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太古の遺物

休みだ〜!!



「おお、すげえな」

魔法陣によって転移した場所は先程の洞窟とはまるで違う様変わりした環境だった。この解放感、まるで外にいるかのようだ。


より詳しく言えば地下の筈なのに空と太陽があり、俺が今立っている魔法陣の周囲には草木生い繁る森が広がっている。さすがダンジョンといった感じだな。地下で空を再現するとは…。


とりあえず魔法陣が安全な事を証明する為、再び洞窟へと魔法陣を使い転移した。

魔法陣が往復可能なのは転移前にしっかりと確認済みだ。じゃないと安全かどうか伝えられない。



ーー「あ、戻ってきた!」


「どうでしたか?」


まあ行って帰ってきてが結構早かったから、たいして待たせてないだろう。ただフェレサは「どうだった?どうだった?」といった感じで気になってしょうがないようだ。フェレサも妙にテンションが高いがもしかしてダンジョンか初めてとかか?まあいいけど、ちょっと鬱陶しい。


「魔法陣には何の問題もない。ただここから転移したとしてその先に進んで出口があるかはわからないな」


「まあ今これがダンジョンの奥に進んでるって可能性もあるからね。ところであっちの様子はどうだったんだい?」

ディルが聞いてくる。


「ん〜、直接見た方が早いだろ。あっちに出口に繋がるものとかが何もなければまたこっちに転移して戻って来ればいいし」


「それもそうだね」


「それじゃあ、俺は先に行ってるな」ーー





ーーー「すごい、なんで地下に空が…」


「まるで外みたいだ」


「太陽がある!?」


俺の後に続き順番に転移してきたんだが転移してくるとだいたいが似たような感想を呟いている。


「まあとりあえず先に進むぞ、ここにいてもしょうがないからな」


そして俺たちは再び進み始めた。

とりあえずはここからまっすぐ一直線に進むことになった。この森がどこまで広がっているかわからないが行けるところまで行って何もなければ再び先程の洞窟に戻ることになっている。


ダンジョンといえば魔物がでてきそうなものなんだがまだ一回もでてきてない。ちょうどそういったエリアなのか?そういえば今思ったがノーメンにどのくらいの深さを落ちてきたのか聞けば良かった。それなら現在地がわかりやすかったんだけどな。まあ後で誰かしらに聞けばいいか。


しかし、ダンジョンってやっぱどこの世界も雰囲気が何処となく似てるんだよな。多くの世界を見てきたがダンジョンというものは比較的どの世界にも存在していた。そのどれもが過去の遺物と言われていて一言で言えば『謎』だった。


いつの時代から存在しているかもわからずダンジョンが及ぼす力はその多くが未知のものばかり、他の世界で俺はそのダンジョンの秘密を暴くのに苦労した。


とにかく知らない事を知りたかったからダンジョンのことに関しては全力を尽くした。そして調べていった結果それぞれの世界のダンジョンに共通することがわかった。それはそのどれもがその世界の上位存在によって創造されたものだったということだ。

つまりは神々によって造られたもの。そして俺はダンジョンの事をより詳しく知る過程で何人もの神に会ってきた。もちろんダンジョンを造った理由もその時に聞いておいた。ただ理由の方は様々だったんだよな、ダンジョンは基本的に世界の創成とともに造られたらしいが暇つぶしに造った、などが多く深い意味を込めて造られたダンジョンの方が少なかった。神も結構適当だよな。


しかし、今までの考えでいけばこの世界に存在するダンジョンも神々によって造られたと言える。理由まではわからないけど、ただその謎を解くのも面白そうだな。今後時間があればダンジョン巡りっていうのもやってみよう、楽しそうだし。ただ今回はあまり時間がないからこのダンジョンの内部を詳しくは調べてられないな、また今度来よう。



「みなさん、魔法陣がありました!」

少し興奮気味にコンクルが言う。というかまた先頭を歩いてたのか?気弱キャラはどこに行ったんだ、なんか以前より積極的になった気がする。いや、そもそも気弱キャラは俺が見た目で判断しただけだったか。


