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嫌いな理由

くっ!眠い

…まぶたってこんなに重かったっけ(_ _).。o○



街を出発してすぐ…。


「で、なんでディルもついてきてんだよ」

ディルは出発と同時にこの馬車に乗り込んできた。というか吹っ飛んできたんだが、僕も一緒に行くよ!と言って無理矢理乗り込んできやがった。


「いや〜僕も少し王都には用事があってね、ついでに乗せて行ってもらおうかと。大丈夫、リサもこの事は知っているから」


何が大丈夫なんだよ、借りがどうとかいうやつか。

「それより街の方は大丈夫なのか?ディルの戦力は結構大きいだろう」


「大丈夫だって、それに僕は冒険者、あの街の戦力に数えられるのは本来おかしいんだから。まあ今回の魔物襲撃が規格外過ぎただけだよ、大抵のことならあの街と王女なら平気だって、たぶん」


最後にたぶんをつけるな、たぶんを。


「はあ、…それじゃあルイーナの街に戻るまではよろしくな」


「うん、よろしく」



それから数時間ほど、特に何事もなく時間が流れていく。


と、思ってたらそうでもなく前方百メートル先に複数の人の気配がある、これはまた面倒な。


ガタッ

馬車が止まった。どうやら先を走るスクロワ達の馬車が止まりこちらもそれに合わせて止まったようだ。ちなみに御者はいつも通りノーメンに任せてある。



「なんかあったみたいだし俺はちょっと様子を見てくるな」


「「いってらっしゃーい!」」


ディルとフェレサが元気に見送るが、あいつら仲いいな。


馬車を出て前の様子を見に来ると、前方にいた奴らとスクロワが何やら話しているようだ。


スクロワにばれないように気配を消して後ろに近づき話を聞く。



…「どうしたんだ、いきなり前に飛び出してきて。そんな事をしてはひかれても文句は言えないぞ」


「すみやせんな。俺達はこの先の森で魔物に馬車を壊されたものでして、良かったら馬車に乗せていただきたくて」


あ、こいつら盗賊だな。今の話もおそらく嘘だろう、ここでこいつらが俺たちを足止めしその間に周囲を仲間が囲む、か。人数は…足止めを含めて三十二人か。結構多いな、さてスクロワはこれにどう対処するのか。


「ふふ、そんな言葉で私が騙されると思っているのか、すでに周囲に気配がするのはわかっている」


あ、さすがに気づきますか。なら戦闘か…早速三人の戦闘が見れるのはこちらとしてもありがたい。


「ちっ。おいおめーら、殺るぞ!」

その声とともに周囲の草陰から仲間の盗賊たちが姿を現した。


俺は気配を消していたのを解き、スクロワに話しかける。


「スクロワ、こっちの事は気にしなくていいから対処に集中してくれ」


「なっ!いつの間に…。あ、当たり前だ。もともと護衛の力など頼りにするつもりはない、おとなしく見ていろ!キュルム、コンクルいくぞ!」


「はーい」


「は、はい!」


俺は自分の馬車の上に移動してこの戦闘を観戦する。


まず攻撃を仕掛けたのは盗賊達の方からだった。盗賊達はどうやら三チームに別れ一人一人と個別に戦うつもりのようだ。


そして戦闘は始まった。ちなみに何故俺たちの馬車に盗賊が攻撃を仕掛けて来ないかというと俺が馬車に戻ってすぐに魔法で馬車を視認できないようにしてしまったからだ。光の屈折を利用すれば意外に簡単だ。まあ気配は感じられるはずなんだが、盗賊たちではわからないようだ。


で、肝心の戦闘の方はスクロワ達一人につき約十人、人数なら勝っているがそれでもどちらが負けるかは明白だろう。


ただこれでこの三人の戦闘スタイルが見れた。まずあのコンクルだが、彼は槍を使うようだ。その気弱な態度とは裏腹に槍術はしっかりとしていて複数人相手でも対処しきっている。これは盗賊達では敵わないな。


