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魔王との約束




術式と魔法陣の仕組みは良く似ている。この2つの大きな違いは永続的であるか否か。魔法陣の場合発動を持続させるには魔力が必要不可欠だ。しかし術式は式さえ組めてしまえば永続的な効果が望める。だが、術式の扱いは非常に難しく、知られている術式の組み方もそれ程多くない。


そして以前ギニィの部下が術式の実験をバスールという町でやっていたがあの術式は完璧とは言えなかった。だが、この転移阻害の術式はここまで大規模なものにも関わらず完璧に完成されていた。


術式だという事に気づいたのは転移阻害の方法を探っている時、微かに術式を発動した痕跡があったからだ。そしてこの術式はギニィを中心に周囲数十キロの範囲で発動している。確かにバスールで見た術式の方が術式としての難しさとレベルは高い。何せ時間を操ろうというのだから。


だがここまでの広い範囲を対象とし尚且つ普通の防護結界より転移阻害能力は高い。この術式が発動していては絶対に転移できないと言っても過言じゃないだろう。


そんな術式を作り上げた人物、是非とも会いたいもんだな…。



……よし、解析終了っと。これで面白い術式が2つも手に入った。ちなみにバスールでの未完成だった術式は既に完成させてある。いずれ使う時がくるだろう、というか使いたいから自分で機会を作ろう。



お、そろそろギニィにかけている幻が限界だな。さて、術式は消したしもう転移を使う事ができる。がここから先はどうするか…。


悩んでいたところ先程からずっと俺の幻と戦っていたギニィが急に動きを止めた。これは、自分が幻覚見てたって気づいたか?


「おい、お前!やってくれたじゃないか!」


お怒りの様子のギニィさん。


いつでも転移できるように眼の色を緋色に変えておく。


「なあ、まだ戦い足りないか?俺の幻相手に結構戦っただろ」


「うるさい!せっかく楽しかったのに…。私を騙した事その身を持って償え!」


その場で殴る蹴るの連打を入れるギニィ。もちろんギニィのスキル【因果改変ネメシス】の能力でその攻撃は俺に入る。


芸がない。俺は構わずギニィの所へ駆ける。

そもそもこの攻撃自体に俺にダメージを与えるだけの威力がなければ意味がない。俺は避けもせず攻撃を受けたままギニィに近づく。


俺が二割程の力加減で走ってギニィに近くまでに受けた攻撃は6発やはり身体能力はそれなりに高いようだ。

しかし俺がギニィに攻撃を入れてもそれは全て俺に返ってくる。さっきこいつが俺の幻相手に丁寧に説明してくれてたしな。それにギニィを殺すなら幾らでもやりようはある。例えば認識出来ないスピードと一発で殺せる威力を持った攻撃を入れればそれで終わりだ。中途半端なダメージを与えても結果を書き換えて俺にダメージが入るだけだからな。

だが、今回こいつを殺す気はない

だから俺は、殺気に五割ほどの魔力を乗せギニィにぶつけた。殺気の相手に与える影響力を魔力を乗せることで増加させた。


ドッン!


身体が地面に吸い寄せられるように、ギニィは地面に突っ伏した。


「ぐっ…な、なんだ、これはっ」


「俺とお前の力の差だ。まあ力を隠してたから分不相応に俺に挑んで来たのも許してやる。これでもう俺に挑む気は失せたか?」


「っ…ぬかせ!【因果改変ネメシス】」


虚しくも何も起こらなかった。


「な、何故だ!」


「お前は今何を書き換えた?おそらくだがお前の今の現状、その結果を俺が受けているものに書き換えたんだろ」


「そう、だ。それなのに、何故お前がまだ立っている!何故まだ私が地面に突っ伏している!」


「簡単な話だ。お前が今こうなっている原因は俺にある。今俺がお前に与えているのは肉体的攻撃じゃなく、精神的攻撃だ。誰も自分の殺気に怯えはしない。結果を俺に書き換えてもそもそもその原因じゃ俺はお前みたいにはならない。今のこの状態にお前の能力は全く意味をなさない。つまりお前はただ単に俺に怯えて震えているだけってことだ」


肉体的ダメージなら俺が原因でも結果を書き換えれば俺にダメージは入る。なら俺が原因で尚且つその結果が相手にしか現れないような攻撃を仕掛ければいい。この場合は殺気というわけだ。


殺気で地面に突っ伏しているギニィ、この結果だけを俺に書き換えたとしても結果には必ず原因が伴う。つまり殺気が俺に返ってきてもその殺気は結局俺ものであってこの結果には繋がらない。

