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タキリビメ



自室で勇者達に会う準備を整える。先ずはアルティメットスキル【生命創造ネイト】で俺と同じ年齢で顔の違う身体いれものを造る。そして、俺の普段着をしっかりと着せる。もちろん俺も別の服をきている。決して素っ裸ではない。で、最後にその身体いれものに俺の意識を飛ばす…。


バタン


「…ふう、上手くいったな」

まあ、この方法は以前魔王…あれ?そういえばあいつの名前聞いてなかった。…まあとにかくあの時にコピー体に意識を飛ばすしたのと同じ事だ。


本体をベットにしっかりと寝かせてっと。さてそろそろ時間だし勇者達が待つ談話室に行かないとなーーー




ーーーさて、どうしよう。談話室に入ったはいいけど俺が座ってからこいつら自己紹介以外何も話さないんだけど。久しぶりにあったけど思った以上に成長しているようだし、これはこれからの成長が楽しみだな。じゃなくて、何?なんで話さないの。これは俺から話しかけるの、俺が呼ばれたのに。


「えっと、俺と話したいって聞いてたんだけど」


「あ、はい」

確か田附君だったな、コンビニ店員の。


「いや、いざ会ってみると何を話していいやら」


なるほど、田附君が一応このパーティのまとめ役になっているみたいだな。全員視線はこっちに向いてるけど表情がかたい。仕方ない、ちょっと記憶を探るか。眼をばれないように翡翠色に変え、【記憶操作】を使用する。


「えっと、戦場に立つ勇気、それを俺に会うことで得ることが出来ないかなと、戦場を知り尚且つ年齢の近い俺の話が聞きたかったって俺は聞いてるけど」


まあ、これは夜に聞いてたしな。


「は、はい。…そういう事です」


まあ平和な世界からいきなりこの世界に来たんならそう思っても仕方ないのか。でも、こいつらはとっくにこの世界で生きる覚悟は出来ているだろうに。ただ戦場を知らないから、未知である戦場が怖いだけか。


「まあ、そんな固くなるなって、一応俺とお前達そんなに年齢変わらないんだからさ。というか年下だし。俺も話しづらいよ。とりあえず敬語はいらないからさ」


年齢、か。精神年齢なら今俺って何歳なんだろうな。いや、この場合精神年齢じゃないな。魂の年齢というべきか、まあ今はどうでもいいことなんだけど。


「わかった」

敬語から言葉遣いを改める田附君。肉体年齢的には田附君の方が上だしね。

「それと、今回はここにいる8人で話してるんだから田附君意外もしっかり会話に参加してくれよ。せっかく話せるんだから意義のあるものにしたいしさ」


そう言うと、他の6人は少し表情が和らいだ。まあ俺にどんな感情抱いていたかも記憶見たからわかるし、それを考えれば俺と会って固くなるのもわかる。しかし、自分達と変わらない年齢の人間にここまで自分の感情を押し付けられるのか、それも見ず知らずの人間に。さすがに全員余裕がなさ過ぎる。


「お前達が抱える問題は戦場に立つ為の勇気が持てないってだけじゃないだろ。お前達はこれまでに魔物を殺してきた。その事と戦場に立つのがどう違うのか教えてくれるか」


そう言うと、意外と言うべきかやはりと言うべきか小田倉君が最初に口を開いた。確か記憶では彼はこういう時には饒舌になるんだよな。


「僕達にとって戦場と普段の戦いは命をかける重さが違う。確かに魔物とはこれまでも戦ってきた、でも戦場は違う。戦場は多くの命が懸かっている。特に勇者である僕達に希望を抱く人は多い。僕達勇者7人だけが魔王や、その手下の大勢の魔族に挑んでも勝ち目が薄い。必然的に周りの力、多くの人々の力が必要になってきてしまう。そうなると僕達にかかる命の重さは普通の戦闘と比べて膨れ上がる。僕達はその重荷に耐えることができるのか不安なんです」


「それは全員の気持ちでいいんだよな?」


視線を向けると全員が頷き返した。

まあ、この中で一番精神的に丈夫そうなのが小田倉君なんだけどな。彼はこの異世界に来たことでもうすでに幸せ絶好調といった感じだ。大抵の事なら何とか受け入れる事ができるだろう。


「その答えはもう既にガルマリア国王から貰ってるだろ。この世界の行く末に責任を持つ必要はない、だろ。というか、俺から言えることなんてほとんどガルマリア国王が喋っただろ。それよりもお前達が俺に会いたかったのは“安心”したかったからだろ」