一方キュルムの方は、スピードに自身があるのか足で敵を翻弄し、相手を仕留めに行っている。身体能力も高く身体の動きも柔軟、両手には小剣を持っている。攻撃に決まった型はないがその1つ1つの動きは洗練され全ての動作が攻撃に繋がるように動いている。


そしてスクロワだが、彼女もこれまた見事な動きに洗練された剣術を繰り広げている。この剣術はなかなか使えそうだな俺も見て覚えておこう。…まあそれはいいとして、さすが第三部隊副隊長なだけはあり見た限り他の二人よりは実力が上のようだ。


ただまあ、それでもまだ三人とも未熟と言えるだろう。色々と欠けている部分が今の戦闘で見えてくる。ただこの未熟とはまだ成長するという事、成長の限界がきたならばそれは未熟とは言えない、つまりこの三人はまだ強くなれる。鍛え方さえ間違わなければだが。…そうだな、この依頼中に少しだけ稽古をつけてやるか、他の二人はともかくスクロワはおとなしく聞いてくれるかわからんが。


そしてやはりというべきか戦闘は三人の勝利に終わった。すでに馬車にかけた魔法は解いている。

俺は戦闘を終えた三人に話しかける。


「なかなか凄かったな、さすが王女様の部下だ」


「あ、ありがとうございます」


「ふふーん、でしょう!私強いんだから!」


「これくらい当然だ。そもそも私達に護衛など必要なかったんだ。ルサルファ様の御命令でなければ貴方なんかとは…」


護衛が必要ないって…そうか、今回の王都行きが俺と国王を合わせるためと知らないのか。


「そ、それじゃあ僕達は馬車に戻りますね」


「すぐに出発するからね。さあ行こ、スクロワ」


「あ、ああ」


三人が馬車に戻ったので俺も馬車の中に戻る。中に戻ると何があったのか夜達に聞かれたので簡単に話してやった。フェレサとディルは然程興味がないんだったら聞くなよな、話の最後になんだつまんないのと二人で声を揃えて言ってきやがった。こいつらまだ俺がやったお仕置きの事を根に持ってるのか、元はお前達自身の行動の所為だろうに。


まあそれはいい

俺が気になっているのは先程のスクロワの言葉、「ルサルファ様の御命令じゃなければ貴方なんかとは」だ。

貴方達なんかではなく貴方なんか、つまりは俺個人を嫌っているということ、ルサルファはスクロワの事を冒険者を嫌っていると言っていた。確かに俺は冒険者だ。だがそれなら夜達だってそうだ。それでも俺個人をと言ってきた。つまり俺だけが嫌いってわけだ。


いや、なんで俺こんなに嫌われてんだ、わからん…。


昼食は移動中の馬車で食べた。時間削減の為にこうするとスクロワが出発前に言ってきたそうだ。

こいうところからもスクロワの性格が見えてくるな。


その後も特に何か起こるわけでもなく、野営地と決めていた森林地帯についた。



俺たちが乗る馬車はスクロワ達の乗る馬車について行ってはいるが、一応王都までの道程はわかっている。

俺は聞いていなかったんだが夜達に聞いたところ出発前に王都までの予定はあらかじめスクロワ達と決めていたそうだ。それによるとルイーナの街から王都までの道程は最短距離で行く場合町にはぶつからないそうだ。

その為今回の王都への道程はルイーナの街から一直線に王都まで進み、ルサルファ領を出るまでに森林地帯が2つ、国王直轄地に入ってから王都までは森林地帯が1つ、この3つで野営することになったそうだ。つまり王都には3日後につくわけだ。


これはかなり早いほうだろう、馬が優秀だからな。俺達の馬はもちろんの事、スクロワ達の馬車をひく馬は二体、そのどちらとも魔道具で身体強化されており、俺によって強化された馬に引けを取らない。


