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王都のギルド長

秋視点です。



昼食を食べ終えた俺達は王都に着いてからまだ一度も行っていなかった冒険者ギルドへ向かった。


俺がギルド長に会ってみたいと言ったところディルが『なら会いに行こう』と言ったため行くことになった。SSSランク冒険者であるディルなら事前に連絡がなくとも大抵は会うことができるらしい。


俺がギルド長に会っておきたかったのは今回の作戦の為だ。一応顔ぐらい合わせておいた方がいいだろう。



冒険者ギルド前


「さすがに王都にある冒険者ギルドはでかいな」


「地下にはルイーナの街同様修練場があるしね」


「それじゃあ早速ギルド長に会いに行くか」


ギルド内には様々な施設があり、酒場なんかは結構な数の冒険者で賑わっていた。


そんな喧騒の中を進んでいき受付へと向かった。ここからはディル頼りだ。


受付は5つ並んでおり、一番右端の受付へと向かった。理由はというと受付の頭上の壁にギルド長という札が貼り付けてあったからだ。まるっきりルイーナの冒険者ギルドと同じだ。なに、ここのギルド長はリサルムの親戚なの? それともこれが普通なの?


「ギルド長に面会希望なんだけど、いいかな?」

受付のギルド職員へディルが聞く。


「何か紹介状や事前に連絡をよこしていた場合はそれを証明する物をお見せ下さい。それがなければギルド長に面会希望の理由をこの紙に書き、少々ここでお待ちください」


「あ、えっとこれでいいかな」

ディルはSSSランクの冒険者カードを職員に渡す。


「え…!?少々お待ち下さい。今ギルド長に確認をとってきます」

冒険者カードを見るなり職員は慌てて奥へと走っていった。


「SSSランク様はすごいな。カード見て慌てて行っちゃったぞ」


「はは、まあね。でもアキハさんの実力ならSSSランクでもおかしくないんだけどね。まあSSSランクになるにはギルド総長に会わなきゃいけないからちょっと面倒くさいけど」


「今の所Sランクでも不自由ないからな。でもこうやってカード見せただけでギルド長とすぐ会えるっていうのはいいな。ディルが一緒にいたから今回は良かったけど」


「まあ、SSSランクっていうだけでいろいろと待遇は良くなるね。でも待遇が良くてもSSSランクの人ってあんまり表舞台に出てこないからほとんど機能してないらしいけど」


タッタッタッガンッ


ものすごい勢いで走って戻ってきた職員が受付に腹をぶつけた。


「おい、大丈夫か」


「ぷっ…」


笑うなフェレサ、この娘が可哀想だろ。さっきまではスムーズに仕事をこなせてたんだから。ほら恥ずかしくて顔が真っ赤だ。


「す、すみません。大丈夫です」

乱れた呼吸を整える職員。


「ふう、…ギルド長より許可がおりましたのでギルド長室へご案内させていただきます」


ギルド長室は地下にあるようで、地下に繋がるという扉を開け階段を数回降り少し入り組んだ通路を通りやっとついた。一応来た道は覚えたが、これ初めて来た時の帰りは普通だったら迷うよな。


コンコン


「ギルド長。ディル様とその御仲間をお連れしました」


「入っていいわよ」


ガチャ


中は西洋風の結構綺麗に整えられた部屋だった。執務室だからもう少しかたいイメージだったんだけど、これはもうお茶会でも開けそうだな。


テーブルを挟んだ奥のソファに座っているギルド長。獣人族だな。年齢は俺達より10歳上ぐらいか。どうやら化粧をしているようだ。フェーブのかかった長い髪。まあ第一印象はまさに大人の女性と言ったところか。しかし、少し見た目に気合が入り過ぎてないか?仕事中だしここまで気を使う必要はないだろうに。


