り込むつもりだったんだよ。それなのにお前全員殺しただろ。せっかく復讐劇を演出するつもりだったのに」


「ああ、殺したとも。十分苦しみを与えてからな。もともと脅して手下にした奴らだ。裏切ったら殺そうと思っていた」


まあ、全員生き返らしたけども。すでに俺の部下になったもの達だ。そう簡単には殺させない。


「そうか。…それで魔王、ここからどうするだ?もう帰っていいのか?」


「まだ、帰すわけないだろ。ギニィに勝った実力、俺にも見せてみろ」


玉座に座っていた魔王が霞の様に消えた。


「アキハさん!!」


その声に後ろを振り向くと緋月さんに大鎌を振り下ろそうとする魔王がいた。


急いで魔王と緋月さんの間に入り振り下ろされた大鎌を受け止める。


ギギギィギィ


「くふふふふ、触ったな」


受け止めていた筈の大鎌が突然消え、魔王は再び玉座へと戻っていた。


「なんだ、もう終わりなのか?」

にしても触ったな?ってなんだ。


「ああ、もう勝負はついた。お前の負けだよ。あの大鎌は俺のアルティメットスキル【死之狩人タナトス】で生み出したもの、あれの刃に触れた者、皆平等に死が訪れる。もうすぐお前の身体は動かなくなる、最後は全てが灰となって消え失せるだろう」


その言葉通り段々と身体に力が入らなくなってきた。

「おお、確かに本当のようだな」


「アキハさん!!」


心配そうに見てくる緋月さん。


「心配はいらない」

意識が本体に戻ったらまたここに転移してくればいいしな。


「最後だ聞かせろ。お前がガルマリアに姿、気配を変えているのはアルティメットスキルか?」


魔王が聞いてきた。最後じゃないけどね。


「ああ、そうだ」


「そうか、アルティメットスキルを所持しているにしては戦闘はあまり面白くなかったな。ギニィに勝ったにしては手応えがなかった。まあゲームは楽しめたから良いが。…ゲーム相手にもう少し生かしても良かったかもな」


「はは、今更だな」


どうしようか…俺がここにすぐ戻ってこれるとしても緋月さんを残すのは少し危険か。


「緋月さん、王都に転移させるぞ。俺もすぐに戻るから。それと、国王はもう姿現していいから今回のこの一件を国民に上手く説明しといてくれってディル達に伝えてくれ。そうすれば国王にも伝わる。じゃあな」


「ちょっーーー」


緋月さんはいなくなったし、あとはこの魔王だけだな。


「魔王、お前はまだ王都に何か仕掛けるつもりがあるのか?」


「いや、ないな。ゲームも十分楽しんだ。クリア賞品だった国王も諦めるさ、今回は残念ながらゲームオーバーだったからな。…安心しろ今逃した勇者も追いはしない。彼等も今後の楽しみに残しておく」


「そうかーー」


バタンッ


意識がガルマリア国王の身体から離れていく…。



「…戻ったか」

眼を開けると宿の天井が見えた。


さて、魔王の所に戻るとするか。今回俺は魔王クオレマともギニィ同様協力関係を結ぶつもりなんだからーー



ーーーそして再び先程の部屋に転移してきたわけだが、魔王は変わらず玉座に座っていた。


「誰だ、お前は?俺は今面白い奴と会えて気分が良いんだ。見逃してやるからさっさと帰れ」


「その面白い奴がせっかく戻ってきてやったんだ。帰れはないだろう」


「何を言って……ん?お前まさかあの冒険者か?」


「そうだ。冒険者アキハだ。俺があんな簡単に死ぬわけがないだろ」


「くふふふ、なるほど。やはりお前は面白い。だが、何故ここに戻って来た?俺と戦いにきたのか?」


「お前と話があったからだ」


「話?」


「俺はお前と協力関係を結びたい」


「…く、くふふふふ。何を言い出すかと思えば、人間であるお前が私と協力したい?何を協力すると言うのだ」


「そうだな、それを話す前に必要な事を教えておく」


まず俺は、ギニィにやったように様々な種族になれることを見せ、どこの種族の味方でもない事を話した


「なるほど。確かに嘘はついていないようだ」


「能力か?」


「ああ。…それで、それが本当だとして俺と協力関係を結びたいと思うのは何故だ?」


「俺の行動方針は面白ければいいというものだ。それはお前が暇潰しと言って自らが仕組んだゲームを楽しんでいるのと似ている」


「確かにそうだな、俺もゲームには基本的に楽しさを求めている。ゲームをやるならば基本的に勝ちたいが負けたとしても楽しいと満足できるならば大して気にはならないな」


「そこで提案だ。…俺はこの世界、ユルグリッドのーーーーーーーーと思っている。どうだこのゲーム、かなり面白そうだろ。これを実行するんだったら参加者は多くいた方がいい。だからこそ、お前と協力関係を結びたい」


俺の話に笑みを浮かべる魔王。

「確かに、それが実現するならば楽しいのは間違いない。未知のゲームだな…いいだろう。その協力関係とやら結んでやる」


「はは、そうか、まあ楽しみにしてろ」


「それで、実際の所協力関係を結んだはいいが俺は何をする?」


「そのゲームに辿り着くまでの協力とゲームの協力だな」


「そうか…。お前もしかしてギニィにもこの関係を?」


「ああ、もちろんだ」


「あの戦闘狂なら喜んでと言ったところか。それにこんな提案をされては退屈している身としては是非と言ったところだしな」


「暫くかかるかもしれないが、このゲームの参加者を連れてまた会いに来る。できればそれまではあまり目立たないでくれよ」


「わかっている。くふふふふ、やはり貴様は面白いぞ。こんな事を実行しようとするのはお前ぐらいだ」


「褒め言葉と思っておくよ。それじゃあ俺は帰るな」


そして魔王と別れ、俺は宿へと転移した。





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