で、その馬達のおかげで予定通り進められるわけなんだが、今はその野営地で野営の準備をしている。

まあ俺はあの便利なテントをアイテムボックスから出すだけだから準備と言ってもすぐに終わる。

なんならスクロワ達も使っていいぞ、と言ったが速攻で断られた。スクロワに…。


スクロワ達の寝床の準備が出来たのを確認して早速夕食はどうするのかを話し始めた。


さすがに夕食は全員で食べることになり男共は周囲の見回りで女性陣が夕食係となった、まあお決まりだな。ただ男でもディルは料理が上手なんだが今回は任せるみたいだ。


で、今は二手に別れて野営地付近の見回りをやっている。けど先程俺が魔力を粒子化して野営地から円形に20メートルほどを囲っておいたので周囲に魔物がいるわけがない。さすがにディルとノーメンはこの事に気づいていたが特に何も言われなかった。


今はそれよりも、

「なあコンクル君、俺ってなんでスクロワに嫌われてんの?」

スクロワがいない内にその事情を知っていそうな人に聞いておこう。


「え?…そ、それは…」


「あ、いいよ、遠慮しなくて。もう嫌われてんのわかってるし、そんなに気にしてないから」

それよりも理由が知りたい。


「えっと、…スクロワさんは僕達第三部隊の隊長、マクウェルさんを凄く慕っていて」


マクウェル?…あ、思い出した。第三部隊隊長といえば先日の魔物襲撃の時、裏門にいた隊長さんじゃないか。いや、でもあの人とはあんまり話しをしていないよな…。


「その隊長が関係してるのか?」


「はい、今回の任務はルサルファ様からマクウェルさんに命令が下りそしてマクウェルさんが僕達を今回の任務に任命しました。その時に僕達に言っていたんです。今回ルサルファ様がお前達の護衛を依頼すると言っていた冒険者アキハ、彼は素晴らしい方だと、少し話しただけでわかったとその力はもちろんの事、あの、話している相手を安心させる人間性、彼は尊敬すべき御人だ。お前たち三人も彼から様々なことを学び精進するんだな、と」


え、なんでその隊長さん、俺に対しての評価凄い高いの、ちょっと話しただけだよね。


「ということはつまり、スクロワは自分が慕っている人が意味もわからずやたら尊敬してる俺の事が気に食わないと」


まあ、その気持ちは少なからずわかる。例えば自分の尊敬すべき人が誰かにへりくだっているのを見るのは嫌だ、と似たような感情だろう。


「はい、その上冒険者自体を嫌っているので尚更…」


本当に冒険者は嫌いだったのか。


「まあ、理由がわかっただけで良かった。わざわざ教えてくれてありがとな」


「い、いえ…その!」


「なんだ?」


「僕はアキハさんの事を凄いと思いますし尊敬もしています。僕は今回の魔物の襲撃の時、アキハさんが戦っているのを間近で見てそう思いました。でも、あの時スクロワさんは別任務の為に他の町に行っていてアキハさんの戦っている姿を見ていなくて、…だ、だからアキハさんの戦っているところを見ればスクロワさんもきっと…」


「その気持ちはありがたいが、俺はそんな尊敬すべき人間性は持ち合わせていない。あながちスクロワが嫌っているのはそれを見抜いてじゃないのか」


冗談、スクロワがそれを見抜けているとは思わないが俺は敢えてそう言う。もし彼のこの尊敬という感情がルサルファの俺に対しての信頼という気持ちと同様に俺自身が仕組んで起こさせたものならば別に構わない。だが彼の感情は違う。俺は俺の知らないところで、勝手に俺が評価され、期待されるのは嫌だし願い下げだ。だからこそここはあえて正直に言ってやった。


「そ、それは…」

その後の言葉はでてこないようだ。それにそんな簡単に人を尊敬すべきじゃない。そいつが本当はどんな奴かも知らないのにそいつの事を信じて期待して…勝手に裏切られ、絶望して後悔するのは自分だというのに…。



その後は何も話さずに二人で野営地へと戻った。


スクロワと夜達が上手くやっているか心配だったが、特に何事もなかったようだ。普通に夕食が用意されていた。

あ、冒険者が嫌いな理由も聞いとけば良かったな、まあまた今度聞けばいいや…。



夕食、就寝とその後は何事もなく過ぎていき王都への旅の1日目はこうして終わっていった。








作戦実行中…

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