まあそれはいいとして魔法陣もうあったのか。結構すぐに見つかったな、まだ歩き始めてから三十分くらいしか経ってないぞ。


「今回のも転移の魔法陣かな?」

ディルが聞いてくる。


「ん?ああ転移の魔方陣ではあるけどーーー」


「一番乗り!!」

そう言ってフェレサが魔法陣の上に立つ、その瞬間先程の俺同様フェレサの周囲が光に包まれる。


光が収まる頃にはフェレサの姿は消えていた。


「フェレサさん行っちゃったけど、さっき何か言いかけてたよね?」


「ああ、転移の魔方陣だがこれは転移先が二手に分かれてる」


「二手ですか、本来ならここで引き返すべきだったのですが、フェレサ(バカ)が先走ってしまいましたからね。(見捨てましょう)どうしましょうか?」


あれ、おかしいぞ?夜の心の声が聞こえた気がしたな〜、まあ心の声も聞こうと思えば聞けるけども。


「まあ今回はあいつの自業自得もあるがここで見捨ててもなんだしな、後について行ってやるか」


「そうだね、僕も異論はないけど他のみんなはどうかな?」


ディルが全員に問いかけるが特に反対意見はないようだ。


「それじゃあ、ここからは二手に分かれることになるな。また出口で会おう」


そして順番に消えていった。

なんかこの言い方怖いな。いやもちろん転移しただけだけど…。


最後に残ったのは俺とディル


「ここでもしスクロワ達三人だけが分かれたら命の危険もあるかもしれないな」

ここはダンジョンだ。まだ魔物はでてきてはいないがダンジョンは常に未知の領域、あの三人だけではかなりきついだろう。ダンジョンのレベルにもよるけど最悪死ぬだろうな


「人数は八人だし四人ずつで別れるんじゃないかな。確かにあの三人だけじゃきついと思うけど僕達の誰か一人いでもればまあなんとかなるんじゃないかな?」


「ん〜、その一人がフェレサだと少し不安が残るが、まあそれも転移してからのお楽しみだな」


「そうだね、それじゃあ行こうか。次会うのは出口か転移先か」


「そうだな、行こうか」


こうして最後に残った俺たち二人も魔法陣に足を踏み入れた。


ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー


さすが俺、運がいい。


転移した先にいたのはスクロワ達三人だった。そして現在魔物と交戦中のようだ。

なるほどここはボス部屋的なものなのか。大型の魔物、おそらくAランク強の魔物と取り巻きの魔物たち。魔物は植物型の魔物のようだな、これはまた面倒くさい。


で、戦況はというと結構厳しそうだ。部屋の主を守る取り巻きの魔物達がいい働きをしている。それに取り巻きは殺すたびに部屋の主から新たな魔物が生み出され取り巻きは一定の数を保っている。これじゃあ殺しても殺してもキリがない。取り巻きが邪魔でも部屋の主を直接攻撃して倒すしかない。


「くっ!」


スクロワが魔物の蔓に足を取られた。そこを狙いボスが攻撃を仕掛ける。


グゥペッ

うわ、口からなんか吐き出したぞ、あれは毒か?


はあ、仕方ない。えっと、眼を緋色に変えてっと。


シュッ

スクロワ、ついでにコンクルとキュルムも一旦俺の横に転移させる。


ベチャッ、ジュルルル……


やはり毒だったようだ。地面に着いた瞬間に床を溶かし始めた。


少し四人で話したいこともあるし周囲を炎で囲っておく、これで取り巻きは大丈夫だな。部屋の主は…こっちに近づいてきたら反対側に転移してやるか。


以前やったように魔力を粒子に変え周囲を囲う、というのは今回はやめておいた。このレベルの魔物なら以前の方法を使えば確実に寄せ付けないことができるが、この近距離に人がいる状態で一瞬でも魔力を開放すればこいつらに影響がでかねないからな


「アキハさん!」


「さっきぶりだな、どうやらこの四人に分かれたようだ」

一名だけ最悪といった感情丸出しの表情だ。


「ちっ…」


あからさまに舌打ちしやがった。


「あれれ、さっきの毒から助けてあげたのは誰ですかね?」


「ふん、私はあの程度の攻撃ぐらい本当は交わすことが出来たんだ」


「意地をはるなよな、俺は攻撃が当たる直前まで待ったけどお前避けられそうになかったぞ。だから転移したんだしな」


「っ!」


「まあ、今はそれよりも魔物の相手だ」


「そうですね」


「ん〜、正直私たちじゃ無理っぽいんだけどな〜」


「俺が殺ってやってもいいけど、せっかくの成長の機会を逃すのか?ちょうどいい感じに手強い相手と戦えるのにもったいないぞ」

俺としては是非とも三人だけで戦っていただきたいんですけどね。


「…ぼ、僕は戦います。僕だって強くなりたい。アキハさんの戦う姿を見てからより一層思うようになりました。だから、僕は戦います」


「私だって戦うよ〜。こんな楽しい戦闘逃したくないし何より昨日教わったことを早速実戦で試したいしね」


二人はそう言ってスクロワは?といった感じでスクロワを見る。

まあ性格からしてスクロワは引かないだろうな。


「私だって当然戦う。むしろ貴方は手を出さないでくれた方がいい、邪魔だから」


「わかってるよ、最初から手を出すつもりはない。これは三人の戦いであり成長する機会だ。せっかくの機会を潰す気はないよ」


「それじゃあ行くぞ、コンクル、キュルム」


「はい」


「はーい」


やる気は出たようだけどこのままじゃ少し厳しそうなんだよな、実際さっきまで劣勢だったし。…仕方ないな

「ちょっと待った。少しいいことを教えてやる」


「なんだ」


態度悪いな、本当。もう慣れたけど。


「あの取り巻きたちの行動をしっかりと見るんだぞ、…それじゃあ後は頑張れ」


「「「……」」」


「それだけか?」


「ああ、それだけだ」


イラッ

「敵の行動を見ろ?そんなの当たり前だ!戦う相手をよく見てなくてどうするんだ、行くぞ!二人とも」


「は、はい」


「はーい」


俺は周囲を囲っていた炎の魔法を解く。


あの様子だとスクロワには伝わってないかな。全然的外れのこと言ってたし、普段の冷静な時なら理解できたかもしれないけどよっぽど俺に助けられたことが屈辱的だったのかね。まあスクロワ以外の二人なら俺がその言葉を言った意図をしっかりと考えるだろうし、別にいいか。


さてさて、どうなることやら。…しかしこうやって他人の成長を見守るのもなかなか楽しいもんだな。ゲームをやってる感覚になってくる。






スクロワの照れるところが見てみたいです…

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