「ソファにおかけになって」


そう言われ俺達はギルド長と対面する形でソファに座った。ただ人数が多い事もあり俺だけ一人用のソファに腰掛けた。


「あの、わたしはもう戻っても…」

ここまで案内してくれたギルド職員が恐る恐るといった感じでギルド長に聞く。


「もう、戻っていいわよ。戻って仕事をしてなさい」


「は、はい!」


ガチャ、バタンッ


凄い勢いで出て行ったな。


「ごめんなさいね。あの子そそっかしくて」


「いや、別にいいけど」

初めの方はしっかり仕事出来てたんだけどな。


「それで、貴方がディル様なのかしら?」

俺の方を向いて聞いてくる。。


「いや、俺じゃないぞ。目の前にいるほら、そこのちっちゃいの」


「ちっちゃいのは余計だよ!えっと、僕がSSSランク冒険者のディル・クレインです。よろしくね」


ディルが挨拶をするとなんか少しがっかりするギルド長、何故に。

「え、貴方がディル様。それじゃあこちらの方は…」


「俺はSランク冒険者のアキハだ。一応全員自己紹介しておくか」

夜に視線を送る


「Sランク冒険者のヨルハです」


「同じくSランク冒険者のノーメンと申します」


「私はSSランク冒険者のフェレサだよ」


「あ、私はここガルマリア王国王都の冒険者ギルド、ギルド長テレーズ・ノメスと申しますわ。レーズとお呼びください」


「そうか」


「それで、今回はどの様なご用で私のところに?」


この問いにはディルが答える。

「いや、僕もSSSランク冒険者だし挨拶だけでもしておこうと思って」

ディルにはあらかじめそう言ってもらうように頼んでおいた。俺はただ単に会いたかっただけだし、適当な理由にはもってこいだろう。


「そうだったのですか。わざわざありがとうございます」


「いやいや、こっちこそいきなり来ちゃってごめんね」


「そういう事なら少々お待ちを。今何か飲み物をお出ししますので」


「そんな気を使わなくても良いよ」


「いえ、これぐらいのもてなしはさせて頂かないと」


そしてレーズの入れてくれたお茶を飲みながら、俺達は雑談に花を咲かせていた。


「それじゃあリサルムとは知り合いなのか」


「ええ、私の後輩なんです。一時期同じギルドで職員として働いていたので」


親戚じゃないけど、知り合いではあったのか。あの独特のギルド長専用受付はどっちが考えたんだろうか。


その後は王都のおすすめの店などいろいろな話をした。話し始めて小一時間経った頃、受付にいたギルド職員が再び部屋にやってきて予定がありますのでそろそろとレーズに知らせに来た。その為俺達はそこで失礼することにした。レーズにはまたいつでもいらして下さいと言われ見送られた。まあ今日はギルド長に会えただけで収穫だったな。


そして今は冒険者ギルドから出てこの後の予定をどうするか話しているところだ。


「どうする?まだだいぶ見てない店があるけどこれから行くか?」


「そういえば王都にはどのくらい滞在するの?一応もう国王に会うっていう目的は果たしたわけだし。後は王都観光ぐらいだよねやる事と言えば。まだしばらくいるんだったら今日急いで見て回る必要はないし」


「別に王都観光はやらなければいけないことではありませんがね」

フェレサの言葉にノーメンがつっこむ。


「そうだな、俺はもう暫くいるつもりだったけど。一応スクロワ達にも確認しておくか。形式上俺達はスクロワ達の護衛で来てるわけだし」


「そういえばまだスクロワの熱は下がっていないのでしょうか?」

思い出したように夜が聞いてくる。


「どうだろうな、初日に気絶してからずっと高熱で寝込んでるし。今も宿でコンクルとキュルムが看病してるけど、ポーション使っても治らないんだろ?」


スクロワはトライクに気絶させられてから今までずっと高熱を出し寝込んでいた。気絶から目覚める前に急に高熱を出し、意識が戻ってもずっと高熱が治らない状態だ。ポーションも効かなかったそうだ。


