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小田倉の考察

勇者側の話です

話は緋月 溟視点で始まります



三つの馬車が草原をかけている。その1つの馬車の窓から外を見つめる一人の少女。


ガタガタ


王都から出発して数時間、用意されていた馬車は三つ、先頭を走るのはこの旅のために準備された荷物を乗せた馬車、その後ろに私達勇者が乗る二台の馬車がついて行っている。乗り方は単純に男と女で別れて、御者は国王が言っていた三人の従者がやってくれている。


私、緋月 溟は他の女勇者三人と馬車に乗っている。この世界に来てからまだそんなに日が経ったわけではないけどそれでも三人とも良い人で一緒に過ごしていても気まずくならない程には私もこの三人と仲が良くなった。


「緋月さん、大丈夫?やっぱり旅は心配?」

考え事をしていたのを不安がっていると思ってくれたのか日阪さんが心配してくれた。


「大丈夫です。不安もありますけどこの世界で生きていくには必要な事ですし、…強くなるためにもこの旅は私にとって必要なことですから」


「そう、大丈夫そうで良かったわ。何かあったら私を頼ってくれていいから」


「私もだよ、緋月さん!」


「私も何かあったら遠慮なく頼ってね」


「はい、ありがとうございます」


三人とも優しく、あまり私からは話さなくてもいつも私を気遣ってくれている。



そういえばそろそろトロスト王国にはいる頃だろうか。すでに王都から出発して数時間、休憩なども挟まずに馬車は走り続けている。この世界の馬は見た目がそっくりでもその能力は地球の馬とは比べ物にならない。


まだ私達はこの世界のことをよくわかっていながそれでも勇者のみんなはこの世界に馴染もうとしている。そしてあの日、死というこの世界の現実を目の前で見せられた時それぞれの目的の為に強くなることを選んだ。それは当然私もだ。



ガタンッ

ヒヒーン

馬車が止まった。


「どうやら野営地についたようだね!もうお腹すいちゃったよ〜」


「川平お昼いっぱい食べてたでしょ。あんまり食べると太るよ」


「動いてるから平気だも〜ん」


馬車から降りてきたみんなは背筋を伸ばしながら初めての馬車の旅の感想を口々に述べている。


「それでは私達は野営の準備に入りますので、それまで少々お待ちください」


従者の一人、ヤムさんという男の人が私達に言う。従者の人達とは出発前にお互いに自己紹介を済ましている。三人のリーダーがヤムさん、とても優しいそうな人だ。他の二人、タムさんという人の方はとてもがっしりとした躯体の人で見た目に威圧感はあるけど自己紹介の時の感じでは悪い人ではなさそうだ。

もう一人のマムさんは女性の方で年は私より少し上ぐらい、自己紹介の時の様子を見ればとても明るく話しかけやすそうな人だった。


その三人が私達に野営の準備をするので待っててくださいと言ってくれたんだけど、その言葉に木原さんが返す。


「いえ、私達も手伝います。これは私達の旅ですからヤムさん達は遠慮なく私達に旅の手ほどきをしてください。私達も成長するためにこの旅に出たんですから」


確かにそうだ。今後は一人で旅をする為の知識も必要になるかもしれなし、ここで学んでおいて損はない。


「…そうですか。そう仰るのでしたらそうさせていただきます。しかし何か困りごとがあればすぐに私達をお頼りください。その為の私達従者ですので」


「はい、その時は遠慮なく」



「そうですね…。それではまずテントのはり方からいきましょうか。その後は夕食の準備と就寝時の魔物の警戒をどうするのかを」


「はい、よろしくお願いします」


こうして野営の準備が始まった。


野営の準備に対しては勇者の誰も反発することがなくいそいそと全員が準備に励んでいる。この中では一番反発しそうな草林君は見た目はちょっとあれだけど、根は意外と真面目な人で今ではみんなとなんだかんだで上手くやっていけている。今だって素直にヤムさんが教えることに従っているし、それに基本的に勇者のみんなは仲が良い。ただまあ同郷の存在が同じ勇者として召喚された私達だけで同じ境遇の相手だからっていうのもあり全員がお互いに心を許してしまっているんだと思う……。


その後も野営の準備は進んでいき夕食の準備に入ることになった。ヤムさん達は自分達が作りますと言ってくれたが川平さんの提案で食事は結局全員の当番制になった。料理が作れない人と作れる人を一緒にしてうまくバランスをとったものになったので味の心配はなさそうで良かった。そしてその話の流れで就寝時の魔物の警戒の話になったけどそれも結局当番制に決まった。


