作戦の経過
蒼葉 夜 視点です
私が転移した場所はルイーナの街の地下だった。
「とりあえずここで街の現状を説明してから、街奪還作戦の内容を伝える」
リーダーがそう言う。
「地上では、街民の暴動が起こっていた。それと、街民の1人を捕まえ調べた所、精神支配を受けている事もわかった。おそらく魔族の仕業だろう」
「暴動を起こさせその隙にルサルファ様を狙ったということか」
チームの1人が言う。
「そうだろうな。そしてルサルファ様だが確認した所おそらくご自身の邸宅で捕まっている。俺達の任務は街の奪還、その為にはまずルサルファ様の救出、及び魔族の駆除だ。街を奪還出来れば魔王の手紙の指示に従う必要はなくなる。この作戦はどこか1つの街が失敗したら終わりだ。俺達は目の前の作戦に集中するぞ」
「「「「おお」」」」
まだアキハ様の狙いがわからない。魔族達が街を占領したのはアキハ様の狙い通りなのか?このシナリオをアキハ様はどう終わらすつもりなのだろうか…。
「ちょっといいか、ヨルハさん」
リーダーが話しかけてきた。
「なんですか?」
「ルサルファ様は腕の立つお方だ。そのルサルファ様が捕らえられてしまうほどに相手の魔族は手強い。魔族との戦闘になった時は貴女の力が頼りだ。よろしく頼む」
「はい、承知しております」
地下通路を進み地上へと繋がる階段を登った。地上に出ると建物中に出た。内装からして民家の中のようだ。おそらくこの建物自体は出入口を隠す為のものだろう。
本来なら王女の邸宅に出たいのだが、今回は魔族に鉢合わせる危険性を考え他の場所に出たそうだ。他にもこの街にはこのような出入口があるようだが、ここは邸宅にある出入口以外で一番邸宅に近い場所だと言っていた。
「これは一体…」
「どうなってる!?街は暴動が起きている筈では」
民家からに出ると暴動が起きている筈の街は鎮まり返っておりあちこちに街民が倒れていた。見る限りでは起きている者はいない。
「おい、大丈夫か?!」
近くに倒れていた街民の状態を確認するリーダー達。
「どうでしたか?」
「息はしている。外傷もないし、精神支配も受けていない。ただ眠っているだけのようだ」
「とりあえず命の心配はいらないということですか?」
「そうなるな。しかしどうなってる、俺がついさっき来た時は確かに街では暴動が起きていた」
「リーダー、今はとりあえず作戦を開始しましょう。それと、この事態が他の街で起きているのかも魔道具で他のリーダーに連絡をとって確認した方がいいと思います」
「そうだな」
そして結果から言うと他の街でも全く同じ事が起きていた。それからリーダー同士が話し合い作戦は続行、王都にも報告をし、私達はルサルファ邸に突入する事になった。
突入するのは私を含め5人、1人は緊急時の報告の為邸宅から少し離れた場所に待機している
1人が正面から邸宅に突入、他4人はその他の場所から散らばって突入、魔族を見つけ次第連絡を取りそこへ集まる。
作戦はリーダーの合図で開始した。
私は気配を完全に絶ち邸宅に忍び込みルサルファ王女の気配を探る。
そうして気配を辿り、行き着いた場所は以前も来たことがあるルサルファ王女の自室だった。
部屋の中に入り最初に眼に入ったのはソファに横たわるルサルファ王女だった。入る前に気配を探った為わかっていたが部屋の中に魔族はどこにもいない
とりあえずリーダー達に連絡をしよう
私からの連絡を受け取った4人はすぐに私の元に駆けつけた。
「ヨルハさん魔族は何処に行った?」
駆けつけてすぐにリーダーが聞いてきた。他の3人はルサルファ王女の容態を確認している。
「最初からルサルファ王女だけでしたよ」
「一体どうなっている。…ルサルファ様の容態は?」
「街民同様ただ眠りに落ちているだけかと思われます。ただやはり目覚める様子はありません」
「そうか、…わかった。とりあえずお前達は邸宅内の見回りに行って来い。ここには俺とヨルハさんが残る」
「「「は!」」」
3人が部屋から出て行くとリーダーはまず他の街に事態の確認をとった。
「どうでしたか?」
「他の街も全く同じ状況だった。とりあえず話し合った結果この事を王都に報告し私達は街に残って変わらず警戒を続ける。もしかしたらこれも魔王の作戦かもしれないからな」
「そうですか。しかし午後4時になったらガルマリア国王と勇者達は正門に現れなければ行けない。今のこの状況、これが街の奪還に成功したのかどうかはっきりさせなければいけないのでは?」
「ああ、確かにそうだ。その事については追って国王様から連絡が来るだろう」
しばらくすると見回りに行っていた3人が戻ってきた。だがやはり魔族の姿はどこにも見当たらなかったらしい。
そこでちょうど国王から連絡が来た。今回は音量を調節し、全員に聞こえるようになっている。
『あーあー。聞こえているな』
「はい」
『この連絡はすべてのチームに届いている。全員よく聞いてくれ。まず、作戦に参加した冒険者各員、それとイクスとフェスラは王都に戻ってくれ』
イクスは騎士、フェスラは魔導師。王国最強と言われている2人の事だ。
『他の者はそのままそこに残ってくれ。こちらからも兵士を送る。その者達と協力し街の警戒に当たってくれ』
その指示に従い私は王都に戻った。そして戻った私達は国王の自室へと連れてこられた。
「それで、これからどうするのかを聞かせてくれんだろ?」
トライクさんが単刀直入に聞く。
「ああ。…約束の4時まではあと1時間ほど、勇者達もここに呼んで今は別室で待たせている。ちなみにスクロワ達3人も一緒の部屋にいる。後で作戦の詳細を伝えるつもりだ。そして魔王の手紙通り私と勇者達だけで正門前に姿を現す。勇者達も了承してくれた」
「おいおい、それは流石に無謀過ぎないか?」
「わかっている。だから王都内の正門付近に王都の騎士、それと冒険者達に待機してもらう。幸いギルドも協力してくれる。その為お前達には状況に応じて行動してもらいたいのだ。魔王の狙いがわからない以上これが最善の手だろう」
「王都はそれでいいが他の街はどうする。まだ完全に街の安全が確認出来たわけじゃないだろ」
「ああ、その為に街に人員を送った。4時までに全ての街の安全が確認出来ればこちらも魔王と正面から対峙できる」
「午後4時に間に合わなかった場合はどうする?」
「それは…流れに身を任せるしかないだろうな。さっきも言ったがこの事態の魔王の狙いが全くわからない。手紙の内容から察するに魔王と私の間で何かが起こるだろう事はわかるが」
「そうか。…まあわかった。とりあえず俺達は正門で待機してればいいんだな」
「そういう事だ。お前達を巻き込んでしまい申し訳ない」
ガチャ
「ん?…アキハ殿!?」
部屋に入ってきたのはアキハ様だった。
「遅くなった。王都の外に魔物を狩りに行っててな。事情はだいたい把握している」
「そうか。来て早々だがアキハ殿にも協力を頼みたい」
「ああ、作戦内容を詳しく聞かせてくれ」
国王は先程私達に聞かせた作戦をもう一度アキハ様に説明した。
説明が終わり、私達は時間まで王城の客室で待機することになった。トライクさん、イクスさん、フェスラさんは用事があるとどこかへ行き、アキハ様は国王と2人きりで話がしたいと部屋に残った。
私達はというとこれからどうするのかを話し合っていた。話し合いと言っても結局何をするわけでもなく、街の安全確認の報告を待つしかないという結論にしかいたらなかった。