「ポーションは効かないだろうね。あの熱はトライクが気絶させる時にやったって言ってたし」


「そういえば言ってたな。それですごい謝ってたし」


「まああの日は国王にいいように使われて少しイラついてたって言ってたからね。でももうじき治るって今朝トライクが言ってたし心配はいらないと思うよ」


「そうだな、まあスクロワの熱が治るまでは王都にいるとしてその後の予定はスクロワが完治してから全員で話せばいいだろ」


「そうだね、それじゃあ今日はもう宿に戻ろっか。スクロワさんの様子も見ておきたいし」


「私はそれで構いません」

ディルの言葉に同意する夜、しかし、夜はまだなんか言葉数が少ないんだよな。返しも素っ気ないし。まあそれでも前よりはだいぶ話すようになったけど。


「そうですね。まだ王都を見て回る機会はありますしね」

夜と違ってノーメンは比較的言葉数も多い気がするな。


「それじゃあスクロワさんに果物でも買って行こう!」

フェレサが珍しく気の利いた提案をする。


「それなら、さっそくレーズさんに教えてもらった店に行こうよ」

フェレサの言葉に同調するディル。


「それいいね。この先にある店がおすすめって言ってたっけ?」


フェレサは相変わらず良く喋るが、まあそれが丁度いいバランスになってるのかもな。特に夜に対しては。それに意外なことに夜もフェレサに対しては結構喋ってるし。


そういえば俺は観光終わったら行くところがあるんだったな。観光が早めに終わるならそっちに行くか。


「あ、悪いけど俺はこの後行くところがあるから宿には4人だけで戻ってくれ」


「む、昨日もそうだったじゃないか。アキハさんは一体どこへ行ってるんだい?私達に内緒にしてー」


フェレサが口を膨らませ怒っていますといった感じで聞いてくる。しかし、どう答えよう。


「えっと、…あれだ、俺がスクロワ達に稽古してるのは知ってるだろ?」


「うん、知ってるけど」


「その稽古で使おうと思って王都周辺の魔物を散策してるんだよ。どんな感じの魔物がいるのかなと思ってな」

まあ、今思いついたにしては上出来だろ。


「それなら私達も誘ってくれれば良かったのに」


「まあ今回の稽古は俺が自己的にやってる事だからな。なるべく俺一人でやりたいんだよ。それじゃあもう行くな」


フェレサが口を開く前に急いで転移をした…



「あ、もう行っちゃったよ」


「まあ、主様がどこへ行っているのか聞けたんですから良いじゃないですか」


「そうですよ、あまりアキハ様を困らせると私が制裁を与えることになります」


「怖!!勘弁してよ、ヨルハさん」


「それじゃあ果物買って戻ろうか。アキハさんも今回は夕食いらないとは言ってなかったしその頃には戻ってくるんじゃない」


「それもそうだね」


前を歩いていくフェレサとディル。2人に聞こえないよう小声で話すノーメンと夜。


「おそらく主様が仰った事は嘘ですよね」


「そうでしょうね。アキハ様ならば1時間でここら一体の魔物は把握出来るでしょうし。もしかしたらもっと早いかもしれませんが」


「やはり前回のルイーナの街同様、何かご計画なさっているのでしょうか?」


「まだ確定ではないですけど、おそらくわね。それならば私達はアキハ様の意図を汲み絶対に邪魔にならないように行動しなくてはいけません」


「そうですね」



「何2人で話してるの?早く行こう!」


「フェレサはもう少し空気を読む事を覚えた方がいいですよ。今私達は2人で話しをしていたんです」


「なにさ、私だってそのくらいできるよ」


「まったくどの口が言ってるんだか」


「ヨルハさんはもう少し私に優しくてもいいんじゃない!なんか私だけ当たりが強いじゃん」


「当然です。私はフェレサが嫌いですから」


グサッ

夜の言葉に動きを止めるフェレサ。

「「あ、ショックで固まった」」


「はは、相変わらずだねこの2人は」


「そうですね。まあこの2人はこれでいいんでしょうね。そこまで悪い関係にも思えませんし」







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