全員の表情が驚きに変わる。


「まあ、能力でわかっただけだから気にするなよ。それよりだ、俺に会うことでお前達は“安心”できたのかな?俺は君達の理想通りだったか?」


「ア、アキハさんは一体どこまで俺達の事を…」


「全て、だ。…あ、いや流石に全てじゃないか。まあ必要な事はすべて知っている、と言った方がいいかな」


君の全てを知っている、とか言ったらただの変態だよな。今度夜に言ってみようかな、一体どんな反応するだろう、引かれそうだな。おっと思考が逸れた。


「ガルマリア国王が言った事をよく思い出せ。お前達が戦場で支えにするものはなんだ?俺じゃないだろ」


「信念と…」


「仲間」

田附君、木原さんが言葉にした。


ガルマリア国王もなかなかくさい事を言うよな。あの容姿で。

「そうだ、ちゃんとわかってるじゃないか。もう既にお前達だけで答えが出せる筈だ。俺が居なくてもね。正直言って戦場に立つ覚悟は2度目からが本当に辛い。1度知ってしまった苦しみ、もう味わいたくないと思うほどの経験を味わい、戦場に立つ事。勝てるならいい。でも、たとえ勝ったとしても失うものがない戦場なんてないんだ。これからどうするのかは結局は君達次第だ」


無言、か。さて、こっからどうするかな。


「1度だけ、戦場を体験させてやろうか?体験と言っても擬似的体験だけどな、少しは気持ちがわかるだろう。まあ自由参加だ。やりたい奴は挙手!」


これに乗ってこなかったらもう話は終わりでいいかな。


「私はやります」

最初に手を挙げたのは緋月さんだった。そこから次々と手を挙げ結局全員がやる事になった。もう少し人を疑ってもいいんじゃないか、まあ俺が言い出した事だけども。



「それじゃまず目を閉じる。閉じたらソファに身体を預けゆっくりと力を抜いていく。ゆっくり、ゆっくりと……」


そのうちに俺は眼の色を紫紺色に変える。種族は悪魔。そして俺はアルティメットスキル【幻霧之夢タキリビメ】を発動するーーーー




ーーーさて、そろそろ起きてもいい頃だろう。能力を発動してから約10分、彼等は今もその表情はを苦しみ、悲しみで歪めている。


幻夢之夢タキリビメ】の能力は大まかに言えば対象に幻や夢を見せる事。彼等にはここにいる自分以外の勇者全員が戦場で死ぬという夢を見せた。幻と夢の違いは対象の身体が動くかどうか。夢の場合身体は動かない。だが、現実と何ら変わらないリアルな光景を見てる事だろう。最初にリラックスさせたのはただ単に眼の色を変える時間が欲しかっただけだ。


さて、これで心が折れてしまえば…どうなるんだろう。まあ成り行き次第でどうにでもなるか。



…なかなか起きない。ち、夢に囚われてるなこれは。せっかく自分の意思で起きられるようにしてたのに誰も起きれなかったのか。


仕方ない、全員起こしてやるか。


「うわぁ!!…はあ、はあ、あれ、ここは…そうだ私は談話室でアキハさんと」

起こそうとした所緋月さんは自分の意思で夢から覚めた。なるほど、彼女はもしかしたら…。


「どうも。いい夢は見れましたかね」


「え、これはアキハさんがやったんですか?」


「そうだ。でもちゃんと全員に確認はしただろ。戦場を体験させてあげようかって」


「は、はい、…そうでした」

やはり悪夢から目覚めたばかりだからか顔色が悪い。


「もうすぐ全員目覚めるから、そしたら詳しく説明する」


「はい」



ーー「ん、ここは…」


「あれ、私は」


「僕があんな事…」


「はあ…」


「なん、なんだ」


「わ、私が…」



全員起きたけど一様に顔色が悪いな。


また、眼の色変えなきゃいけないのは面倒くさいけど、話進まないし仕方ないな。


眼の色を翡翠色に変える。そして先程も使用した【記憶操作】を再び発動する。そこから全員の一番幸せだった記憶を呼び起こし、彼等の心を落ち着かせる。心が落ち着いたのを見計らいすぐにその記憶を奥底へとしまい、幸せな感情だけを残す。ああいった記憶を残すと幸せな感情以外の他の感情を呼び起こしかねないしな。



「どうだ、少しは落ち着いただろ」


全員の表情を確認するが、どうやら大丈夫そうだな。


「それじゃあ、今俺がやった事を詳しく説明する」









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