それも俺自身が永続的に殺気を出し続けている限り俺に一旦この結果を移してもまた殺気で地面に突っ伏す結果がギニィには待っている。


まあ、結局言いたいのはギニィが能力を発動しても意味がないって事なんだけど。



「さて、確認なんだけど、お前が今日ここにいるのは魔王クオレマ・オリムが仕組んだ事だろ」


実際は全て知っている。ギニィが俺の幻と楽しそうい遊んでいる間にこいつの記憶はしっかりと見せてもらった。まあギニィの登場は俺の想定外だったが、それ以外の今起こっている事はだいたい想定内だな。


ギニィの記憶だから、クオレマの策全てがわかったわけじゃないが、たぶん予想通りに動いてくれているはず。


「くっ、殺気を…解いたら、 教えてやらん事もないっ」

どこまでも強気な態度をとるギニィ。


「まあ今の質問はちょっと確認したかっただけだ。お前は何も教えなくていい。全部知ってるからな」


「嘘、をつけ」


「嘘じゃないぞ、ギニィ。お前の記憶を見たしな。それでだ、お前に提案があるんだがいいか?」


「おい、記憶を見ただと。そんな事までできるというのかお前は」


「記憶の事はもういいよ。その事より今のこの現状、さすがに力の差を理解できただろ。ここでおとなしく従ってくれなきゃお前を殺す事になるんだぞ」


「…わかった。私の降参だ」


ギニィに向けていた殺気を解く。


「一応言っておくけど逃げたり攻撃仕掛けたりするなよ」


「は、私もそこまでバカじゃない。お前の力を目にしてお前に戦いを挑もうとは思えない。戦闘とは拮抗した力関係でこそ面白い。お前とは戦闘にもならん。お前にとってただのお遊びで終わりだ」


「そこで提案なんだが。俺と協力関係になってくれないか?」


「は?」


「だから協力関係になってくれって言ってんだよ」


「お前、分かっているのか?私は魔王、魔族以外の全種族と敵対している者。人間であるお前が私とそんな関係を結んでーー」


ギニィに俺のステータスプレートを見せる。眼は緋色、今は魔王種だ。


「…な、なな何故お前が魔王種!?魔王は7人しか存在しないはず。まさかお前魔王の誰かの変装か!」


今度は紫紺色に眼の色を変え、ステータスプレートを見せる。


「あ、悪魔!?一体どうなっている。まさかまた幻を…」


「違うよ。お前ぐらいの強さになれば発動直後のニ度目の幻にはかなりの抵抗がうまれる。そうなるとかけられた方も気づく。そんな感じはしなかっただろ」


「ああ…。て、それじゃあ尚更どういう事だ!」


「お前に詳しく説明する気はない。だが1つ言っておく、俺はどの種族にも属していない。誰の味方もする気はない。基本俺の考えは面白ければいい、だからな」


「ふ…ふはは!なんだそれは」


「で、どうなんだ。俺と協力関係?まあ協力と言っても大体は俺の指示を聞いてもらうって事なんだが。そういった関係を結ぶのか?」


「それはもうすでに主従関係じゃないか!」


「ん?そっちの方がいいのか?」


「断じて違う!」


「そうか。…だが、主従関係とはちょっと違う。お前が俺の指示に従う代わりに俺は見返りをしっかりと用意する」


「なんだ、その見返りは?」


「戦闘を楽しめる舞台を用意してやる。まあそれで足りなければお前にちょうどいい相手ともちょくちょく戦わせてやる。どうだ、戦闘狂のお前にとっては魅力的な提案だろ」


「た、確かに。近頃は私と戦ってくれる相手がいないのだ。魔王連中や他種族とも容易に戦闘はできんしな。それで今回お前は私にとって最大の楽しみだったんだが、そんなお前は私より遥かにレベルが上で話にならんし…」


「それじゃあどうだ。乗るか?この関係が続いている間はお前に不利益が被ることはないだろう」


「……ははは、よし乗ろうではないか!得体の知れないお前について行くのもまた一興。だが言っておく、私の目指すはお前との対等な勝負。いつしかお前に追いついて見せよう」


「お前が俺に追いつく、か。いいだろう。その時は俺も潔く全力で戦ってやる。それじゃあ契約成立だな」


「今回は契約と言っても口約束だがな、はっはっはっ」


「お前が契約破ったら俺は容赦なくお前を殺しに行く。だから契約破るだったら俺と対等な戦闘ができるようになってからの方がいいぞ」


「はは、それは笑えないな。私も死にたくはないからな」


眼の色を緋色に変えてっと。


「それじゃあ魔王城に送ってやる。転移の魔道具を持っているみたいだがわざわざ使うことはないだろ」


「おお、そうか。それではよろしく頼むよ」


「近々俺も魔王城に挨拶に行くよ」


「ああ、来るがいい。それと、お前が用意する戦いの舞台、楽しみにしているぞ」



こうしてギニィを魔王城へと転移させた。今回は予想外の出来事だったが結構いい結果に終わったのでまあ良かった。


それじゃあ一旦王都に戻るとするか。








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