今日は最初だからと言って夕食の準備も就寝時の見張りもヤムさん達がやってくれることになった。


そして夕食時、


「小田倉、それで何かわかったのか?」

草林君が小田倉君に聞く。その内容はこの異世界のことについて。なんで小田倉くんに聞くのかには理由がある。

それは私達が王宮で暮らし始めて数日経ったある日、その日は全員でこの世界の事、これからの事を私達勇者だけで話し合うことになっていた。そしてその時にこの小田倉君がこの異世界のことや私達が疑問に思っていたことを独自のなんか妙にすごい考察で説明してくれたことがきっかけだった。それからはそういった異世界の事は全員が小田倉くんに任せっきりにしている。


「う、うん。それじゃあ前にも言っていたこの世界の言語について話そうと思うんだ」


全員が興味津々といった感じで聴く、もちろん夕食を食べる手は止めていない。


「えっと、それじゃあ話すね。……僕達はこの世界に来た時から周囲の人達の言葉を理解できていたけど、でもその言語は日本語じゃなかった。それでもまるで今までその言葉を使っていたように話すことも聴くこともできるんだ。もちろん文字だって理解ができたし書くこともできた。そこで疑問に思ったことが日本語は喋れるのかな、だった。だから喋ってみたんだけど、ちゃんと今まで通り普通に喋れたんだよね。まずはなんでなのかを知りたかった。それでステータスのスキルに自動翻訳的なものがあるのか見てみたんだけどなかった。だからこれはスキルではないみたいだ、おそらくこの世界に来た時に手に入れた能力みたいなものだと思う。スキルとしては現れなくても勇者のみんなが持っている能力。だから勇者のみんなが通ったあの白い空間が関係していると思ったんけど、そこからは調べようがないから、諦めたよ。まあそれはいいとして今僕達が話しているのは人間族の言語でさらにはこの世界の共通の言語だけどその他にも種族ごとに言語があるんだ。王城の図書館に他種族の言語が載った本があったから読んでみたんだけどそれも日本語と変わらずにしっかりと読めたよ」


ここまで一気に喋りきる小田倉くん。彼は何故か異世界の事を話す時は普段と違って饒舌になる。みんなも聴き入ってしまったみたいだ。全員夕食を食べる手が止まってる。



「僕は誰でしょう」

小田倉くんが急にそう呟く。


「どうした小田倉、おかしくなったか?」


「今みんなにはなんて聞こえた?」


「僕は誰でしょう、よね?」


「そう、勇者であるみんなにはね。それじゃあヤムさんはどう聞こえた?」


一緒にこの話に聴き入っていたヤムさんに突然質問する小田倉くん。


「…私には何を言っているのかわかりませんでした」


「え、なんで…」


「あんなにはっきり言っていたわよ」


「どういう事だ?小田倉」


「えっとね、僕は今獣人族の言葉で喋ったんだよ。当然これはみんなにも出来るはずなんだ、意識して獣人族の言葉を話そうとすれば喋れるはずだよ。ただ多分喋っただけじゃ共通語との違いがわからない。もともと知らない言語だったからか共通語から日本語に切り替えた時みたいなはっきりとした違いはわからないみたいなんだ。違いがわかりやすく出るのは文字を書くときかな。文字を書けばはっきりとした違いが見てわかるから頭で理解することもできる。まあこの世界は共通語が一般的みたいだから種族ごとの言語を使う機会はあんまりなさそうだけどね」


はは、と笑いながら小田倉君は話を締めくくった。やっぱり凄い、その考察力は一体どこからきてるんだろう。


「やっぱりすごいな小田倉、てことは俺も今意識すれば言語の切り替えができるのか」


「うん、でも他の言語を喋ってもあんまり共通語と喋ってる時との違いがわからないよ、日本語と違って。まあ自分はわからなくても僕達勇者以外の人が聞けばわかると思うけど」


「なるほどな、今日もありがとう小田倉」


「い、いや、礼を言われるほどでは…」


あ、いつもの小田倉君に戻った。やっぱり異世界のことを話してる時だけなんだ、あの饒舌は。


その後夕食は様々な言語が飛び交う会話が続いた。と言っても会話してる私達には小田倉君が言った通り本当に他の言語になっているのか違いがわからなかった。そのため文字を書いたり他にもいろいろと試した。


言語が変わっているか聞かれるヤムさん達は大変そうだったな…。

夕食後は準備したテントでそれぞれ眠りについた。今日は特に身体を動かしたわけじゃないけどなんか疲れた。やっぱり初めての異世界の旅だったから気づかないうちに肩に力が入ってたのかもしれない。すぐに眠れそうだけど、一人で旅をするんだったら寝てても警戒できるようにならなきゃなぁ………。



こうして勇者達の1日目は終わっていった。




饒舌な小田倉君…

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