街の危機
今回は本編に戻ります
最初はギルド長、視点からです!
「出て行ってしまわれた…」
あの御二方が出て行った部屋はどこが空気が軽くなったような気がしてくる。
しかし、なんなんだあの御二方は、
あれ程の力、私には理解することすら難しいほどの…。
いや、ある…私は過去にあの圧倒的力を目にしたことが。
先ほどの殺気だけではあの少年の実力の底はわからなかったが、
女性の方はかすかに力が漏れていた、そこから感じ、見ることができた圧倒的力の圧力、それは私がまだ若かった頃、異界の勇者様と共に【七夜の魔王】のひとりに挑みそして敗北したあの時の記憶の中に。
まさか、魔王級の強さだとでも言うのか彼女が。
それにあの少年、
女性自身が自分よりも強いと言っていた。それが本当かどうかはわからないが、あの殺気、あれは恐ろしいものだった。
呼吸をするかの如く普通に殺気を出していた。それに私はあの時はっきりと見た。
自分が殺される光景を、それが幻視だと気づけたのは数秒経ってからだった。
まったく、何者なんだあの御二方は…。
だからこそ、今回あの御二方の力が必要だったのだが、まさか断られてしまうとは…。
いや、いかんな。 早く頭を切れ変えなければ。
ここから死の森は近いと言っても、それなりに離れている。
魔物が到達するにもせいぜい15分程はかかるはず。
そして今この街にいる冒険者は200名程度。
S級の魔物とは言えこの人数、全員で闘えばなんとか追い払えるだろう。
だがしかしこれは魔物が一体ならの話だ、この人数をもってしてもS級の魔物は3体が限界だ。だが今までに2体以上の魔物が同時に街に襲ってきた記録はない。
今回も一体だけといった可能性の方が大きいだろうし、少しは安心できるか。
そんなことを考えながらギルド長は椅子にかけてあったローブを着込み、杖を握る右手に力を入れる。
「さて、私もそろそろ行くかの」
こうしてギルド長は戦地へと赴く…。
◆
ソーラス正門前。
そこに集まった冒険者達は今入ってきた情報を聞いて一様に恐怖し慄いていた、たった一人を除き。
「おい、みんな!今からそんな様子じゃ、魔物なんか倒せないぞ!」
台の上に立ち冒険者達を鼓舞するのは一人の青年、
ーーSランク冒険者、ダリア・ベンマークだった。
「ダリア!お前もさっきの話は聞いただろう」
「今回はいくらなんでも無茶すぎるぜ、ダリア」
「ああ、そうだダリア」
「Sランクのあんたがいても今回のはさすがに無理だ!」
冒険者達は口々に呟く「無理だ」「諦めよう」、と。
だが、それでもダリアは諦めない。
「俺たち冒険者が諦めてどうする!!俺たちが今ここで逃げ出したらこの街がどうなると思っているだ!
ここにいる奴らは全員等しく冒険者だ、冒険者は冒険者らしくその意地を見せてやろうじゃないか!!」
その言葉に自分自身を鼓舞するもの、下を向き目をそらすものなど反応は様々だ。
「ちっ、やっぱり俺の言葉じゃ…」
「ちょっといいかな、ダリアくん」
ダリアが後ろを振り向くとそこにはギルド長がいた。
「ギ、ギルド長!?」
ギルド長という言葉に反応し皆一様に視線を移す。
「冒険者諸君、今回はよく集まってくれた。この街のギルド長として嬉しく思う」
皆がギルド長の言葉に集中している。
「そして、今皆が戸惑っているのはSランクの魔物、総勢17体とAランクの魔物34体がこの街に向かってきている、という情報についてだな」
ギルド長は周りの反応を見てからまた話に戻した。
「しかし今、この街にはSSランク冒険者が2人、Sランク冒険者が4人そしてその他にも多くの冒険者が緊急の連絡を受け向かっている。おそらくあと、15分ほどで着くだろう。だが、それでは間に合わない!先ほど入った情報では、魔物はあと5分ほどでこの街に来る!」
「だからどうか、援軍がこの街にたどり着くまでの10分、この街を、この街の人々を護ってはくれないだろうか!!」
そう言ってギルド長は冒険者達に向けて頭を下げる
その行動を見て、
冒険者達の中で、決意が固まる。
あのギルド長がこの街のために頭を下げているんだ、
ここで俺たちが闘わなくてどうするんだ!と。
「頭をあげてください、ギルド長」
「俺たちは戦います。この街の為、この街の人々の
為に」
「なあ!みんな!!」
そう言ったダリアの言葉に冒険者達の声が帰ってくる。
〈〈〈〈〈〈〈うおおおおおおー!!!!〉〉〉〉〉
こうして冒険者達の意志が固まった、
〈絶対に増援が来るまでこの街を守りきるんだ!〉と。
1つの意思に統一された冒険者達は街から少し離れたところでこれから来る絶望を待ち受ける…。
◆
俺は今、夜と一緒に上空300メートルの所に座っている。
先程ギルド長と別れてから俺は冒険者と魔物達の戦いをよく見られる場所はないかと探した結果、結局空に来てしまった。
エクストラスキル【障壁】を自己流にアレンジして使い、障壁で周りを囲み障壁外から俺たちを見られないようにしてある、それに障壁にはエクストラスキル【擬態】を使い周りからは何も見えないよう細工をした、たとえなんらかの結果見えたとしても俺たちは見えず、見ることができるのは周りを囲む障壁だけ、と完全に俺たちの姿を見えなくしてある。
「主様、先程のギルド長の話は何故お受けになられなかったのですか?」
「はは、わからないか夜。これが一番手っ取り早く冒険者のランクをあげられるかなと思ったんだよ。(本音をいえばこちらの方が、面白そうだからなんだけど)」
「ランク、ですか?」
「ああ、これだけの大衆の前で、力を示せば冒険者ギルドもかなり上のランクをくれるだろうからな。それに、あのギルド長にも貸しが1つ作れる」
「そういうことでしたか、私の考えが至らず申し訳ありません」
「いや、いいよべつに。それより今回はお前も闘うからな。いい機会だし自分がどの程度戦えるのかしっかりと確認しておけよ」
「はい!」
こうして俺たち二人は上空で、魔物vs冒険者の戦いが繰り広げられるのを待ちながら自分たちが登場する絶好の場面を待つのだった。
……冒険者たちは、目の前の光景に逃げ出したくなる衝動を必死に抑えていた。
これから始まる10分間を思うと、恐怖でしかないこの光景。
冒険者達の目の前に広がる光景は、恐怖の具現でしかない。
そんな恐怖する冒険者たちを嘲笑っているかのように魔物達は悠々とこちらへ迫ってきている。
それでも、
覚悟を決めた冒険者達に逃げるという選択肢はない。
さあ、いよいよ絶望の10分間が始まる。
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